気づけば集まってくる
71話の後
「ところでさー蓮君。昨日のことなんだけどねー」
「あんたも何かと苦労してるってか、トラブル体質ってか」
「お兄ちゃんの場合、勝手に巻き込まれているって感じだけどなー」
「だ、大丈夫なんですか黒宮先輩……」
「蓮君は面白いからねー。色々と調べがいがあるってものでー」
「我の崇高なる眷属として……」
「そんなに一度に話しかけても黒宮が困るだけだろ。慌てずに一人ずつ言え」
「なんかその……がんば?」
「……」
昼休みの時間は、学院で忙しない俺にとっては唯一ともいえる憩いの時間でもある。のだが、この日ばかりはその唯一の楽しみでさえ奪われた……というのは流石に言い過ぎだが、ゆっくりとできなかったといえばそれも事実であろう。
「さてと。今日はどうしたものかな」
四限の体育の授業が終わり、昼休みの時間になった。着替えを終えて教室に戻り、いつもの通り将星達と昼食を。と思ったんだが、皆それぞれ都合がつかないようで。将星は何やら先生に呼ばれていたみたいだし、明弘と正樹は委員会の集まりがあるそうだ。要は俺一人ってことだ。
それだけにとどまらず、今日は弁当を持ってきていないときたもんだ。そうなると購買でなんか買うか食堂行くしか無さそうだな。……今日は一人だし、久しぶりに食堂にでも行ってみるか。
いつもは友人同士で集まって教室で食べるのだが、たまには一人というのも悪くない。以前の高校にいた時は、そこの友人と昼食をとることがほとんどであったが、一人で食べていた時も少なくはない。こっちに来てからは一人で食べる機会というのもなかったので、また新鮮なものだ。
食堂に向かうと、それなりに人が集まっていた。昼時だから当然といえば当然のことか。券売機で食券を買って並んでいたら、後ろから声をかけられる。
「あれー。蓮じゃないか」
「あっ。悠か」
たまたま俺の後ろに悠が並んでいた。その近くにいるのは、彼の友人だろうか。
「昼休みに合うのは珍しいねー。そういえば将星たちは……」
「今日は呼び出しがあるとかで都合つかなくてな。そんなわけで今日は俺一人ってところだ」
「だったら今日は僕らと一緒に食べない?蓮がさしつかえなければ」
「そんなことはない。むしろこっちから頼みたいぐらいだよ」
「じゃあそうしようか」
話の流れで、悠とその友人と昼食をとることになった。
「この辺でいいかな」
「あぁ。そこでいいだろう」
三人分。適当に空いた場所を探してそこに座る。悠と彼の友人が隣り合うよう座り、俺はその向かい側に座った。
「こっちは僕のクラスメイトの山中健吾」
「どうも」
「よろしく」
簡単な自己紹介を聞いてから雑談が始まる。
「健吾は小学校の時からの友人で蓮同様、僕にとっては数少ない理解者でね」
「いやー悠はかわいらしいんだよ。顔がどうこうってだけでなくて、なんだかんだ言って振舞いとか好みとかも女子っぽいところ多いからさー」
「そういうことは言わないでよー」
「そういうところがそうなんだよ。まずはそういうところから直していって……あ、でもそうなったら付き合い長い俺としては違和感しかないなー」
「だーかーらー!」
「まぁ、らしいってことでいいんじゃないのか」
「蓮にまでそういうこと言われる~」
友人同士の話を聞いてると、そんな気がするものだ。普段から女子扱いされることを嫌っているが、言動と行動が一致しないとはこういうことかと。
三人で色々話しているところ、俺の左隣にトレーの置かれた音が聞こえた。
「やっほー。奇遇だねー蓮君」
「ごめん。毎度毎度騒がしくて」
「此度はまさに運命。天命の導きによって誘われし」
「なんか、この三人の組み合わせになるとまた珍しいものだな」
話していたところに紅葉と真琴。それから北島さんがやってきた。
「あぁそうそう私達だけじゃなくてね。ちょうど入り口で希愛ちゃんたちも見かけたから二人も一緒に」
