№8 僕たちの進むべき方向 ~みんな前向きのようで何よりです~
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「さて、じゃあ僕はお茶の準備をさせてもらおう…パチン」
そう言って僕が指鳴らすと机の上に紅茶の入ったティーポットにケーキの乗ったお皿が現れた。
「おや、レギオン。自分がやろうと思っていたのに・・・」
ミチナガはそう言って残念そうに言うがもうケーキを食べている。
「そう言えば、執事だったな。癖で、こういったことがしたくなるのか?」
彼はうなずきながら「職業病ですからね」と言いながらケーキをほおばる。
女性陣も美味しそうに食べている。・・・こら、そこの双子。シズクと僕のイチゴをこっそり取ろうとするんじゃない。いえばあげるから。
・・・なぜシズクさんはそこで娘ができたらこんなふうかなと僕を見ながら頬を染める!?向こうの世界に好きな人がいるのでしょ?勘違いしてしまいますよ。
「そう言えば、普通に食べているけどこれどこから出したんだ?」
ヤイチがようやく切ってくれたので僕は思わず「やっと聞いてくれましたか・・・」とつぶやきながら説明した。
「今行ったのはメニューからの召喚です」
「メニューから?」
「召喚?」
スーとテンが不思議そうに頭をひねる。
「全員、ステータス開示と心の中でいってください」
「おわ!」
「あ、このメニューっての?」
「レベル1!?」
「あ、このアカウントチェンジて…」
「はいはい、そこまで。とりあえずまずはメニューの説明から―――」
メニュー。これはゲームでよくあるやつだ。
このメニューの中にはアイテムボックス・設定・チャット・ログ・地図の5つの機能が備わっている。
設定は時間表示、アラームなどゲームと同じようなことやこの世界では特別職のみ使用可能なはずの職業選択、加護の選択、即時展開用武装など新たな機能もあった。地図はこの世界すべてが見れるようにはなっているが周囲の状況は約半径10キロと言ったところだ。チャットは来訪者である僕達限定で、ログと言うのは称号やレベルアップを知らせるものだ。
そして、アイテムボックスは言わずと知れた収納箱だ。ただ自分でファイルと呼ばれる仕切りを作らないと無所属と言うフォルダーに無造作に放り込まれて必要なものを探しにくくなる。このアイテムボックスはゲームと同じ仕様となっており、ゲーム内アイテムも一部を除いてすべてこちらに来ていた。ちなみにその一部と言うのが・・・
「蘇生アイテムが無い」
それは、僕もネオラを助けようとした時に困ったことだった。
「そう、蘇生アイテムが無い代わりに最後にこれが・・・」
そこには〈消失アイテム経験値還元化果実・生命の実〉
それは説明がついていなかったので、僕の目で見てみる。
生命の実:ラング測定不可
現実には存在しないアイテムは神の想像でしか作れないため経験値を与える果実にした。
※レギオンの実。トモしか食べれない。〈消失アイテム数284。レベル1で食べると27近くまで上がる〉
・・・え?なんか消えたアイテム多くない?
そう思い、ぼくはアイテムを確認する。そしてわかった。
消えたアイテムのほとんどはエデンで特別な品種改良と配下の力をふんだんに使った例外アイテムばかりだった。
みんなの実を見ると大体が消失戸数が50から100。なれるレベルは15から20と言ったところだった。
「今食べるか?」
ヤイチがそう聞いてくるのに対しぼくは否定を示した。
「今は、この弱いままがいいと思うんだ。たぶん、みんなそれぞれ急に使えるようになった部分の扱いに慣れた内からこの世界に慣れると同時に新しい体にも慣れてもらった方がいいと思う。・・・どうかな?」
「そういう考え方もできますね。いいと思います」
「さすがレギオンですね。そこを失念していました」
レライトとミチナガが肯定し、みんなが頷く。
こうして僕たちはメニューを閉じる。
そしては話題はあの件へと移ってゆく。
「私たちが、王様!?」
サラはそう大きく驚き、ほかの女性陣は驚いてはいるようだが別に気にしていないようだった。
「おや、思ったより反応が無いですね?」
「いやだって、多分その王様をヤイチ君にしようとしているのでしょ?」
僕が無反応を指摘するとシズクは呆れたようにそう返してきた。
ところがこの言葉に驚く人が多かった。
件の弥一は「え、俺!?」と驚いているが彼が一番向いているのは事実だった。
「いや、これだけ色々できるトモの方が…」
「・・・ヤイチ。確かに俺は先んじて色々と動いたがこれは一種の諜報活動に近い。これは王に必要な素質とはまた別だ。むしろ、真逆と言ってもいいかもしれない。それにこの中で大国の王をやったことあるのはお前だけだ。騎士皇」
「だけど・・・」
「まあ、・・・そうだな。少し卑怯かもしれないがもし僕らでこの国を立て直したいなら僕は君以外に仕える気はないよ。そうだな、賢者でも名のろうかな?」
「えー、じゃあ私は聖女?」
「バーサーカーの間違いでは?」
「私たち、覇王になりたい!」「拳ですべてを黙らせる―!」
・・・ハーイ、そこ。黙ろうか。子供が物騒すぎるよ。
僕がそんなことを思いながら八一を見ると驚いてしまった。
ヤイチの頬に一筋の涙が落ちていた。
「ヤイチ!?」
「くそ、そんなこと言うなよ。お前に頼られるなんて・・・めったないからな」
彼は涙を流しながらもうれしそうに笑う。
「じゃあ...」
「やってやるよ、そうだ。俺だけ玉座に置き去りは嫌だからここを日本にできるだけ近づけようと思う」
「それはいいかもな。法治国家。それで?名前はどうする?」
「こういう時にお決まりの国家名があるだろ?」
「じゃあ、それで決まりだな。エドワードと話をつけにみんなで行こう」
―――こうして旧エルトルド帝国はクーデターにより滅び、半年が立とうというとき、新たなる国ができた。
この国。名をを新たにし、世界の平和の為に絶対なる正義と必要悪を掲げ、その象徴として調和を司る天秤をこの国は決して傾けないものとし、今この国の建国を持って新しい時代の夜明けとすることを高らかに宣言した。
その天秤を国旗とし、この国―――永久中立国・法治国家「ヤマト」。
その国の初代王はこう言った。
この国に上位者はいない。
そして、こうも言った才ある者はこの国で栄えるであろう、と。
この言葉の真意を勇者の一人―――のちの賢者が解説した時、多くの平民や奴隷は歓喜した。夢多き、若者は心躍らせ、年老いた大人はこれから来るであろう未来に思いをはせた。
そしてもう一つ。勇者の処遇だが、天秤の守り手とした。
役目はこの国から世界を見守ること。王を除き政治に参加しないことを決めた。
彼らがいて、彼らを継ぐ者がいる限りこの世界にダンジョンの恐怖が来ることが無いとした人はさらに歓喜する。
8人の勇者。
彼らは直下の特別部門を作り少数精鋭の部隊を持ち、彼らにこの世界の中立を守らせる。
彼らの作った7つの席はこの先努力する者の希望となってゆく。
力に奢れたもの恐怖へとなってゆき、虐げられし者の希望となってゆく。
その七つの席を人はこうよぶ。
―――覇王と七星守護者。この土地に伝わる創造神を守る7人の神から来ている。
こうして新たなる国は誕生した。
これは世界に新たな風を起こす。
そして封印されし者を呼び起こすことにも・・・
―――呼び出されし8人の新たなる国ができる時、世界は1つの分岐点へと突入する。