救出 ~救った彼女から紅葉のお手て~
少し短いです
声が聞こえ、俺の体は自然と動いた。
腰には親友の鍛えてくれた剣の柄の装飾部を2回タップした。
声の聞こえたところに行くとそこには黒装束の不気味な雰囲気を纏った何かがフードをかぶり顔を見えないようにしている少女に迫っているところだった。
「何をしている!」
俺は概念武装〈覇剣王〉のスキル、覇王の威圧を声に乗せ奴らに声をかけた。
なぞの集団はこちらに気づき、奴らのうち3にんがこちらにナイフを見せながら迫ってきた。
「武器を向けるのなら、死ぐらい覚悟しているのだろうな!」
俺はそう言って特殊歩法で彼らの横を通り過ぎた。
「無心歩法 空風」
それは地球において親友より教えられた心臓に全くの負荷をかけず歩く方法。
それのもとは心臓を使い体に負荷をかける身体操作の際に心臓の負荷を軽減させる方法。
この心臓においては心配がないため方法はあらかじめトモより仕入れていた。
そしてこれは初めての対人実践。
この歩法。基礎や独自の解釈が入ったことによりより深くまた、己が心臓のことをよくわかっているために、彼は元の世界ならば師範と呼ばれるクラス。いやそれ以上とも言えるようになっていた。
彼の親友は言った。
「この歩法、剣との相性がいいとは思っていたが、まるでお前のために作られたようだな」
彼の言葉を思い出し俺は笑う。
「ああ、そうだな。まるで、苦しくないぜ」
覇剣王のスキル剣を極めしもの補助効果によりただの斬撃さえも目にも止まらぬ抜剣、斬撃、投剣だった。
迫った3人を瞬殺。剣を横に投げ、残り二人の首をまとめて切断。
投げた剣はそのまま壁にぶつかるかに思えたが装飾が光り、それは空中で停止した。
「トモがテンとスーと一緒に遊びで作った剣。遊びなのにすごい完成度。戻ってこい」
俺がそう言うと剣は俺が差し出した鞘の直前まできてゆっくりと鞘に収まった。
この剣に名前はないそうだが何でもいくつものお遊び要素がこもっているらしい。
…って、そんな剣よりも。
俺は彼女へ走って駆け寄り彼女を見る。
ローブから見える足は擦り傷が多く、また右阿足首をひねったのかあざができている。
「大丈夫ですか?今治癒をかけます。〈白き癒しの手〉」
俺は彼女の足に手を当てるとそこから白色の光が漏れ、彼女の傷を癒してゆく。
「私と同じ純白魔法」
俺はその言葉に反応しそうになったが聞こえなかったことにした。
そのあたりのポーカーフェイスは前の世界でしずくやレライト、トモを相手に自然と身についている。
・・・だってそうしないと、トランプ負けてしまうから。
「ねえ、あなた―――(きゅーう)」
彼女を癒すと彼女のお腹からかわいらしい音が聞こえた。
「ぷッ・・・あ、ごめん。待って、たのむ。・・・その手をおろして」
その路地には盛大なビンタの音が鳴り響いた。
※※※
俺は謎のローブを着た少女を連れて、大通りを歩いていた。
彼女の手には露天商の焼きそばとたこ焼きが乗っていた。
「あそこで食べないか?」
「ふん」
さっきの事以降、彼女はご立腹のようだ。
彼女は顔をこっちからそむける。
しかし、それはこの大通りでは危ない。
「あ、おい」
俺はそう言って彼女を引き寄せる。思ったより強かったのか抱きしめるような格好になってしまった。
しかしそこを少しガラの悪そうな探索者と思われるパーティーが通り過ぎる。
「おい、気をつけろ。誰かの服汚したらどうするんだ」
俺はそう言うと腕の中の彼女は頬を朱に染めていた。
そして自分も名も知らぬ女性を抱きしめている帰途に気が付くとあわてて体を離す。
「すまない」
「・・・何謝っているの。それはこっちのセリフよ」
彼女は小さな声でそう言った。
少しばかり気まずくなった俺は近くに広場を見つけそこへ彼女を引っ張ていった。
「あ、ちょっと」
「あそこで食べよう。落ち着いたらできることだけでいいから君のこと教えてくれないか?あれは少し不可解な感じのする生き物だったから」
俺はそう言って彼女を広場へと連れて行った。




