おナベさん
『なべこでございまぁす』がキャッチフレーズの、国民的人気マンガ『おナベさん』。作者は昭和時代の大漫画家、長谷村子である。
立像の一体一体を紹介させていただく。まず――
陽本菜辺子(ひのもとなべこ)
主人公。主婦。旧姓……というのかな、ワレ田。幼いころ、戦争で生き別れになった陽本夫妻の実子。もちまえの明るさと機転で、戦後をたくましく生き抜く。
陽本風太(ひのもとふうた)
婿殿である。旧姓、トジ山。戦災孤児。なべこの身元さがしに尽力する。なべこが陽本家の人だと判明したとき、一度は身を引くのだが、ドラマチックな展開後、なべこと結婚するにいたった。
陽本勝男(ひのもとかつお)
ふうた、なべこ夫妻の長男。後期『おナベさん』の主人公。
陽本志保(ひのもとしほ)
勝男の妹。からい女の子だぞ。そして――
陽本しいたけ
陽本家当主。一家の大黒柱。勝男の祖父。『陽本家は日本の由緒正しき家柄』という設定だ。
陽本こんぶ
しいたけの連れ合い。勝男の婆ちゃん。
ミソ
ペットのにゃんこ。
連載開始が太平洋戦争終戦の翌年というから、つまり来年、なんと誕生120周年、大還暦を迎える。めでたい。――ちなみに太平洋戦争(第二次世界大戦)とは、日本がアメリカ相手にやらかした戦争のことである。本当にありがとうございます。
作者、村子は、未来である今の日本の状況を予見したわけでは、もちろんないのだろうが、偶然にしろ現状にあまりにも重なってる面は否めない。とくに前期なべこの境遇と活躍は、人々の心情に優しく励ますようにフィットした。陽本一家は理想の家庭像として愛されて、ちまたは空前のリバイバルにわいている。
以前から、いやいや昭和時代のその昔から、国内いたるところに家族像が建てられていたのだが、近年、それがさらに増えたようなのだ。首都圏だけでも、新規制作の個体数は、百のオーダーになるんじゃなかろうか。ひと産業だ。
100周年、110周年記念年は、二回の極東戦争で流れてしまった。大記念年たる来年こそは、という意気込みが人々の心の中にあり、それが明日への活力となっていたのかも、しれないな。ふふん。
俺はある一体の像の前で、また歩みを止めた。
陽本しいたけ、像……。
ステッキ片手に穏やかに笑ってる、なにかと話題を提供してくれる爺さんだ。