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百鬼絢爛(骨組み版)  作者: 赤良狐 詠
真夜中に踊る
19/55

其の漆

 汗ばむ暑さで自然と目が覚めた。少しばかりの熱気を帯びた風を感じたからに他ならない。視線を風が来る方に向けると美鬼が掃き出し窓を開けて腰を下ろしていた。

 広くはない黒木家のテラスで、空を見つめている美鬼の横顔は寂しそうで、声を掛けづらかった。それでも、美鬼が気配に気が付いたのか、紗理奈を見た。


「起こしてしまったか? 悪いことをしんした」


「ううん、大丈夫」


 紗理奈は上体を起こして背筋を伸ばしてスマホを見ると七時半だった。遅くまで起きていたので、起きるのが遅くなるのでは思っていたが、そんな心配は無用だったようだ。部屋をよく見ると瑠美がいないことに気が付いた。


「瑠美ちゃんは?」


「あやつなら少し前に起きて電話をすると言って部屋を出た」


「そっか。じゃあ、私着替え持ってくるね」


「わっちのはいらん。瑠美のだけ持ってくれば良い」


「解った」


 客間を出て廊下を少し歩くと瑠美が電話をしていた。


「おはよう瑠美ちゃん」


 電話をしているので少し声のボリュームを抑えめで話しかけた。瑠美は


「ちょっと待ってください――おはよう黒木さん。ごめんね、電話してるから、また後で」


「うん。解った」


 紗理奈はそのまま階段に向かって一段上がった。瑠美が見えなくなったが、話声は聞こえる。彼女が誰と話しているのか気になり、聞き耳を立てると聞こえてきたのは


「――じゃあアイヌの――はい――解ってます――大丈夫です――いつもありがとうございます――」


 少しばかり聞いたが何を言っているのか相手の声が聞こえないので理解できない。それと少しばかりの罪悪感に苛まれたので自分の部屋に素直に向かった。二階に上がるとタイミング良くさと美が部屋から出てきた。


「お姉ちゃんおはよう」


「おはよう。さと美大丈夫?」


「何が?」


「体に異変はない? 怠いとか気持ち悪いとか?」


「うーん、何か少しだけ――」


「何!?」


「眠い」


「……あっそ」


 心配をして完全に損をした気分だったが、何事もないようで良かった。部屋に入ると早速瑠美に着てもらう自分の服を慎重に選び始めた。

 体系はそこまで変わらない……嫌少しばかり嘘を吐いた。正直に告白すれば胸囲は瑠美の方がある。そこに十分に注意して、絶対に似合うであろう服を着てもらうことにした。

 まだ暑いのだから、ワンピースを着てもらうのも良いし、ショートパンツでダルダルシャツを着てもらうのも良い。

 結局はピンクのワンピースをチョイス、自分も適当に着替えて客間に戻ると、衝撃的な光景に俄然としてしまった。美鬼が着替えているのは良いとしても瑠美まで着替えているのだった。


「瑠美ちゃん! その服は!?」


「麗さんから昨日借りたの」


「私の借りるんじゃなかったの?」


「寝間着だけって言わなかったけ?」


「ショック! でも可愛いから、まぁ良っか」


「何が?」


 少しばかり麗の服は大きいようだが、その着こなし方がカッコ可愛い感じを醸し出していて抱きしめたい。特に首筋の辺りに吸血鬼の如く噛み付きたい。そんな妄想を抑えて紗理奈は


「朝食食べるよね?」


「うん。宮部先輩には朝食を食べてからお邪魔するって言ってある」


 っと瑠美が言った。


「解った。じゃあ早く食べちゃおう」


「あと、私は一度家から持ってくる物があるから一旦別行動するね」


 離れるのが少しばかり哀愁の思いに駆られてしまうが、こんなに長い時間一緒にいられたことに感謝をするしかないと思った。それに昨日は瑠美が浸かったお風呂にも入った。

 瑠美がコンビニで買った歯ブラシは家宝にして大切に保管しておけるし、良いことは沢山あった。

 リビングに行くとあきこが朝食を作っていた。っと言っても、味噌汁は昨日の夜にさと美が作ったなめこ汁があるので、ポテトサラダを作って朝鮮漬けを皿に盛り付けているだけだった。


