グラールVSヤイチ
二人はいくつも切り合うことで一種の共鳴を起こしていた。
それは、グラールがすでに死に人だからか?それともヤイチが勇者であるかはわからない。
ただ、二人は互いに技を盗む。ただ、それに置いてヤイチは天武の才を持っていた。
心臓が弱く病室のいる毎日。ただそれを忘れさせてくれるVRゲーム。
VRでは自分の考えた行動のままに動ける。
それゆえに数多くの武術の技を見て、見て、見続けた。
現象にはすべて共通点がある。サッカーのキックは空手のけりに、空手突きはボクシングのパンチに。そう言った応用ができるやわらかい脳もヤイチのいいところだろう。
この世界に来てヤイチは初めてVRと本当の肉体を知り始めはかなり苦しんだ。
しかし、それ以上に疲れを感じることに、痛みを感じる感じることに、誰かと体を動かしていることに充実感を感じそれほど苦とは言わなかった。
そしてヤイチはある程度肉体の使い方がわかってきたころ前世の武術の知識をこの肉体に適応させようとした。
・・・結果からいうと成功はした。ただ、納得出来なかった。
それもそのはず、彼がやったのは真似でしかないのだから。
それからヤイチは技を使い続け、トモにある日アドバイスをうける。
「お前、動きにくそうだな。まるで左利きの剣士が技を右手でやってるようだぞ」
それは前世の武術はすごいからそれを使えばいいと無我夢中に使っていたヤイチの考えをほぐすものだった。
・・・俺は武術を使っていたのではなく武術の技の軌道をなぞっていただけ。
それ以来、ヤイチはすべての技を見直し、自分に合うように改良し続けた。
それはいつしか、一つの特技にもなっており後に覇王と呼ばれることに一役買っていたりする。
ヤイチの洞察力。これは卓越しており、トモでさえ舌を巻く。
ただ問題なのは、ヤイチが暴走した時にそれを止められるものがいなくなること。
そしてやがて、トモはヤイチの戦いの相手をしなくなった。
ヤイチには公務が忙しいのと、ヤイチの技術がもう少し完璧になればと言った。
・・・言ってしまったのだ。
親友に拒絶されたこと・・・そして公務をサボっていたことにより親友に迷惑をかけ、その優しさに甘えていたこと。
この日、ヤイチは公務の仕方をエドワードに教わりながら一生懸命やった。
これに関してもコツ見つけ、効率よく手を抜き終わらせた。
※※※
今の戦いにおいてグラールは驚きを隠せなかった。
3手前に使った剣戟をすでにヤイチは使ってきており、スキルじゃなくて肉体で行っていた。
さらに今喰らった攻撃はその剣戟だが、すでに自分の者とは別物。熟練の剣士が長く使って、自分専用に変化した剣戟に体力を持っていた。
その事に気づき、グラールは皮肉に笑う。
「・・・お前、数年位一度現れる器だな?「強欲」か?それとも「怠惰」か?」
「・・・?なにをいっている?」
「気が付いてない。いや、傲慢がいるせいで気づけていないのか。だとすると、「怠惰」か」
「さっきからおしゃべりに監察。余裕だな!」
そういって、ヤイチはグラールを吹き飛ばす。
「・・・決めた」
グラールはそういうと心からの嬉しさから笑みがこぼれる。
・・・余裕?あるわけがない。すでに自分御覚えた技の6割はあいつにコピーされている。
ならばなぜか?
・・・この神殺しの剣士と呼ばれた自分の剣。それを彼にすべて教える。
ならばなぜ殺し合いをするのか?
・・・俺は、自分の剣を言葉じゃ説明できないし、する気もない。見て覚えるやつがいて、それは俺の剣技を使うのに最高の人材。そして何より、力を持たなくてはいけない存在だ。
故に?
・・・そうさ。俺は全身全霊を持って最高の剣技をやつの教え、死ぬ。
笑みをこぼすグラールにヤイチは嫌な予感を覚える。
・・・優勢だからと油断するな。それどころか、今の数倍よく見ろ!
ヤイチは冷や汗を流す。
それが地面へと落ちると、二人は再び距離をゼロへと詰まっていた。
速度は先の段違い、威力は一回りの二回りも強く、技から技へのつなぎは段違いに出それはすべて、川に流れる水のようだった。
「神殺剣 〈流水滝登り〉」
グラールが剣を下から上へと切り上げる。
ヤイチはそれを剣で受けようかと考え、すぐにその考えを捨てた。
確かにその一撃を耐えきればかなりの隙となる攻撃。ただ、いやな予感がした。
「覇剣王 〈守剣:盾面波〉」
ヤイチは剣を横にし、広い面で攻撃を放つ。
攻撃力を落とし、剣戟を押し返すその剣技はミサイル程度ならひびを入れることもなく無力化できるほどの耐久性を持つ。
しかしグラールの放った剣戟と衝突すると、守剣はあっけなく砕かれた。
そして察する。
・・・今の剣戟受けたら万色の剣は砕ける。そして、select・gardenの最高ランク武器とも言われ神格の一部を埋め込まれたとも言われる神器も壊せる。
それほどの一撃だった。
・・・けど、もう覚えた。
「破剣 地割」
そう言って剣を地面に刺し、地を割り、グラールを崩す。
「流水滝登り」
重ねて先の技を使う。威力は6割と言ったところか。
「神殺剣 空堕」
グラールの剣は空を切る。するとヤイチの体から力が抜ける。
・・・デバフ?いや違う。重力を切られた!
今のヤイチは六分の一G。
それでは体が軽過ぎて力加減がうまくいかず暴発する恐れがあった。
しかも、反作用が無いせいで覆うびりになってしまう。
「防剣 霧散」
ヤイチはそれをスキルで斬り、元の重量に戻す。
すると今度はおもりをつけたような感覚。
しかし、先ほどと比べるなら全然戦闘がしやすかった。
「やるな、英雄君。・・・もっと続けようと言い体が決着は近いか?」
少しの血彼の見えるヤイチにグラールはそう言った。
しかし、実際のグラールはもう限界にちかい。死者だからこそ見せられる余裕だ。
それから二人の切合いは続いた。
だが実際の時間にすると5分にも満たなかっただろう。
しかし、その間に6万の切り合いが行われた。
そしてついに、決着はついた。
「「流水滝登り」」
二人の剣技は互いにぶつかり合う。
そして、ヤイチの剣戟がグラールの剣戟を破り、グラールの剣を破り、グラールを破った。
「フッ、見事だ」
そう言って、グラールは死者の国へと旅立つ。
その場残った、グラールの使っていた剣がヤイチのストレージの中へと消えた。
「・・・」
一方のヤイチは買うてない集中と演算で精神的に疲労困憊。また、新たな剣技を習得したその場からの実戦使用。肉体はかなりの悲鳴を上げていた。
すると一人の男が現れる。
ヤイチは敵かと振り返り、破顔する。
「・・・よくやった。エイト」
「はっ、おっさん。俺はがんばったて、あいつに伝えてくれ・・・」
そこにはバルトスがおり、何とも言えない安心感より緊張が切れてしまう。
そして、伝言を残しヤイチは地面に倒れる。
「・・・たぶん言わなくたってわかるだろうよ」
そう言って、バルトスはトモの下へと向かう。
去った後のヤイチには毛布が掛けられたいた。誰が掛けたは言うまでもない




