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トラブルメーカー

 いつもと同様、希愛と真琴とともに学院へと向かった。

 まだここに通いだしてまだ日にちこそ経ってはいないが、普段と変わらない。何事も変わりのない一日を過ごす……と思っていたのだが、そういうわけにはいかなかった。


 学院についてからというもの、やけに周りからの視線を感じるのであった。興味、というより疑惑の目というべきだろうか。俺が執行班に入ったから。というのとはまた違った理由がありそうであった。


「ねぇ蓮。なんかあんた、やけにちらちらみられている気がしない?」

「言われなくてもなんとなくわかる。さっきから気になって落ち着かないんだ」


「あんたはまた何かやらかしたの?」

「何で毎回疑うんだ。少なくとも昨日学院内でなんかやらかした覚えはない」

「なーらいいんだけど」




 廊下でも相変わらず。視線を向けられつつも真琴と話しながら教室に到着し、教室のドアを開けた瞬間――――――


「おい! 来たぞ!」


 一人の男子生徒が俺が入ってきたのに気が付き声を上げると、教室内にいたクラスメイトが一斉にこちらのほうを向くと同時に、こちらに向かってくる。



「本人からぜひ説明してもらいたい。何があったんだ!」

「崎田さんと何があったの? 単なるスカウトではなかったの?」


「どうなんだ黒宮!」

「ま、待て待て!説明してほしいのはむしろこっちのほうだ!」


 そう俺が叫んだのと同時、俺に向かって丸められた紙の束が投げられた。

 それをキャッチして開いてみると校内新聞であった。真琴とともにその新聞を読む。その見出しにはこんな記事が。



「執行班入りを果たした噂の編入生、黒宮蓮の実態とは。か」



 これだけ見れば普通の校内新聞だ。編入生をピックアップした号外といったところだろうか。でも待て。取材なんざ受けた覚えなんざ一切ない。確信をついたような情報こそないが、この新聞を書き上げるだけなら十分な情報量ではあった。


 だったらこの記事はどうやって書かれたものなんだ。案外調べようと思えば何とかなってしまうものなのか。


 そう思いつつ投げられた新聞に目を通す。特に学院を大きく騒がせるような文面は見出しからは見受けられない。そう見出しからは。問題はその次だ。一枚めくってみて俺は驚愕した。



「入学式の日の屋上。崎田紅葉と黒宮蓮の関係とは……」

「「……」」


「「な、なんじゃこれはぁぁぁ!!」」



 まず目が行ったのは、屋上で向き合う俺と崎田さんの写真であった。

 いや待て、あの場には他に誰かいたっていうのか。今一度言っておくが決してやましいことなどしていない。いやいや、今問題にすべきなのはそこではない。そう考えていると――――――



