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欠けし者達の異世界建国記 ~目が見えるとはすばらしい~  作者: othello
第一章 召喚と新たなる国
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閑話 select・garden 転移の直前~トウシン~

ちょっとここで、休憩を

 


 ここはselect・gardenの東大陸の中でも極東の森。

 この地は不可侵領域であり上と下に王国と帝国と言う犬猿の仲の国の境界線を務める森だ。

 この森は『エデン』と呼ばれ、多種多様な生き物。種族が住んでいる。

 その森の中央には小屋がある。

 小屋の外見はいたって普通だ。

 しかしその周りは多くの生き物が住んでいる。

 森鹿と呼ばれる角の変わりに木を生やす絶滅危惧種に、シャドウフェンリルと呼ばれる一匹で一国潰せる獣が群れを成し、イモータルスパイダーと呼ばれる死神が自らの糸で編み物や畑の害虫取りをしている。その編み物を着ているのは肌の黒いエルフやひげを短く切りそろえ少し賢そうなドワーフ。角の生えた魔族と呼ばれる魔術的性に優れた種族などがいる。彼らは小屋を囲む木に作られた扉から出てきた。彼らの住処は地下都市だ。

 そんなみんながこうして地上に出てくるのは恩人が来訪された(・・・・・)からである。

 そして小屋から一人の男が出てくる。

「みんな、おはよう」

 それは目を閉じた一人の青年だった。

 20いや、それより少し若いかと思われる彼は魔術師のような長いコートを着て手には杖を持っていた。

 いや、それは杖ではなく笛だ。いくつもの穴が開き、横笛であることは笛であると認識すればすぐにわかる。

「さて、侵入者を討伐にいこうか」

 彼がそういうと笛を口に当て、曲を奏でながら歩く。

 それに続くように獣たちは彼の後についてゆく。


 森の北側に位置するアトラ帝国。

 かつてあった栄華もすたれ、現王は自分の事しか頭にない欲望の権化であった。

 そして王は何を血迷ったか、不可侵の森を抜け王国に攻め込む作戦をたて、2万5千の兵を森へと進めていた。その光景は壮観であり、緑一色の草原にあふれる黒の集団はよく目立った。

 森の手前には森を囲むように広い平原があり、低級の獣が現れる。

 しかし、兵たちの数の圧倒されてか、獣は全く出てこなかった。

 このあたりを狩場とする傭兵たちはこの順調すぎる行軍に違和感を覚えるも、指摘はしなかった。そしてその行軍の中央の豪華な馬車にいる人物は全く別の疑問を抱いていた。

「ケルティ、この平原はなぜ畑ではない?」

 でっぷりと太ったはらにブクブクの顔。馬車に乗って冷房を聞かせているというのに止まらない汗。

 さらに、飲料水は砂糖水。彼こそ現王、エイデム。

 そのエイデムにケルティと呼ばれた正面に座る正面には腹黒そうな暗い顔の男は頬を書きながら申し訳なさそうに伝える。

「ここは、『東園』こと『エデン』と呼ばれる来訪者の土地です。ですので、勝手にここを畑にはできません」

「東園?なんだそれは?…来訪者が土地を持つだと?ふざけるな。奴らは何人なのだ?」

「この森の主である来訪者ですか?・・・確か一人だったと記憶しております」

「はっ、一人?そんな物、数で押しつぶせばいいではないか!?よし決めた。先にその来訪者を潰そう。そしてこの森と我が契約し、ここをわが領地としよう」

 ずるがしこそうな男はその言葉を疑った。

 彼らにとって来訪者は、勇者であり魔王でもある。

 災害級と戦ってくれるのはうれしいが、下手な奴が戦うと被害で出るからだ。

 それに復興に必要なお金をちゃっかり持っていく。

 ・・・確かに嫌な奴だ。だが最初に行ったが彼らは災害級を倒す。

 私たちでは倒せないし被害が大きいから災害級なのだ。それを倒す来訪者に兵を向ける?

