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煙丸 中吉の一日  作者: やおたかき
30/33

君は煙丸

 やがて――


 クックック、という堪え忍ぶ笑い声がし、ついには、負けたとばかりに大っぴらになった。

「――いや、なかよし! さすがだ」

 涙をにじませている。そして――

 さすがだ、の説明はなく。

 瑛は、すべての理屈を、いきなり跳躍してみせたのだった。

「なかよし、君は、JLFではない!」

 今度はこちらが「……」

「何故なら、君は、“煙丸”だからだ」

「……」

 瑛の弁舌が始まった。

「JLF構成員とはな、なかよし。JLFじたいの余りのバカらしさ、愚かさ、病的なまでのしつこさに、心が負けてしまった者たちのことを、そう言うんだ。気の毒にも、暗黒面に堕ちてしまった者たちのことなのだ」

「……」

「それまでボリューム豊かな心の持ち主だった善良なる人間が、彼奴(きゃつ)らに触れた結果、その愚かさに精神を蝕まれ、板のようにやせ細り、ちょっと叩かれただけでカンカン音をたてるようになる。逆に彼奴らがなくては心の板が、静まらぬ状態にまでなってしまった病人なのだ」

「……」

「仮に世の中が、病人だらけになってしまったら、いったいこの国の文化はどうなってしまうと思う? それが、JLFの手口だ。乗ってはいけない」

「……」

「なかよし、君は、違う。君には、夢がある。夢があるゆえをもって、違うと言い切れる」

「……」

「極論すれば、夢がある者は、強いんだ。他を顧みることをしない。自分がやっていることが一番楽しく、自分が作っているものが、一番面白いからだ。

 彼らが一つアイデアを思いついたら、さぁ大変だ!

 そのアイデアを形にするために、全てを犠牲にする。夜更かしし、早起きし、ご飯を削り、全ての時間を投入する。

 そうして拵えたら、次には、せっかくのソレを、世間にお披露目したくなって仕方なくなる。規模の大小は問わずして、ね。

 いいかい、そんな彼らが、人間社会に、世の中にただ一つ望むことは――」

 瑛はこちらに皮肉の笑みを向けた。

「――社会の安定、平和なのさ。少なくとも、自分の夢を実現させる期間だけでも、平和であってくれと望む。平和とは、なんて、エゴイスティックなものであることか、ハハハ……」

「……」

「ゆえに、君は、“煙丸”なのだよ」

 俺は、わざと、顔を外に向けた。

「……俺の“夢”って、なんだっけ」

 とたん。瑛も顔を伏せた。お互いに、顔色は隠されて。

 か細く。

「……それは、大きな“夢”さ」

 とだけ、声が聞こえた。

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