「あんた。紅葉に何をした、何をしたぁぁぁ!!」



 真琴に胸倉をつかまれてぶんぶんとゆすられる。そうされながらも意地で返答する。




「まて、落ち着け! 決してやましいこととか、いかがわしいこととかそんなんじゃない。断じて違う。本当だ。断言してやる!」

「だったらなんだぁ!」

「し、執行班のことだ。あの時彼女にスカウトされたんだよ!」


「あの時に? いったいどういう脈略があって……」

「おはよ~」



 少々眠そうな声であいさつしながら崎田さんが入ってきた。

 あんだけ寝ぼけているあたり、どうやらこのことについてはまだ気づいていないらしい。とにかく一刻も早く何とかしなければ。

 何とか振りほどいて、新聞をもって崎田さんのほうへ歩み寄る。



「崎田さん。おはよう」

「あぁ~黒宮くーん。おはよー……」



 なんか目の焦点が合ってないんじゃないかと思う。それくらい眠そうな顔をしていた。



「眠そうなところ悪いがこいつを見てくれ」

「んー? なーにー……」



 崎田さんがゆっくりと俺のほうに近づき、俺の持っている新聞をじっくりと眺めている。


「ふんふん。ふーん。んー……ん?」


 頬を何度か自分の手で叩いてから、再び校内新聞を見る。



「んんー。え……?」



「ふえぇぇぇぇ!?」

「気づきましたか。事の大きさに」

「いやいやいやいや。待って待って!? なんでなんでなんでー!!」

「と、とにかく落ち着いて。まずは冷静になろう?」

「う、うん……」



 ひとまず崎田さんをなだめることはできた。と、ほっとするのもつかの間、再び真琴に胸倉をつかまれ、身体がグイッと吸い寄せられる。



「で。どういう経緯なのか説明を求める」

「で、ですよねー……」

「まぁ今は時間もないだろうし、昼休みに聞くことにするわ。覚悟しておきなさい」

「へ、へーい……」


 ひとまず猶予をもらい、真琴から解放された。だがしかし、楽になったわけではない。状況は何も良い方向には変わっていないから。




 昼休みの時間。俺は教室を離れて屋上にいた。昼食を取りつつ朝見た校内新聞を広げる。


「成程ねぇ。紅葉はあの日に蓮に助けられた。それを見て蓮をスカウトした。と」

「うん。あの時の黒宮君かっこよかったから」

「どうも」


「浮かれてんじゃないわよあんた」

「わかってる。てかそんなんじゃない」


「それで、入学式の日に黒宮君を屋上に呼び出して執行班に入らないかって。まぁ最初は断られちゃったんだけどね」

「へー。……そういやあんた」

「なっ、なんだ?」


 真琴がの顔がグイッと俺の方に近づいてくる。



「あんたあの日、男友達とお昼行くって言ってたけど?」

「くっ。だがこの場合、正直に答えようがお前のやりそうなこと、だいたい同じな気がするのだが……」

「そ、そんなこと……」

「まぁまぁ。過ぎたことだしもういいでしょ。それより話をするべきことがあるの」

「そうだ、考えるべきはこの写真だ」

「あんた無理矢理話進めようとしているわね」

「と、ともかく。この新聞の作成者は一体どうやってこの写真を手に入れたのかだ」



 無理やりにでも話題を元の方に戻す。真琴のやつ、変なこと言いそうで怖い。



「そうだよ。あの場には私と黒宮君以外はいなかった。断言するよ」

「そのことは覚えている」


「だったら何でこんな写真が……。こんなの、紅葉たちの近くまで来なきゃまず取れないよね?」

「あぁ、ここまではっきりと映っているってなるとな。」

「じゃあどうやって? ドローンみたいのでも飛ばしてたとか?」

「いや。そんなものもなかったとも思うが」

「それなら……能力?」


「その可能性が高いだろう。こういうことができそうな能力者に心当たりはないのか?」

「写真ねぇ…。やりようを考えてみると、候補がいくつもあって絞りきれないかな」

「そうか。そういえば新聞部に腕利きがいると聞いたんだが、そいつはちがうのか?」

「彼女の能力は…この写真とは直接関係なかったと思う。でもこの記事作ったのは間違いなく彼女だと思う」


「彼女。女子生徒ってことか。頭の片隅にでも置いとくよ。ところで崎田さん」

「何?」


「執行班の誰かが、俺に無断でインタビュー受けていたなんてことはないよな?」

「そんなことはしないよ。まだみんな、君の詳細を知るにまでは至ってないと思うし。執行班で君と一番話をしているのはおそらく私だと思うけど、知らないものは知らないよ」

「逆に知っているほうが怖いけどな」



「じゃあこの際君のことじっくりと教えてよ」

「話せる限りであれば時間のある時にでも話してやるよ。今は優先事項があるだろ」

「そ、そうでした……」



「とにかく記事を作った人物はともかくだが、この写真を撮った人物は新聞部に関与している可能性が高いっていうのが俺の考えだ。それが一人の生徒か複数犯かわからんが」

「それは同感」


「それともう一つ聞きたいことがある」

「なーに?」



 俺は辺りをぐるりと見回してから、二人に聞いた。



「何でもいい。二人共、妙な気配とかはなかったか?」

「なかったと思う。どうしたの?」

「ならいい。こんなことまで盗聴でも盗撮でもされているならたまったものじゃない」


「確かに。それは嫌だなー」

「まぁそうでないならいいさ。もうそろそろ時間だ。教室に戻ろうか」


「うん」

「はいはい」



 三人が屋上を立ち去った直後、他には誰もいないと思われていたその場所には――――――



「……」



 デジカメを持った一人の女子生徒がいた……。

「ところで蓮。結局どうなの?」

「将星。こんなの全てが事実と思うなよ」

「全てって……」

”こいつ怖い。どうやってここまで調べたんだよ……”


 情報社会をなめてはいけない。(確信)

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