第4話 関西では、ぼんさんが屁をこいた
椅子の両サイドに居た男達に両手を押さえつけられるユーキ。
だが慌てずに、現在の状況を冷静に分析する。
(見た所、魔装具を持ってる奴は居ないみたいだ。それは良いとしても、この人数を相手に戦えるのか? 実際この体の身体能力はどのくらいだ? もし普通の女の子と変わらないなら、とても勝ち目はないぞ⁉︎ いや、サイクロプスの一撃を喰らっても平気だったんだ、力だってめちゃくちゃ強くなってるかもしれないじゃないか……)
手を振りほどいた後の行動を考えるユーキ。
(まずは魔装具を発動させて……)
頭の中でシミュレーションする。
(よし、試してみるか)
すうっと息を吸い込み、両手に力を入れる。
「ふんっ‼︎ うん! んーーーーーーっ‼︎」
顔を真っ赤にして両足をバタバタさせるがーービクともしない。
「ん? ハハ、どうしたお嬢ちゃん⁉︎ 頑張れ頑張れ!」
ニヤニヤしながら言う男達。
「んーーーーーーーっ‼︎ フゥッ!」
フッと急に全身の力を抜き、うなだれるユーキ。
(……無理!)
「どうしたお嬢ちゃん⁉︎ もう諦めたのか? ハハハハ!」
あざ笑う男達。
現実を受け止めるユーキ。
(何だよ⁉︎ 全然強くないじゃん! 普通のか弱い女の子じゃん! どうすんだよこれ⁉︎ 色々シミュレーションしたのに全部パーじゃん! いや、余計な力使った分むしろさっきより体力落ちてるよ!)
また少し考えて。
(よし、作戦変更!)
「なあ、あんたら!」
「ん? 何だ? 大人しく渡す気になったか?」
「僕は昨日サイクロプスを倒したんだぞ! いいのか? こんな事して……大人しく解放した方が身の為だぞ? じゃないと……燃やしちゃうよ?」
ニヤリと笑うユーキ。
勿論ハッタリである。
それを聞いてビビって動きを止める男達。
だが先程の兄貴風の男が。
「心配すんな! 両手を押さえてる限り魔装具は発動しねえ‼︎」
(ぐっ、ばれた……)
「さあ、早く奪っちまえ‼︎」
ユーキの魔装具に手を伸ばす男。
「ぐっ! やめろ!」
ピシャ‼︎‼︎
男が魔装具に触れた瞬間、男の体にイカズチが走った。
「ぎゃあ‼︎」
「な、何だ⁉︎ 何が起きた⁉︎」
男達が驚いている。
「ええええええ‼︎」
ユーキも驚いている。
「おい、どうした⁉︎ しっかりしろ‼︎」
ユーキの手を掴んでいた力が緩んだその隙を逃さず、床を思い切り踏み込んで、椅子ごと後ろに倒れ込み、クルリと後方回転して着地した。
すかさず魔装具を具現化して魔法を放つユーキ。
「ウインドウォール‼︎」
昨日パティが使った風魔法で、自分の周りに空気の壁を作った。
「くそ! このガキ‼︎」
ユーキに向かって来るが、風の壁に阻まれて近づけない。
「くそ! 何だこの風‼︎」
「ああ、ムリムリ! この壁はサイクロプスさえ通れなかったんだから」
全員ぶっ飛ばそうかとも思ったが、予備のカートリッジを持っていない事を思い出し。
(戦ってもいいけど、もし途中で魔力切れでぶったおれたら、今度こそアウトだしなー……)
ロッドを男達の方に向け。
「今日の所はお腹が空いたから見逃してやる‼︎ だから追いかけてくるなよ‼︎」
「くそ、待てこらガキー‼︎」
「やだよー!」
振り返りドアのロックを外し、外に出ようとした時、フッとウインドウォールが消滅する。
「え?」
後ろを振り返り、ヤバイ状況に冷や汗がユーキの頬を伝う。
「へへ、どうする? お嬢ちゃん」
ジリジリと迫ってくる男達。
「あ、あははははは」
笑って誤魔化すユーキ。
ユーキがサッとロッドを構えるとビクッとなり動きを止める男達。
ゆっくり後ずさりしながら出口に向かうユーキ。
ユーキの動きに合わせてジリジリ迫ってくる男達。
またロッドを構えると動きが止まり、後ずさりすると迫ってくる。
そのやり取りを何度か繰り返し、ようやくドアから体が出た所で。
「ダルマさんがころんだー‼︎」
捨てゼリフならぬ、捨てツッコミを叫びながらダッシュで逃げるユーキ。
「待てガキー‼︎」
一斉に追いかける男達。
逃げ続けるユーキ。
(何でだ? 昨日パティが使ってた時はもっと長い時間発動してたのに……レベルの差? それとも魔力の差か? いや、今はとにかくパティと合流しないと……)
辺りを見回しながら。
「まいったなー、どこ走ってるのか全然分かんないぞー⁉︎ 噴水って言ってたよなー⁉︎」
「おい! 居たぞー‼︎」
数名の男達に見つかってしまう。
「ヤバッ‼︎」
路地に入って行くユーキ。
「ん? 何だ?」
その様子を見つめていた1人の男。
狭い路地を走っているユーキ。
(大声で助けを呼ぶか? いや、でもなー)
変なプライドが邪魔をする。
そうこうしてるうちに、行き止まりに追い詰められるユーキ。
「へへ、追い詰めたぜ‼︎」
(くそっ! こうなったら、一か八かでブチかますか?)
ユーキが戦う覚悟を決めた時。
「待ちたまえ‼︎」
男達の後方から声が響く。
「誰だ‼︎」
振り返る男達。
そして現れたのは金髪の、男でも見惚れてしまいそうな程のイケメンの若者だった。
(す、凄いイケメン……)
思わず見とれるユーキ。
だが目線を首から下に移すと、何故か金色の海パンらしき物を1枚履いているだけだった。
「うぐっ!」
「か弱い少女を大の男が寄ってたかって追い回すなど……恥を知れ‼︎」
「お前が恥を知れーーーー‼︎‼︎」
ようやく新キャラを出す事が出来ました。
面白く絡んで行けたらいいなーと思います。