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ひめてん〜姫と天使と悪魔と猫〜  作者: こーちゃ
第三章 愛と勇気の大冒険
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第21話 アイバーン! 色々本気出す

 ー アイバーンVSザウス ー


(どうする? 奴の剣は触れただけで凍らされる。なら離れた所から遠距離攻撃主体で行くか? だが奴だって遠距離攻撃で来るかもしれない……いや、それならとっくに仕掛けて来てるはず。もしかして、近距離攻撃の技しか持ってない? それともそう思わせといて、何か策が……)


「フッ」


 色々考えを巡らせていたザウスだったが、ふと開き直った様な表情になり。


「やめだやめだ‼︎ ゴチャゴチャ考えて戦うなんて、俺らしくねぇ!」


 そう言って剣を横に構え、魔力を高めてからゆっくりと手で剣をなぞって行く。


「触れたら凍るってんなら、凍らされないぐらいの火力を出せばいいだけの話だ‼︎」


 ザウスの剣より、猛烈な炎が噴き上がる。



「フッ、単純な奴だ……だが、私は嫌いではない。ではどちらの魔力が上か、勝負と行こうか‼︎」


 アイバーンも剣を縦に持ち、魔力を高める。



「行くぜっ‼︎」

「来いっ‼︎」


 剣を振りかぶり、力任せに斬りつけるザウス。

 アイバーンが剣で受けるが、ザウスの剣は凍り付かない。


「ほら見ろ! やっぱり俺の思った通りじゃないか!」


 剣が凍り付かない事を確信したザウスが、更に猛攻を加える。

 何度も剣で受けるが、やはりザウスの剣が凍り付く事は無かった。


「剣を凍らせるのは無理か……ならば!」


 アイバーンが剣を地面に突き立てる。


「アイスフィールド‼︎」


 アイバーンの剣を中心に、地面が凍りついて行く。


「させるかよー‼︎」


 ザウスも剣を地面に突き立てると、目前まで迫って来た氷が溶けて行く。

 だが一瞬ザウスの目線が下を向いた隙に距離を詰め、剣を振り下ろすアイバーン。


「ぐっ!」


 剣を振り上げるのが間に合わず盾で受けた為にまた左腕が凍りつくが、構わず反撃に転じるザウス。


「フレイムレディエイション‼︎」


 ザウスの剣から猛烈な炎が噴き出し、アイバーンの周りを囲って行く。



「むう……さすがに熱苦しいな」


 一瞬怯んだアイバーンを見逃さず、大技を仕掛けるザウス。


「ボルケーノ‼︎」


 巨大な火柱がザウスから立ち登り、真上から炎の塊がアイバーンに襲いかかる。


「くっ! アイスウォール‼︎」


 氷の壁が炎の塊を防ぐが、更にザウスが追い撃ちをかけて来る。


「エクスプロージョン‼︎」


 炎が球体状に集束してから大爆発を起こし、アイバーンを吹き飛ばす。


「ぐうっ‼︎」


 だが倒れる事なく耐えきるアイバーン。


「これを耐えるのかよ⁉︎ 何故だ⁉︎ 同じレベル6で魔装具ランクだってほとんど変わらないのに、何故そこまで耐えられる⁉︎」


「貴様と私では、この一戦にかける想いが違うのだよ」

「想い……だと?」


「魔力の強さは想いの強さに比例する……子供でも知っている事だ」

「そんな事は当然俺だって知っている! つまりあんたがユーキちゃんを助けたい気持ちがそれだけ強いってことか⁉︎」


「当然それもある……だが今回私はユーキ君と2人きりでイベントに参加する事を、密かに楽しみにしていたのだ! しかも24時間も共に居られるなら、多少なりとも距離を縮められるだろうと思っていた物を!」


「いや、そんな事考えてたのかよ」


「ところがどうだ! いざ始まってみたらいきなり離れ離れでスタートするわ、邪魔者は大勢居るわ、唯一2人きりだったのは洞窟を探検した時ぐらいだし、まああの時は暗がりでユーキ君にしがみつかれて、至福の時ではあったが……その後すぐに貴様に邪魔をされた‼︎」


「ああ、あの時か? そりゃ悪かったな! てか澄ました顔して、あんたもユーキちゃんが気になってた訳か」



「普段はパティ君達の手前、抑えてはいるが……私だって……私だって……ユーキ君が好きだああああ‼︎」


「俺に言うなあああ‼︎」



 その様子をモニターで見ているユーキ。


(2人で何叫んでんだ?)


