作戦前に渡すもの
「どういうことですか?」
ミリはトモがヤイチを指し、教王国と言う立場から支えてほしいといことに対する理解ができなかった。
「・・・ミリ、おそらくできたばかりの国は脆く他国からの干渉を受けやすいので後ろ盾になってほしいということではないかと」
「そういうことだ。教王国は各国の上位階級の信奉者が多く顔が効く。また、現12大司祭のほとんどが良くも悪くも守銭奴なため、大きく儲けを出しているヤマトを安易に潰さず懐柔しようと恩を売るでしょう。その流れを操ってほしいのです」
「確かに戦争好きの帝国や、権力配分の変わり易い商会連合国には向かない話ですね」
「・・・こう言ってはなんですが見返りはあるのですか?」
「レジスタンスの援助」
僕は即答した。そしてその答えは何よりも二人の心を揺さぶった。
「一見すると、それがなされたときに法国は恩をあだで返したように見えませんか?」
「今の教王国幹部がレジスタンスに見劣りすると思うか?」
「・・・」
二人は否定できなかった。それ以前に否定はできなかった。
それほどに前王 聖人 バルトスのカリスマ性は高かったのだ。
「これを踏まえてまず手始めに今夜の計画についてお願い事をしたいと思う。これは、我々二人の戦闘力の提示と共にレジスタンスへの借りを含めたものだ」
僕はそう言って二人に今夜の作戦の説明をした。
※※※
僕はいまだに耳と目をふさぐヤイチにの肩を叩く。
「おーい」
するとヤイチはそのまま倒れてミリの膝へとおさまった。どうやら寝ているようだ。
「―――!」
彼女は僕が気を使って張った遮音結界によって騒いでいるがまったく音が漏れていない状態となり、口パクで騒いでいるような奇妙な光景だった。
僕とメレーヌはその光景を生暖かい目で見たのだが、それがまた彼女を怒らせることになったのは言うまでもない。
また、ヤイチが乗った膝を全く動かさず僕達に文句を言う彼女は少し面白かった。
※※※
「はずかしい・・・」
ヤイチは起きるなりそう言って顔を隠した。
僕は無言で肩を叩き、にっこりと笑う。
「もうやだ・・・」
少し落ち込んだヤイチに、怒りつかれて寝てしまったミリを起こしてまた散策へ出かける。
そのあと僕たちは建国した来訪者によってもたらされた日本文化を楽しんだ。
「ラーメンがあるぞ!」
「温泉か・・・」
「オーケストラでアニソン・・・」
「広い果樹園だな。これはイチゴにリンゴ、柿まで・・・」
そんなこんなしているうちに夕方になり、僕達はそれぞれの役割のために分れた。
僕達はそのまま宿ではなく、少し古いbarに入る。
「あの時代はよかったな、そうだろ?マスター」
「ワイン飲むか?」
「10年前の頼む」
「・・・わかった。秘蔵を見せてやるからついてこい」
そう言ってマスターは奥へと入ってい行く。
Barの裏手へと続く扉。ここにある鍵を指したマスターは鍵を回し指したまま扉を開ける。
「ありがとう」
「・・・はいよ」
入った僕はマスターに礼を言う。と、そう言って無愛想なマスターはそう言ってドアを閉めた。
「ようやく来たな、レギオンにエイト」
「おう、ストルバのオッチャン!今日は協力よろしくな」
「ああ、わかってるよ。それよりそっちは任せたぞ?」
「安心してくれて構わないよ。ストルバ殿」
「レギオンは堅いな~。エイト、あっちにミカルやバンダーいるから声かけてこい」
「おお、いいね。昨夜以来だ。二日酔いしてたらいじってやろう」
そう言ってヤイチは奥へと消えてゆく。
「レギオン。お前さんは俺の部屋までついてこい」
「?・・・わかりました」
※※※
「あー、これでもない。これか?ちがうな」
そう言って投げた本を僕は掴む。
中には教王国の城の設計図が描かれていた。
・・・なんて不用心な
僕はそう思いながらそれを閉じて机の上においておく。
「あ、あった!これだレギオン」
そう言ってバルトスが渡してきたのは
古くくたびれ所々ほつれているが、大切にされていたことが良くわかるものだった。
表紙はもう薄れて読めない。
中を開くとそれが日記であることがわかった。
その文章中に気になる名前が載っていた。殿に来た同郷の人間のなかに黒野。仲間となった剣士グラール。
「これは・・・」
「ああ、われらが国建国王 クサヤナギさまの日記だ」




