奇跡の果て
俺の顔が今どうなってんのかわかんねぇ――
だがしかし、目の前の瑛の顔色はよく、よおく、わかった。もう首筋から耳の先まで、真っ赤っかっかっかっか――!
なんてムチャクチャ可愛いんだよ!
俺は――
俺は俺は俺は俺は――
我慢できずについに爆発したのだった。
「――お召し物を、この場で、脱いで頂けるということですかっ!?」
「声が大きいよ……」俺はかまわず大追求する。
「もし、その“毛”が、体の奥まった部位の“毛”だったら、ようするに、瑛さまにおかれては、“野外露出プレー”をして下さるということなんですかッ――!?」
「――バカ」
ふいに背中を回して、瑛は逃げだそうとした。
そんなこと許す俺ではもはやないではないですか!
ダッ――と襲いかかって、両肩を鷲づかみにした。そして、
「うぃいいん、うぃいいん、がっしゃーん」と、正しき方向へ、すなわち再び俺の正面に、体の向きを変えさせたのだ。
さぁ、さぁ、さぁさぁさぁさぁ――!!!
この身を流れる血が猛り、狂い、燃えさかる――!
俺は容赦なく妄想するのだ!
瑛の両目を見据えてだ。ガッキと見据えてだ。
逃さない。逃がさないぞ。
逃さず両目を見据えたまま、俺は、最大限マックスの、大馬力の、大馬鹿妄想を、本人の目の前で、視線を絡めたまま、妄想逞しく、妄想してやるのだ――!
嗚呼!
屋外で、アスファルトの路上にて!
いつ、他人がやって来るかわからない公道上にて――!
黒革靴と、男子学生用白ソックスだけ残して、他はナッシング、真っ白な裸体をさらす、高貴なる16歳!
恥ずかしさでプルプル震える肉体、夜風になでられヒクヒクするいろんなところ。今すぐ身体を隠したいのに、自ら交わした契約に縛られ、この俺の命に従わねばならぬ屈辱!
なんという敗北感! 持て余す肉体の震え、背徳感! 俺、感涙!
俺は意地悪に命令する。
さぁ、両手を車につけろ。尻を上げるのだ。そして股を開け! 抜きやすいよう、全部さらけ出すのだ――!
俺、鼻血噴出!
涙目でポケットからハンカチを取り出し、拭いてくれる瑛くんだった。
「バカ、バカバカバカバカ……」
この瞬間だった。なんとも俺は、神がかった啓示を得たのである!
押しの一手に出た。
両肩の手に力を込める。ここで逃がす気はまったくない!
「瑛、お前に、マッサージも試したい!」
目の前のコイツは、ついに泣き笑いの顔になった。もう、さっきからレア顔連発である。
「君は――」
瑛は話をそらしにかかった。
「女の子は、たしか、巨乳が一番好きだったよな。そうだそうだ」
俺はもう、気分的には大絶叫したのだった。
「美乳が一番ですッッッッッ!」そして、
「なんなら、豊乳マッサージだって承りますッッッッッ! そんなことより――」
話をそらさないでください! マッサージ、オーケー?
瑛は、俺の獣じみた勢いに押されたのだろう、いや、押されたふりして逃げ場を作ったのだろう、とにかく!
コクン、と頷き――!
ついで言葉にも、ハッキリと、表したのだった!
「マッサージ、オーケーです……」
俺、エライ!!!
俺の回りで今、天使が巡り回りて天上のラッパを吹く。銀河がきらめき、大歓声が上がったのだった!
嗚呼! この夜この時の、この俺こそが、世界史に残る、大英雄なのであった――!
俺の将来の息子の名前は今、決まった! 大吉である! なんという目出度さよ!
俺はもう、ガッキと瑛の両肩をつかんで離さない。
うおう! 露出だ、野外露出プレーだ!
嗚呼!
屋外で、アスファルトの路上にて!
いつ、他人がやって来るかわからない公道上にて――!
黒革靴と、男子学生用白ソックスだけ残して、他はナッシング、真っ白な裸体をさらす、高貴なる16歳!
羞恥心でプルプル震える肉体、夜風になでられヒクヒクするいろんなところ。今すぐ身体を隠したいのに、自ら交わした契約に縛られ、この俺の命に従わねばならぬ屈辱!
なんという敗北感! 持て余す肉体の震え、背徳感!
俺は意地悪に命令する。
さぁ、両手を車につけろ。
さぁ、尻を上げるのだ。
そして股をお開きなさい、抜きやすいよう、全部さらけ出すのだ、フハハハハ――!
そのあと俺たち二人は、仲良くお手々をつないで、夜中の公道を、お散歩するのだどこまでも!
恥ずかしがっても許さない、許してなんかやらない! なんて極道なこの俺であることか!
いつ、他人がやって来るか、見られてしまうかわからない道の真ん中で――
見られたら、正体がバレたら、大スキャンダル必死の!
俺はそんなハダカの! 革靴と白ソックスだけ残して他はナシという真っ白な裸体をさらす、高貴なる16歳であるところの瑛くんであるところの、そのハダカの瑛の、人に見られて過敏に仕上がってるハダカの、そのハダカの背中から、グワバァとばかりに、柔らかひんやりすべすべで、風呂上がりのまっさらないい匂いのハダカに襲いかかり、こう、立ちんぼで、こう、もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみも――
俺、鼻血ブーーーーーーーッ!!!!!!!!!
涙目でポケットからハンカチを取り出し、拭いてくれる瑛くんだった。何枚持っとんのじゃ。
「バカ、バカバカバカバカ……」
「約束したんだからな! 約束したんだからな!」
「わかってる、わかってるよう!」ただし――
ここだけは瑛、キッとした顔になったのだった。
「“毛”は、教えるのは、一本だけだからね」
つまり、この先、毛の数だけ、“プレー”をして下さるのかぁあああああ!
「バカ、バカバカバカバカ……」
ああ、終わらない……。