「お母さんおはよう」


「おはようございます」


「おはようございんす」


 瑠美も美鬼も挨拶をして、それを聞いたテレビを見ていたさと美も


「おはようございます」


 っと元気よく挨拶を交わした。それからテーブルに座って朝食をみんなで食べた。それから美鬼がどうしてもやりたいというので、さと美とテレビゲームで一勝負した。結果は


「どうしてわっちは勝てんのじゃ! こんな箱の中の世界で!」


結局は三本勝負したが美鬼が勝利の雄叫びを上げることはなかった。紗理奈はあきこに


「今日も神前祭の打ち合わせあるから行ってくるね」


「迷惑を掛けないでね。母親のあたしが言うことでもないけど、紗理奈は変わってるから」


「お母さんどういう意味!?」


 そのやり取りに他の皆は笑っていたが、紗理奈には全く面白くなかった。玄関であきことさと美が三人を見送ってくれた。瑠美はお辞儀をして


「突然お邪魔してすみませんでした。ご馳走様でした」


「良いのよ。また来てね」


 っとあきこはにっこりと答えた。美鬼はさと美に


「一度もおぬしには勝てなかったが、次こそはわっちが勝つ!」


「楽しみにしてます。また来てくださいね」


 美鬼と距離が縮まったと思うのは気のせいではないだろう。なぜなら、ドアを出る前に今まで見せたことのない笑顔でこう言ったのだ。


「当然じゃ! わっちの大切な友達の妹御に、また会いに来るからな!」


 紗理奈はそれを見て嬉しくなった。自分のことを大切な友達と言ってくれたことも心が幸福で満たされる感じがした。


「行ってきます」


 玄関を出ると涼花が周りを注意深く見渡しながら立っていた。表情は穏やかだが、その瞳には寂しさが見え隠れしているように見えた。そんな彼女に美鬼が


「涼花、では頼んだぞ」


「任せて下さい」


「何かあればわっちに糸電話をくれ」


「はい」


 紗理奈も美鬼に続けて


「お願いします」


「何も心配することはないわ」


「はい」


 朝の陽ざしは眩しくて陽炎が道の先に見えいた。宮部家の仮住まいであるアパートまでは十分もしない距離であったが、途中の道で瑠美が


「じゃあ、私は一回家に戻って持ってくる物があるから、また後で」


「うん、解った」


「じゃあね」


 手を振って去って行く瑠美を見送って美鬼と二人だけになり、何を話そうかと思っていると美鬼から話を始めた。


「わっちがおぬしにはどう見えるか聞いても良いか?」


「どうって何を?」


「わっちは、ちゃんと旦那様を好いているように見えるか?」


「もちろんだよ。宮部先輩の事は、この世で一番大切な人って感じがする」


「旦那様にそれは……通じているんじゃろうか?」


「痛いほど解ってると思うよ。私には二人はちゃんと通じ合ってるうように見えるけどなぁ」


「そうか」


「でも不安なんでしょ?」


 美鬼は黙って視線をずらしてしまったが紗理奈は続けて


「言葉で何も言わなくても、一緒にいてくれたり、大切だと思ってくれる人ってさ、友達よりも恋人よりも、もっと大切な存在、家族だと思うよ。そう思ってるんじゃないかな?」