 音声が無いので、何を言ってるのか分からないユーキ。



「イベントの前夜、色々! 色々考えていたんだ! 弁当を食べる時にはアーンってして貰おうとか、寝る前に『水浴びするから覗いちゃダメだよー』とか言われてドキドキしたりとか、夜野宿する時にはユーキ君が2人の間に線を引いて『この線から入って来たらダメだからね』とか言われて、勿論手は出さないが一晩中ユーキ君の寝顔を眺めて幸せを感じたりとか……」


「凄い妄想力だな? さすがは黄金の変態と言われるだけの事はあるぜ」



「それを……それを……全て貴様達が台無しにした‼︎ しかもユーキ君を力尽くで誘拐して、あまつさえ強引に結婚させようとするなど……断じて許せん‼︎ その罪、万死に値する!」


「つまり、ようやくあんたの本気が見れるって事か?」


「貴様は以前、私が剣を抜かない事を疑問に思っていたな……ならば教えてやろう」


 剣を横に持ち鞘に手をかけ、ゆっくりと剣を抜いて行くアイバーン。


「私はまだまだ未熟でね……剣を抜いた状態で戦うと、周りにも影響を与えてしまうんだ……敵味方関係無くね。だから味方が近くに居る時は、剣を抜いて戦う事が出来ないのだよ」


「へえ、そいつは楽しみだ」



 完全に鞘から剣を抜いたアイバーン。


「さあ、その力見せてみろよ!」

「いや……悪いがもう既に終わっている」

「はあ? 何言って……」


 ザウスがアイバーンに近付こうとするが、思うように動けない事に気付く。


「な、何だ……体が重、い……?」


 ふと自分の剣を見ると、さっきまで猛烈な勢いで噴き出していた炎が完全に消えていた。


「何⁉︎ 炎が消えてる? 奴に何かされたのか? いや、あいつはただ剣を抜いただけだぞ?」


「言った筈だ! 剣を抜くと周りに影響を与えると……そして私が剣を抜いた以上、もはや貴様に勝ち目は無い」


「ふざけんな‼︎ ただ剣を抜いただけで、ここまで圧倒されてたまるかよ!」



 剣先を下にして地面に突き立てるアイバーン。

 そして静かに呟く。


「アブソリュート、ゼロ……」


 アイバーンを中心に氷の輪が広がって行く。それは、アイバーン以外のありとあらゆる物を凍りつかせて行く。

 その輪がザウスに触れると、ザウスの足下から徐々に体全体を凍りつかせて行く。



「ぐっ! ぐああああ‼︎ ……ま、まさかこれ程とはな……」


 腕が動く内に、懐からカギを取り出しアイバーンに投げるザウス。


「あんたの勝ちだ……あんたはこの後、他の仲間に加勢に行くんだろ? 俺でこのザマじゃ、他の四天王ではとてもじゃないが、あんたにはかなわない……こんな事頼める義理じゃないが……せめて、あいつらの命だけは助けてやってくれないか? 頼む‼︎」


「この状況で自分の事よりも、仲間の事を案ずるか……了解した……命までは奪わないと約束しよう」


「そ、そうか! ありがとう! 全く勝負にならなかったが、最強の団長さんと戦えて誇りに思う……じゃあな……」



 凍りつくザウスの姿を見て、哀しそうなユーキ。


「アイ君……」



 完全に凍りつくザウス。



「勝負にならなかった、か……そんな事は無いさ……人質など取らず、正々堂々勝負を挑んで来ていたなら、どうなっていたか分からない……安らかに眠れ……と、言いたい所だがな!」


 アイバーンが剣を鞘に収めると、周りの氷が砕けてザウスが倒れ込む。


「うぐっ! ……な⁉︎ 生きてる? な、何故だ? 何故俺を助けた⁉︎」


「私個人の戦いだったなら、遠慮なく氷漬けにしていただろう……だが今回はユーキ君の為の戦いだ。彼女はたとえ敵であっても、命を奪う事を良しとしない……ユーキ君に感謝するんだな」




(あいつ生きてる……良かった……)

「ありがとね、アイ君」


 モニター越しに礼を言うユーキ。




「そうか……優しい娘なんだな、ユーキちゃんは……フッ、俺も惚れてしまいそうだぜ」


「何⁉︎ そ、それはダメだ‼︎ これ以上ライバルが増えるのは困る‼︎」


「別に惚れるのは勝手だろ?」

「そ、それはそうなのだが……いや、やはりダメだ!」


「なら他の奴に取られる前に、あんたが告っちまえよ!」


「告っ‼︎ ……で、出来るかあああ‼︎」


「出来ねえのか? じゃあやっぱり俺が告るかな?」


「それもダメだあああ‼︎」




(ん? 何かあの2人、妙に仲良くなってないか?)





 ー アイバーンVSザウス ー


 アイバーンの勝利。




アイバーンがついに剣を抜きました。

そうなのです、僕の説明不足で分かりにくかったと思いますが、今までアイバーンはずっと剣を鞘に収めたまま戦ってたのです。

あと、色々本心もぶっちゃけました。

そりゃ、アイバーンだって20歳の若者なのです。

側に超絶美少女のユーキが居て、何も思わない筈は無いのです。

これからも、そんなシャイなアイ君を可愛がってあげてほしいのです。

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