閑話:BARカナタ 01
ちょっと閑話はさみマース
城下町裏通り、barカナタ
カラン、カラン。
ドアが開くとともにベルが鳴る。
「いらっしゃい、おや。ここは一見さん・・・そういうことですか」
入ってきたのは青年2人。ここは一見さんお断りのお店だが、これは連れであることは聞いていたので奥のボックス席の人物が手を挙げて二人を招いているのを見て言葉を留めた。
「マスター。二人にケーキを。って、もう店仕舞いの時刻かな?」
日は傾き、夕方になっている。
メニューに表示されている時刻は午後6時。
もう一軒中央通りでbarをやっているマスターはそろそろ移動しなくて間に合わない時間だ。
「いえ、やりますよ」
彼はそう言って店の奥に消えてゆく。おそらく明日焼く分のケーキを使ってくれるのだろう。・・・一応補充しておくか。と僕は心の中でひそかに思いながら目の前の二人を見る。
少し肌寒くなってきており、二人は厚手のコートにフードをかぶっていた。
「いや、ここがトモの店?ああ、ちゃんと仕事を終わらしてきているから安心して」
そういうのはヤイチ。王として顔が広まっているため、こうして店仕舞いに呼んだのだ。
「ほお、これは渋谷にひそかに噂になっているユウと言う店に似ていますね?」
そういうのはロビンことミチナガ。
普段はスーツばかり来ているが今日は私服のようだ。・・・と言う会検面の私服はなんと言うか・・・イケメンだ。あ、センスがいいというのか。
「・・・そうなのか?まあ、ユウは親父の作った店だからな。ちなみに、毎週火曜のよる10からの3時間と不定期に開いているからな・・・って言っても、もういけねえけど。まあ、茶や、コーヒーの入れ方を習ったのもそれが大きな理由か?もともと空間把握の練習として手伝いをしていたし、訃音気は気に入ってそれっぽくしてみたいと思っていたがこんなふうだったんだな・・・」
僕は思わぬ偶然に店内を一瞥する。
地球では見れなかった、親父の店。
色々な仕事を掛け持ちしながら、絶対に開かない日はなかった。
火曜の深夜。この時間だけは眠たい目をこすって・・・と言っても開かなかったんだけど、眠気をごまかしながら親父のお店で接客し、常連の偉そうな爺さんたちの相手や聞かせてくれるお話し、体術や気功術。五感各種を使った色々なことなどさまざまなことを聞いた。
・・・まあそれで齢13にして夜の世界に飛び込んでしまったわけだが、店で疲れて眠ってしまった後におぶって運んでくれた親父の背中は暖かった。
あの感覚は今でも覚えている。
「・・・とも?」
「…あ、すまない。ちょっと向こうのことを思い出していてな」
「そうか。そういえばお父さんて国際的な医者だったんでしょに加えてあのゲームの開発者じゃなかったけ?」
あれとは間違えなくselect・gardenの事だ
「・・・まあな。でも、実際親父は出資しただけと言っていたからな。医者も今はほとんど引退して今何やってんだか?仕事はしているみたいで大量のお金が家に振り込まれるのだけど、帰ってくるのが不定期でな?・・・もしかして親父、この件に関わっているのかな」
「まあ、そうとは言い切れないけど、さすがに異変には気付いているんじゃないのかな?…あ、でも向こうの世界の同じように進んでいるとは限らないのか?」
「まあ、今に私たちではわからないので今やるべきことをやるべきなのでしょうね」
「そうだな、ロビン。まあ、傭兵ギルドを抑えたし、レライトには商会運営で経済侵略、ホシカには満月教による宗教侵略を行ってもらっている手前、こっちは地盤を固めるくらいしかできないからな?」
そう言っていると、マスターがケーキ3切れとコーヒーを持ってきてくれた。
僕はケーキはこっちで作って補充しておくと言うと、マスターは笑って「楽しみにしておきますよ」と言って出て行った。
・・・
「トモ、今の人は何者だ?」
「ええ、あの人少なくとも私たちと同レベル、いやそれ以上ですよ」
彼が去り、少し時間がたつと彼らはそう言って僕に問いかけてきた。
僕は少しだけ残ったコーヒーの残りを飲み干すと席を立ち、コーヒーを入れる。
「あの人は内陸側にあった商人の町『サカイ』とここ『キョウ』をつなぐ中央街道も中間地『クサツ』にカフェとbarを構える人だったんだけど、あそこは依頼途中でピリピリしていたり、腹にたまるものを欲している傭兵が来るから会わなくてね。けど、夜になる戸当たりの店の店主はみんなあの店に集まっていた。なんでもあの店はこの街の中でも一番治安がいいらしいからだ。・・・僕も一日あの店にいたけど店内での乱闘騒ぎは一回もなかった」
「「!?」」
「そう、驚くべきことにね。あのマスターは客には腰が低いが無法者には容赦しない。実際、乱闘騒ぎを起こしそうになったやつや器物破損などを行った奴は有り金全部巻き上げられて衛兵に突き出されていたよ。衛兵の人もあの人を知っているみたいで話を聞いたらあの人は元冒険者(他国『ギルド』の一つ冒険者ギルドで登録した人の事。大陸とそのギルドでそいつの出身を判断する)らしい。最終ランクはS 。ああ見えて50超えているそうでね、体にガタがきているそうだ。二つ名は黒影。暗殺者だそうだ」
「・・・同じ匂いを感じました」
「そうだね、ロビンと同じ義賊のまねごとをしていたらしいよ。ロビン話をしたら話が合いそうですねだって。今度都合付けてここ着てみな。一応そのためのきょうでもあったから。ちなみに奥さんはそのとき貴族らから救い出した人らしくてね。男女の双子と今お腹に一人いるらしい」
「へぇー、それでどうしてその彼が今ここに?」
エイトは「このケーキうまぁ」とケーキを絶賛しながらそう聞いてくる。
「俺を師匠と呼ぶミチカゲっているだろ?」
「ええ、あなたが指導をつけたとかいう」
「彼、あの人の息子さんなのだよ?」
「・・・え!?」
あと3話くらい続きます。物語にもちょくちょく出す予定なのでできれば読んでください