 どう考えても何を言っているかわからなかった。

「あの、私は笛の音が聞こえたら逃げますからね?」

「どうしてだ?」

「かの来訪者が現れる時は笛の音が聞こえるそうです。そのその笛の音はあの世への―――」

 すると、前方の傭兵や兵たちが騒がしくなるのを聞いた。

 王は窓から顔を出し望遠鏡で先頭集団の視線の先を見る。

 森の木々が揺れ、やがて一匹の森鹿がかれらの前に現れる。

 森鹿は高級食材であり、売れば半生は遊んで暮らせ、角の実を食べれば強くなるという伝説がある。

 一般兵や傭兵は狂ったように森鹿に襲いかかる。

 逃げる森鹿。・・・一方、彼らとの距離は開かずそのままだった。

 そしてやがて森鹿は止まり、甲高く吠えた。


 そして彼らは気づく。


 本体とかなり話されてしまったことに。


 そして聞こえてしまった。


「ぴゅー」という・・・黄泉へといざなう笛の音が。


 そして、王を守る騎士たちのところに平原に強風が吹く。

 王たちの進行方向とは逆に吹き、吹き止んだその視線の先には先ほどまでの森鹿と追いかけていた傭兵たちがまるで前からそこにいなかったように消えていた。

 鈴の音は遠くからでも小さいながら聞こえた。

「・・・きた?東園の管理者!?わ、私は逃げ・・・」

 ケルティがそう言いながら外に出ると、そこは異様な光景だった。

 目の前で多くの仲間がいなくなったというのに、平野残った傭兵が騒がないのだ。


 ・・・いや、それどころか動きもしない。


 そして、また聞こえ始める。笛の音が。


 その音はより近くから。ケルティは見知った顔の冒険者を見つけ近寄る。

「か、金はいくらでも払う。いいからいますぐここから逃げたい。護衛してくれ」

 そう言って冒険者の肩を揺さぶる。

 しかし、その冒険者。まるで発泡スチロールのように軽かった。

 そしてごっとん。と言う鈍い音が目の前からする。

「・・・ひぃ」

 先ほどまでケルティが肩をつかんでいた冒険者は胸の真ん中から下が無く、切られた半身からは鮮血が草原を彩ってゆく。


「ぴゅー」

 まだ笛の音が聞こえる。


 その音源はすぐに分かった。なぜならそれはあまりにも近すぎた。

 その音源の方から声がかかる。けどそれが東園の管理者でないことは分かった。

 しかしもう一つ分かったことがある。

 現王が急いで馬車を下り、呼びかけられることで気づいた。

 彼はゆっくり振り返る。

 そして、彼は決して驚かなかった。

 たとえ、現王の首と体が離ればなれになっていたとしても。


 いや、正確には驚けなかったのだ。


 だってもう、彼の後ろには・・・笛できれいな音を奏でる青年が歩きさっていたから。


 青年の後ろには薙刀のようなデスサイズが中を浮いており、その刃は演奏が終わると光となって消えた。


 こうして、わずか10秒にして帝国の兵二万五千はすべて死んだ。そしてその兵の死体はまるで地面が生きているかのように流動し、取り込んでゆく。

 森へと戻るなか、一匹のフクロウが彼の肩に泊まる。

「フウ、僕がかたずける前に森鹿の長に協力を依頼したね?まったく、僕のためとはいえ心配はするんだからね」

 青年はそういうとフクロウを撫で、フクロウはうれしそうに鳴き声を上げる。

 そのフクロウの足には紙が巻きつけてあり、それを開くと彼は笑みを浮かべると杖を取りだし、亜空間から一回地面にたたく。

 すると、草原のそこら中から獣人や魔人、ダークエルフが顔を出す。

「南の王国兵の殲滅よくやった。これより帰還する。森林王と大樹の大老にも伝えて侵食を開始しろ」


 その日、北の帝国では龍が雷の雨を降らし、南の王国では鳳凰の火が雨のように降り、帝国と王国は世界地図からその存在を消した。

 また、その数時間前に出た帝国討伐軍3万は出陣30分後。

 監視している門番の情報によれば、フクロウが頭に泊まり追い払い、次に確認した時には消えたそうだ。

 今ではだれも確認できないが、その場所は帝国兵の末路と同じであるとここに記述しておく。そしてこれで、森に手を出し消えた国は5ヶ国目。

 雷がやみ、炎の消えた町は瞬く間に緑が町を覆う。

 緑が支配した町にはもう金銀財宝、歴史的文献、研究資料のすべてない。

 これは持ち出されたか、燃えたか、それとも管理者のもとにあるかは定かではない。


 しかし、言えることは一つある・・・


 ・・・こうして森はまた広がってゆく。





 たった数分で2か国を滅ぼした彼は小屋に戻り、人知れずおかれた手紙に注目する。

 そしてその内容に笑みをこぼす。


「選ばれた?・・・いいね。受けよう」

 彼がそう言うとその手紙はYES/NOの選択を迫ってくる。

 彼は迷わずYESを押した。



 ...。


 ・・・なにもおきなかった。彼はつまらないと吐き捨て小屋を出て行く。


 その一方で手紙は真っ新に変わり1文が表示されていた。

 〈エントリー8名を確認。強制ログアウトと同時にプレイヤーの魂と仮想魂(アカウントデータ)を融合して飛ばします〉



 ・・・その日、select・gardenでは8つの光の柱が昇り、いくつかの地形がその光と共に消えた。

 その中で一番大きかったのは東園の管理者の『エデン』であり、かの森が消えたことでゲームは新たなる時代を見せるのだが、それはまた別の話・・・。



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