「そんなことをおぬしから言われるとは思わんかったわ」


「ふふふ、これでも妄想だけで何度も恋愛は重ねてるから頼りにしてよ。何かあったら、いつでも話してくれて良いからね」


「ありがとう」


 アパートに着くと昨日の夜に、はじめが乗っていたバイクが駐輪場に有った。階段を上がって四〇四号室に真っ直ぐ向かった。部屋に着いて美鬼がドアの鍵を開けた。


「ただいまでありんす」


「お邪魔します」


 中に入るとすぐに麗がやって来た。


「美鬼ちゃんおかえりー」


「姉様、ただいまでありんす」


「お邪魔します」


「また来たね紗理奈ちゃん。常連さんだねぇ」


「ちょっとそれは……」


「ほら入って入って」


 靴を脱いでいる最中にも麗が美鬼に


「恋バナできた?」


「少しですが……できたと思いやす」


「なら良かった」


 それからはじめの部屋のドアを開けると彼は何かの巻物を呼んでいるところだった。はじめは二人を見ると


「おかえり美鬼ちゃん、紗理奈ちゃんはいらっしゃい」


「ただいまでありんす旦那様」


「お邪魔します」


「座って良いよ。今飲み物でも用意するから」


 はじめは巻物を閉まって立ち上がると紗理奈は


「すみません」


 続けて美鬼が


「わっちもお手伝いしますかい?」


「大丈夫だよ。座ってて」


 っと言って部屋から出て行ったので、またしても二人っきりになったが入れ違いで凜が部屋にやって来た。


「紗理奈ちゃんおはよう」


「おはようございます」


「おかえり美鬼ちゃん、楽しかったかしら?」


「ただいまでありんすお義母様。はい、友達ができんした」


「それは良かった。今お菓子持ってくるからね」


 それからスマホに瑠美から連絡が入って


《十五分くらいでそっちに行くから》


《了解》


 っと返事をした。はじめがお盆に麦茶とせんべいなどが入った器を持って戻ってきたので紗理奈は


「瑠美ちゃんあと十五分くらいで来るそうです」


「じゃあ、それまで少し待っていようか。傷は何ともないかい?」


「無問題です! お肉もしっかりこの身体に入れる事ができました」


「なら良かった。妹さんは大丈夫だったかい?」


「何ともありませんでした。むしろいつも通りでムカつきましたよ」


「なら心配はないね」


 美鬼はうじうじして人差し指をクルクルと突いて、はじめを見つめて何かを言いたそうにしている。紗理奈が


「どうしたの美鬼ちゃん?」


 っと聞くと口を尖らせて


「な、何でもありんせん。気にせんでえぇ」


そうは言われたが、何とも気になるようなしぐさである。そして、紗理奈はふと脳裏を過ったのは


「あ! 昨日と今日の朝まだだったね」


「な!?」


 はじめには紗理奈の話した内容が理解できていないようだったので


「何の事?」


 っと聞いてきたが、紗理奈は


「あっ!」


 うっかりと口に出して言ってしまった無神経な自分を本当に馬鹿だと思った。紗理奈は考えながら口から言葉を繋いでいく。


「何でもないです……えっと、あのですね、あ! お手洗い何処ですか?」


「部屋を出て右の奥だよ」


「ちょっと行ってます」


 本当は別に行きたくもなかったのだが、自分では機転を利かせたつもりである。立ち上がる最中に美鬼に


「二回分キスしてね」


 っと耳打ちして


「うっさいボケ!」


 顔が真っ赤になった美鬼は可愛らしかった。はじめは何のことだが解ってはいないようだが、紗理奈はにっこりとしながら部屋を後にした。

 トイレには向かったが入ることはせずに途中の部屋で話し声がしているのが聞こえてきた。その声は凛と麗の声であるはすぐに解った。


「きっとあの子も解る時が来るわ」


「そうは言っても本当に信じて良いの? だってあの娘は鬼なんだよ!」


「はじめが決めたことよ。男の決断を女がどうこう言うもんじゃない。これは前にも話したでしょ?」


「でもお母さん!」


「心配することはないわ。恋はいつか愛に変わる。待つことも大事なの。見守りましょう」


 立ち聞きしていて話の内容は美鬼のことを言っているのだと解った。そして、少し美鬼のことを思うと悲しくなってきた。

 表面上では美鬼のことを家族のように接していた麗は、実際にはまだ彼女のことを信用してはいないことを。凜も同じようなものだと、紗理奈はそう感じてしまった。

 話をこれ以上聞くことはいけないことだと思って、はじめの部屋に戻ることにした。何処かやるせない気持ちになって部屋に入ると、はじめの右腕にべったりして抱きしめている美鬼が目に入った。


「お邪魔だったかな?」


 紗理奈は美鬼の嬉しそうな顔を見てしっかりとはじめに甘えたのだと思った。


「そんなことありんせん。早く座りんす」


「はーい」


 はじめは何事もなかったような感じに振る舞っていたが、紗理奈の頭の中では二人が昨日できなかった夜と今日の朝のキスをしたと妄想した。


「旦那様聞いて下さいまし。こやつの妹御にわっちは勝てんかったのでございます!」


「何をして勝負したの?」


「箱の中でやんす」


「箱の中って?」


「テレビゲームです」


 紗理奈の一言で理解したはじめは笑って美鬼の頭を撫でた。


「あぁー、その話聞きたいな」


「はうー」


 美鬼の話を聞いている時のはじめはとても嬉しそうだった。今まで助けてもらう時だけにしか会っていなかったので、難しい顔つきしか見たことがなかった。そんな笑っているはじめを見るのが初めてだったこともあり新鮮だった。

 美鬼も僅か一日足らずで表情が少しばかり豊かになっているような気がしたが、はじめの前ではいつも表情豊かだったなと思い立った。

暫くして玄関のチャイムが鳴ったので、はじめが立ち上がって部屋を出て行った。戻って来た時には、もちろん手提げかばんを持った瑠美が一緒だった。瑠美は一度家で着替えているらしく、麗に借りた服ではなかった。


「麗さんに借りた服は洗って返しますね」


「うん、僕から話しておくよ」


「じゃあ、私が集めた情報をお話しします」


 そう言うと瑠美は鞄の中から一冊の本を出してテーブルの上に置いた。


「これは?」


 はじめの質問に瑠美は


「これは奇異雑談集です。この本の話はまた後でします。まずはあの刀についてです」


 それに紗理奈が


「何か解ったの?」


「うん、美術館で無くなったのはアイヌ民族の戦闘衣装とアイヌ刀って言う日本刀よりも太い刀だったの」


「それ私ニュースで見た」


「でね、アイヌ刀について調べたら、ある伝説があることが解ったの」


「伝説?」


 はじめの質問に


「はい、アイヌに伝わるイペタムという妖刀の伝説です。山賊達がある村を襲った時、老婆が一人で彼らに立ち向かった。その時持っていた刀は、カタカタと音を立てて宙を飛び山賊達を殺した」