「そうかい。賑やかなこって」
「草薙さん。隣失礼しますね」
「どうぞどうぞ」
希愛と南原さんが悠の右隣に並んで座り、真琴は俺の右横、北島さんは紅葉の左に座る。
男子三人女子五人の塊になったところで、悠の友人の健吾がこんなことをボヤいていた。
「なぁ悠。この人の友人関係って言うか、人徳やばすぎやしないか。気がつきゃ周りが可愛い子だらけじゃないか」
「執行班の人達と、あとは蓮の妹さんとそのご友人ってところだね」
「てか今思えば悠もこの方々と仲いいってことかよおい。羨ましい。あーそんなんだっていうなら俺も執行班になりたかったぜー」
「いやいや。執行班だって楽な仕事じゃないんだ。悠だってそれはわかっているだろ」
「そりゃあもちろん。この前だってあっちこっちと大忙しだったからねぇー」
「そーそー。私もこの前大変だったんだからー。なんだってーむぐぅ!?」
「気持ちは分かるがそれ以上は言わないでおこうな。混乱を招きかねんから」
「はーい……」
続きを言いそうになったところで俺は空いていた左手で紅葉の口を塞いだ。誘拐されましたなんでここて言ってみれば騒ぎでは済まないであろう。
幸い即日解決したことで関係者以外には知られていないことなので、伏せておいてもらいたい。
俺が注意してから彼女は気を取り直して、ご飯が山盛りに盛られた茶碗に手を伸ばし、女子とは思えんペースでご飯をかき込んでいく。
「それにしても……すごい量だなこれ」
俺よりか食べる量が多いのではなろうか。と考えるまでもなく彼女のほうが多いとはっきりとわかる。
「だって四限目体育でいっぱい運動したからお腹ペコペコで仕方ないんだもん!」
「紅葉大活躍だったからねぇ」
「まぁ気持ちはわかるがその……色々と気になることとかないのか」
これ以上口には出さないが、女子なんだから体型とか体重とかは気にならないのかね。
「いや全然。寧ろ食べたいって欲求を我慢しちゃいけないと思うの」
「そうかい」
「ほんっとーにそんな考えできるのが恨めしいってかなんて言うか。この前だって二段重ねのパンケーキ。何を気にする訳でもなく満面の笑顔で食べてるものだからもう……」
「そーそー。美味しかったなーあれ」
「そうじゃなくて、太ること一切気にせずに食べてる紅葉がもう……。それにスタイルいいと来たもんだから……」
男子の俺は言葉を選んで聞いたが、同じ女子である真琴は隠すことなく堂々と聞いていた。これが性別の違いから来る価値観というものだろうか。
「そうそう崎田さん。パンケーキで思い出したんだけどさ、この前蓮とある店行った時ねぇー」
「そうだ私も。パンケーキじゃないんだけど私もこの前いいお店見つけて……」
紅葉と悠の二人でスイーツ談義になってしまったところで、健吾が俺にこう言ってくるのであった。
「な? こういうところがあるから女子っぽく見られるんだよあいつは」
「まぁ。その時は一緒にいたんでよく分かります」
「草食系とかスイーツ系とかじゃなくて、もう甘々系なんじゃないかと俺は思っているよ」
「なんかしっくりくるなその言い方」
「隣失礼しま~す」
今度は俺の右斜め前からゆるーい女子の、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あぁどうぞどうぞ……って、うぇえ!? こ、今度は袴田先輩に邦岡先輩まで!!」
「どうも~」
数分もしないうちに、かなりの大所帯になっていた。
「私は紅葉の太らない秘密が知りたいわよ」
「本人に聞けよ……と言っても代謝とか色々あるしなんとも言えんか」
「前に聞いたけどそういう体質って言われた。でも納得いかない」
「ならそういうことにしておけ」
誰かに送ったり、体の一部分に吸い寄せられているとか?
思いのほか長くなりそうなので、分けようそうしよう。ということでもう一話続けます。




