クーデター軍壊滅作戦
深夜・・・といっても10時くらい。
教王国は規則正しい性格と言うのをもっとうとしており、一部の店を除き基本的に8時に閉店9時には消灯と言う教訓が根強い。もっとも破ったから罰せられるとかはないが、周囲と比べて目立つ。盗人の抑止に効果があるそうだ。
昨日墓場で戦闘していたのは夜の9時半。敵の防音結界に自身の認識阻害に遮音結界によりその時点では騒ぎにならなかったが、地形を変えるほどの事はしてしまった。
そこでじ黒い人体に体は回収し、ワイトキングのコア、大量のスケルトンなどのアンデットの死骸を残しておき、事前の予定通りミチカゲの連絡によって大司祭二人の直轄に聖騎士にアドリック卿の私兵を動かしてもらい、教王国で話題の守護騎士『バトス』によるアンデット戦の結果としてもらった。
無論バトスとは聖人のあの人であり、嘆く人あらば即座に駆け付ける謎のローブの騎士として活躍している。
アンデットの存在、種類、総数を聞いた人は皆震え上がり、またバトスの名声を上げると同時にこの地形変形にも納得してもらった。
また建国王の遺品も魔道具にワイトキングのコアを使い、地形はきちんと修復を提案し即座決行した大司祭二人にアドリック卿はもとよりあった市民の人気を上げ、逆にこの墓地を管理していた神官や葬儀場の神官の一斉調査を行い、内部の腐敗を掃討する手はずを整えてあげた。
・・・まあ、つまりこれ全てが僕の作戦でうまくいって良かったということだ。正直気絶した時は焦ったけどね。
それはさておき、今僕とヤイチは一つの大きな屋敷の前にいいる。
ここはこの国の軍部を取り仕切る神官で私兵を多く持っているアドリック卿と同じ貴族の屋敷である。
この国には2種の貴族がおり、武官貴族の3家に12大司教と呼ばれる文官貴族がいる。
武官貴族は今、目の前にある一家を除き建国王の教訓に忠実で孤児院の経営、国外遠征によるダンジョン踏破など日々市民を守るために動いている。
一方、12大司教はギルド長とつながっていた大司教のように冨を蓄え、豚のようになった老害どもが溢れている。僕が直接話した二人に加えあと二人の大司教が現状に不満を抱いており味方につけることに成功したが、それでも7名(一人は殺してしまったため)は今のまま国を腐らせようとしているのだ。
そしてその7名の後ろについており、ほかの武官2家に強気で入れるこの家こそ諸悪の根源であり、今日クーデターを私兵によって起こそうとしていたのであった。
認識阻害の結界を超えるとそこには大量の軍隊がいた。
「これが・・・って、ざこばっかじゃないか?」
ヤイチの言うとおりここに集まっているのは大抵がレベル50以下。
武器防具は3流品だ。
・・・しかしそれは俺たちが見ればの話である。
この世界の第4大陸は比較的安全で戦争も少なくモンスターレベルも低い。
故にこの程度で強者にみられ、防具も武器もレア素材じゃないのでそこそこの者になってしまうのである。
ちなみに、あの武具防具は俺たちが付けると武具は枷に、武器は一振りで粉々になってしまう。
「・・・そろそろやつら動き出すからそろそろ行きますか」
「・・・ヤイチ、アカウントチェンジはなしだ」
「え!?・・・まじで?」
「グラール(死体)クラスなら余裕だろ?」
「まあ、本気出せばだけど・・・もしかして」
「ああ、今日はこっちの肉体で本気出していいぞ」
「よっしゃ!・・・じゃあ、派手な登場してもいいよな!?」
「はぁ、わかった」
そういうと、ヤイチはエクスカリバーを鞘に刺したまま地面に突きたてる。
「概念武装〈覇剣王〉セット。特殊スキル〈英雄は気配〉解放、〈王の気配〉解放。覇権王の特別スキル使用条件解放スキル〈覇者の王道〉より覇気をエクスカリバーへ」
すると、英雄の銀の氣と王の白の氣が混ざり合いエクスカリバーへと吸収される。
そしてさらにそれは剣の中で白銀へと変わる。
「〈破剣・波〉」
すると、剣の光は渦を巻き目の前の門を砕き、吹き飛ばし、門の一部によって屋敷の一部が破壊され、瓦礫や余波によって奥の兵士が死んだ。
「そう言えば、トモ」
破剣・波の効果は門だけではなく周囲の壁にまでおよび門の引っ張られるように周りの壁も吹き飛んでゆく。
「・・・あの爺さんとなに話したんだ?」
「うん?・・・ああ、本をもらったんだ。面白そうな本」
「へぇ、・・・あとで読ませてよ」
壁も粉々になりブロックの岩が兵や屋敷に飛んでゆく。
「いいが、歴史書だぞ?」
「・・・うーん、眠くなりそう。でも頑張ろうかな?」
「・・・まあいいが。そろそろ入るか」
そういって障害物が消え、瓦礫が降りやんだのを確認し僕達は敷地へと踏み入った。
「ぐっ、いったいなんだった・・・」
あたりにはまだちらほらと兵士が残っていた。
「お、生きて―――」
「エイト、俺に任せろ。概念武装〈精霊皇〉天雷」
そういうと敷地のいたるところに雷が落ちた。
「・・・トモ。やけに急いでないか?」
「正直兵の練度が低すぎて吐き気がしている。…ようやく出てきたか。大方あいつの逃げるための時間稼ぎとしてだろうが」
「・・・グラール」
「昨日ぶりだな、英雄。約束、果してもらうぞ」
「わかっている」
「・・・グラール」
「わかってますよ、でも正直も英雄の相方の方が絶対に厄介ですよ」
「・・・確かにな。あの夜あの老兵が見初めただけはある」
そう言って出てきた4人。
一昨日の吟遊詩人の残り3人だった。
「とも・・・」
「構わない。行って来い」
「グラール、向こうでサシでやるぞ」
そう言ってヤイチは走ってゆく。
グラールは仲間に視線を送り、リーダーと思われる男は頷いた。
「・・・ありがとう」
グラールはそう言ってヤイチを追いかけた。
二人がいなくなり僕はバルトスから預かった本を開き、3人の名を呼ぶ。
「さて、ここにはもう誰もいない。伝説の英雄の力楽しませてもらおう。武闘家マルス、魔導師レベン、暗殺者クロート」
僕はそう言って、刀を抜いた。




