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行きて行きつつ

 部屋の鏡とにらめっこして服装の確認をする。パーカーにするか。それともこっちのワンピースか。下はスカートか、デニムか。色の組み合わせはどうしようか。気がつけば三十分以上は考えていた。ようやく決まったところで今度は部屋を出て洗面所に向かう。


「お嬢様。本日はお出かけなさるということですが、宜しければお車でお送り致しましょうか」

「いいのいいの。彼が迎えに来てくれるから」

「失礼致しました。もし何かご入用でしたら遠慮なくお申し付けください」

「だいじょーぶ。でもありがとー」


 廊下ですれ違った使用人の方に挨拶して洗面所へ。

 今度は洗面所の鏡に向かって、髪型を整えていた。髪を結び、髪留めを付けて鏡で確認する。


「よし! 今日もいい仕上がり!」


 その後は部屋に戻ってバックに必要なものを詰めて足早に玄関へ。その時近くにいた別の使用人の方に挨拶してから家の門をくぐり抜けた。



 外に出ると、もう彼が来ていた。今からインターホンを押そうとしているところだった。門の開いた音で気がついたのか、驚いた様子で私のことを見ていた。


「タイミングピッタリなのか。今から呼ぼうとしたとこなんだが……」

「なんか待ちきれなかったから。色々悩んでいたからこっちはギリギリかと思った」


 蓮君が迎えに来てくれた。今日はかねてより決めていた初デートの日だ。


「そっか。そういやその猫の髪留め、可愛いじゃないか」

「ありがとー! 昨日袴田さんから貰ってね。せっかくだから今日付けて行こうかなーって」


 先日袴田さんから貰った黒猫の髪留めを蓮君に褒めてもらった。


「よく似合ってる。それじゃあ行きますか」


 蓮君から青いヘルメットを受け取った私は、バイクに跨る彼の後ろに座った。



 二十分弱かはバイクを走らせて、駅に到着した。バイク置き場にバイクを停め、前に面する通りに出てから、この後のことを話し合った。


「じゃあどこから行こうか?」

「んー……。まずは洋服見に行きたい」

「あいよ。それじゃあまずはあっちの方だな」

「おっけー」


 行こうとしたら、急に左隣にあった蓮君の姿が無くなっていた。ぐるりと見回して探してみたら、数メートルかは後ろの方で立ち止まって、こちらも何やら後ろの方を見ているようだった。


「どしたの蓮君。なんか辺りを見回しだして」

「いやなんでもない。最近どうも神経過敏っていうか、周りのことが気になっててな。悪かった」

「そんなに強ばらなくたっていいのにー」

「前に長谷川のやつと一戦交えてからか、結構警戒してたんだ。その後変な噂とか流れないかとか、あの新聞部の馬鹿がなにかやらかさないかとか」

「もー流石に大丈夫だと思うよー。それより早く行こー」

「のわぁ!?」


 うずうずしていた私は彼の右腕を引っ張って、線路を挟んだ反対の方にあるモールの方に走っていった。





「急に呼ばれたから何だと思えば。なんのつもりだ」

「いやーこういうの私気になるからさー」

「僕も呼ばれたんで来たんですけど……」

「我もだ」


 駅の西口。そこにある自販機の近くに私服の四人の人物、邦岡、袴田、草薙、北島の姿があった。袴田がスマホの画面を見ながら何かを待っているようであった。


「さてさてー。おっといいタイミングのようだ」

「何がですか」


 袴田が指さした方向に、彼女らと同じ年代程の二人の人物が現れた。


「あれ崎田さんと蓮じゃないか。もしかして袴田さんが呼んだ理由って……」

「そーそー。感が冴えてるのねー。せっかくだから二人の様子を追跡しちゃおうと思って」

「そんな事の為に呼んだのか。まさかと思うが執行班の全員呼んだんじゃなかろうな?」

「いやいやー。私が声掛けたのはここにいる後の三人だーけ。班長はこういうのノリ悪いから、そもそも声掛けてないの」


 邦岡は少々憐れんでいた。確かに言われた通りな感もするが、目的がどうあれ、省かれることとなった天王寺のことを。


「わからなくもないが除け者なのか……。おい草薙、北島。袴田のやつに付き合う必要は……」

「袴田さん! 僕も気になります!」

「永久の契りを交わした者の、新しき経典を彩る儀式の始まり。そしてそれを見守りし我らリリーシェ。絵になる!」

「さぁ行くわよー」

「「いえっさー!!」」


 そのあと三人の頭に鉄槌が降り掛かった。


「何もここまでしなくてもいいじゃないのー」

「ここには馬鹿しか居ないのか」


 呆れた口調で三人を見下していた。


「好奇心の塊ならここに三人いるわよー」

「凄い。痛みが頭部の一撃以外ほとんどない」

「これはこれで。大地に眠りし生命の鼓動が感じられる……」


 道路のアスファルトに、首から上だけ出して埋められた三人がいた。

 尚、邦岡さんなりの特殊な方法によって埋められています。とりわけのある良い子は絶対に真似、というか正攻法でもやらないでください。骨が砕けるどころの問題では済まされません。



「すみません。でも気になってしまうのは本心なもんで」

「そーよねー。ずっと学院注目の二人がどうなんだどうなんだと話題になって、とうとうここまで来て放って置くほうがもったいないと思うのよ」

「どうあれこれはやり過ぎだろうが。最後に忠告しておくからこういう下らんことはさっさとやめとけ。黒宮たちにバレたら、お前らタダじゃすまないぞ」

「それならだいじょーぶ。だってこの袴田美音様がいるのよー。蓮君の能力も、近づきすぎさえしなければなんの問題もなし!」

「もう何も言わない。私は何も知らんからな」


 ジトっとした表情をして、邦岡はその場を立ち去って行った。

 もちろん帰る前にちゃんと救出して、道路も元に戻しておきました。くどいようですが真似しないでください。


「というよりどうするんですか。さっきのやり取りのせいで蓮を見失いましたよ」

「それなら心配ご無用。ちゃんと手をうってある」


 袴田はスマホの画面を二人に見せる。そこには地図と、赤い点が映されていた。


「もしかしてGPSですか。でもそんなもんどこから発信されて……」

「ふっふっふ。そうか、昨日のはそういうことか」

「昨日?」

「昨日紅葉ちゃんにプレゼントってことで髪留め渡したの。一見普通に見えるけど、あれに小型の発信機を内蔵してあるの」

「凄いけど、一歩間違えたらエラいことに……」

「まぁーいのいの。さて、あっちに行ったわね。行きましょう。あとこれ一応渡しとくね」


 袴田が持っていた大きめのバッグからいくつか取り出し、二人に手渡す。


「はいー」

「これは。なるほどなるほど」


 二人はそれを身につけ、黒宮たちを追う袴田の後ろをついて行った。


「後ろに気をつけとけと忠告するべきか。しかしそれだと知っていると思われて怪しまれるだけだろうか。なら偶然を装って。いやそれも違うような……」


正解がわからない。

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