裸の王様
一説によると、大昔の王様とか殿様とかいうやつらは、自分の裸身を恥ずかしいと思うことがなかったのだそうな。なぜなら、その身は国体を維持するためのいわば部品にすぎないから。そのように教育されたから。部品なら感情を持つ必要がないし、持ってては逆に邪魔なだけだった。たとえばこんな逸話がある。「お菓子を食べればいいじゃん」発言で有名なマリー・アントワネット(1755-1793)は、たった14歳でオーストリアからフランスに政略結婚したとき、国境でそれまで身に着けていた祖国のものをすべて脱ぎ、一度全裸になって、改めてフランスの衣装に着替えることを要求された。で、どうなったかというと、マリーは平然と裸になり、儀式をこなし、無事通過。目論見どおりフランス王妃になったというわけだ。
これもし、彼女が恥ずかしがったら。政略は、失敗に終わってた、ということになるんだよな。
ではそんな人間が、庶民を相手するとなったら、どうなるだろう。伝聞によると、当時の高貴なる方々にとっては、庶民なんか犬猫と同じだったんだそうな。人扱いしなかった。だから、庶民に裸をさらしても、ペットに見られているのと同じ感覚。羞恥心なんか、なーんとも感じなかったんだそうな。
三島一族は王様だ、ということをいいたいんじゃなくて、そういう教育を受けたからこその瑛くんなのだよ。当然、将来においては、庶民が想像できない重い責務が背負わされる。それを踏まえた上で、瑛は現実的に、俺らを犬猫と同じには扱っていない事実を認めてほしいのだ。ちゃんと人間として、対等に付き合おうとしている。つまりは瑛は、誰にも非難されるいわれのない、三島ジュニアとして立派な人間じゃないかと思うのですが、どうでございましょうか。
以上、フォローでした。ふぅ……。
大事なことなので二度いわせてもらう。歴史的逸話として、高貴なる方々は、人前で平気で裸になる。
神ならぬ身の知る由もないことが、今日このあと、俺を待ち構えていた、とだけいっておく。