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僕を雇わないかい?〜親友に殴られました〜

 

「おいしかった。やっぱ町の人達が食べているのもおいしいじゃない」

 

 彼女は満足そうにそう言う。


「おい、お前。これやるよ」


 そう言っておれは竹を繰り似たような植物でできた入れ物を渡す。


「これは?」


「はあ?水だけど」


「水ですか。どこで買ったのですか?」


「買う?いいや。魔法だよ」


「・・・そうなのですか。蒼魔法の使い手ですか」


「あ!・・・まあそういうことにしておいてくれ」


 俺は共にあまり自分の手の内を明かすようなことをするなと言われたのを思い出しなんとなくそう返した。

 この世界で全魔法を習得する奴なんてそういないらしいからな。


「何とも含みのある言葉ですね」


 彼女はとても不満そうだ。


「そうだ、おまえのこと教えてくれと言ってこっちが自己紹介してなかったな。俺はエイト。傭兵ギルド所属の傭兵だ」


「・・・そうでしたか。私は・・・ミリと申します」


「ミリね。覚えた。君の素性は聞かない方がいいようね。行くあては?」


「どこかに宿を・・・」


「じゃあ、俺と親友も宿取るからよければ同じところはどう?」


「それは・・・」


 彼女は警戒の目を俺に向けた。ああ、さすがに話が飛びすぎたか。


「そんな警戒しないでくれ。・・・そうだ。お前さん俺を雇う気はないか?」


「は?」


「飯宿代は別にいい。そうだな、アイツの匙加減によるが俺がこっちにいられるのは賞味1週間と言ったところか?その間お前さんをいかなる者からも守ってやるよ」


「国が相手でも?」


「ああ、国でも魔王でも、・・・勇者でも」


「フフ、あなたは不思議な人ね」


「あまり君には合われたくない」


「いいわ。雇ってあげる。でもわたしお金はこれだけ、あとは宝石くらいしか・・・」


 そう言いて彼女は腰の袋を開く。

 その袋はマジックバックと同じ技術が使われており中には大量の金貨。

 それにかなり純度の高い魔導石と呼ばれるランクA以上の魔法を発動したいとき魔術師の適正ランクをごまかす、又は負担を減らすために用いられるもので大体は不純物があるためか内部は濁っている。

 しかし彼女の袋から見えたその宝石は背後が見えるほどに透明な青の宝石。

 俺はすぐさまそれをしまわせた。そしてそのまま太刀狩り広場の出口へと向かう。


「え?あ、まって」


 彼女も遅れてやってくる。


「お前、ちょっと不用心すぎ。俺が悪いやつだったらそれだまし取られてるぞ。しかしスリに狙われなくてよかったな」


「・・・試したのよ」


 その言葉は小さく通りの人の喧騒にかき消されてしまった。


「うん?何か言ったか?」


「いいえ、ただあなたが悪い人じゃないのは分かっていたからね」


「どんだけ人を見る目に自信があるんだよ。じゃあなんで俺がそれに引かれないか分かるか?」


「うーん、いいとこのボンボンだから?」


「お前、バカにしてるだろ?」


「優しい人だからとか正義の味方だからとかじゃないでしょ」


「まあそんな恥ずかしい話じゃないわな」


「なら何よ?」


 俺は頬をポロポリと掻いて、正解を言う。


「簡単な話だ。ただ、必要ないから」


 彼女はそれを聞いてぽかんと口を開け呆然とした。


「置いてくぞ」


「あ、待って。お金が必要ない?それってお金持ちってことじゃないの?傭兵いや、ギルドなんてお金がなくて職にあふれた人がやる者でしょ。例外とすれば何処かの貴族、騎士や武人のところかしら?そのあたりが泊をつけるのに利用するあたりかしら。だからお金が必要ない」


「ひどい偏見だな。まあ、確かに金はそこまで持ってないぞ。仕事するうえで高価な道具をもってはいるが。そうそう、俺の国にはもう貴族はない」


 彼女は不思議そうな顔をした。貴族がない国は商業連合だが、彼は傭兵といった。余り一般常識がない彼女からしたらその矛盾はわかりにくいであり、実はその矛盾はいい着眼点であるのは第三者のいないこの場では残念ながら追求不要と判断させざる得なかった。


「ねえ、あなたって強いのよね?」


「うん?まあそれなりに。上はいっぱいいるけどね」


「そうなんだ。あなたそこら辺の衛兵よりは絶対に強いと思うし、もしかしたら近衛騎士よりも強いかもしれないと私は思ったわ」


「あー、それはあるかも。一応ランクはAだから」


「ランクA!?その年で・・・でもうわさは聞かないわ。まああの国だから仕方ないのかしら?今続々と有望株が生まれているらしいから」


「それは親友が新人教育に力を入れてるからだよ」


「へぇ、あなたの親友は偉い人なのね」


「それはどっちの意味で?」


「もちろん人としてよ。新人教育なら受ける依頼のレベルが低くなり成功率は上がるでしょうけど、報酬は低いでしょうに」


 その言葉に僕は笑った。


「そうなんだよね。でもそれだけじゃない。私財を切り崩し初期投資と寝床を用意しているんだ。彼らは元スラムの子達で親友に見初められた子達なんだ。彼らは遥か高みを見せられているから、大半はお凝りを起こさないとおおもうけど…」


「待って。私財を切り崩して?スラムの子?」


「あ、これ秘密だった」


「そうだひみつをべれべらしゃべるな。」


 その声に彼女は前を向く。


「あ、トモごめん。やっぱり厄介ごとになっちゃった」


 彼はそういうと、もう一人の親友に思いっきり殴られるのであった。




ここから話は加速する!(はず)

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