「良い刀じゃん」


 紗理奈の呑気な発言があったが瑠美は続けて


「そうでもないの。別の逸話では、イペタムは人喰い刀と言われ恐れられているの。血を欲し、そしてその血で自己再生して無限に切り続ける」


「どうすればそれを倒せるんだい?」


 はじめの疑問に瑠美は即座に答えた。


「水を嫌っているらしいです。どの伝説でも、池や川に入れて封じ込めたとされています」


「うーん」


 はじめは恐らく撃退方法を模索しているのだろうが美鬼が咄嗟に答えた。


「無名で壊せば良いじゃないですか?」


「それは駄目だよ美鬼ちゃん。物であっても魂が宿ってる。だから破壊するのは最終手段だ」


「解りんした」


「これはまた後で考えよう」


それから瑠美は持ってきた本を開き始めた。


「あと、空から現れた妖怪変化も解りました」


 それには全員が驚きを隠せなかった。紗理奈は


「え!? どうやって解ったの!?」


「実は家に帰って調べたら、猫はね、猫又以外にも変化する妖怪変化がいたの。それがこれ!」


 瑠美がページをめくって指差したのは


「ひぐるま?」


 紗理奈の発言に瑠美が


「黒木さん、これは火車(かしゃ)と読むの。お年寄りや生前に悪行を重ねた人を連れ去る猫の妖怪変化」


「お年寄り? もしかして――」


 その言葉にはじめが何かに気が付いたようだった。美鬼も気が付き


「なるほど。事件は繋がっていたんでやんすね」


 自分の理解度の低さが嫌になってくるが、解らないことは解らないと素直に言える勇気を紗理奈は持っていた。


「えっと、どういうこと?」


 瑠美が優しくそれに答えた。


「黒木さん、つまりね、この火車が、お年寄りの連続失踪事件の犯人だよ」


「あぁー!」


 思わず拳と手の平を合わせて解ったポーズをやってしまった。それでもどこからこんな情報を手に入れてきたのだろうか?

朝電話で話していた相手ではないかと思った。瑠美は「いつもありがとう」っと言っていた。情報提供者の存在が大きいのではないかと思った。さらに瑠美は話を続けて


「きっとね、猫又達が火車を邪魔しているんじゃないかと思うの」


「どうして猫又はそんなことするの?」


 紗理奈は素直な質問をした。


「それは解らないけど、さと美ちゃんとの糸電話の会話からも猫又達は味方だと思うの。助けて、邪魔するって言ってたのは、猫又達が何かを止めようとしているんじゃないかな?」


 はじめは難しい顔で


「じゃあ、イペタムはその邪魔をする猫又達を殺す為に使われているのかな?」


「多分そうじゃないですかね? 猫又達が邪魔をするからイペタムを使っている。何か目的があるんですよ」


「目的って何だい?」


 瑠美は、はじめの目を見て訴えかけた。


「きっと口裂け女の事件と繋がっています。これは涼花さんが話していた『あのお方』じゃないですか? そして、パレードが全ての事件の発端――ですよね? 宮部先輩?」


 瑠美の言葉にはじめは目を逸らして俯いた。それに美鬼が怒りを露わにして


「おい! その話はやめなんし!」


「私達は無関係じゃないんです! 宮部先輩、教えてください!」


 はじめは顔を上げて瑠美を見つめ


「……考えさせてくれないかい?」


「どうして言えないんですか? 私はどうしても知りたいんです! だって――」


「少し、時間をくれないかな? 何か理由があるみたいだけど、僕はあの話をすると苦しいんだよ……ごめんね」


 そういえばさっきも凛と麗の会話でそんな話をしていたのを紗理奈は覚えていた。瑠美は前のめりになっていた姿勢から、深く息を吸って落ち着いたように見えた。


「宮部先輩……すみませんでした……」


「良いんだよ。僕が話せないのがいけないんだ」


「そんなことありんせん! 旦那様が苦しむ姿をわっちは見とうないです!」


 美鬼はいつになくはじめに寄り添っているように見えた。はじめは美鬼の頭を撫でながら


「僕は語らないと誓ったけど……どうしようかな……美鬼ちゃん……ありがと」


「旦那様……」


「ごめんね。話を戻そう。猫又達を追えば、またイペタムも現れるだろうけど、どうやっておびき出せば良いのかな?」


 はじめの疑問に誰も答える事ができずにいた。暫しの沈黙を破ったのは意外にも美鬼だった。


「わっちに考えがありんす」


「どんなことだい?」


 はじめの問いかけに美鬼はにっこりと笑って紗理奈を見て答えた。紗理奈はその話を聞いて、抑えられない感情で涙が目に溜まって溢れだしそうだった。

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