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ひめてん〜姫と天使と悪魔と猫〜  作者: こーちゃ
第ニ章 全てはゲーム機の為に
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第12話 パティさんは怒らせると怖いんです

「この試合、強力な魔法の撃ち合いから始まり、ハイスピードの空中戦になり、そして今、まさかのグラウンドでの攻防が展開されています!」



「ユーキ⁉︎ あなたまさか、マジックロブを使って……」

「悪く思わないでよパティ……僕はこの試合、どんな手を使ってでも勝たなきゃいけないんだ」

「ユーキ、何でそこまで……」


「さあ、ギブアップするんだ! パティ……じゃないとこのまま絞め落としちゃうよ?」


 パティを締めている両足に力を込めるユーキ。


(あ……ユーキの太ももの感触が頬に……幸せ……何て言ってる場合じゃない!)


 一瞬パティの表情が緩むが、すぐにキッと引き締まった顔に戻る。


(ああでも、このままユーキの足に挟まれながら落ちて行くのも悪くないかも……じゃなくて! 魔道士ともあろう者が、絞め技で落とされたなんて、恥ずかしくて言えないわ)



「パティ選手の表情が緩んだり引き締まったりを繰り返しています! これは落ちる寸前かー?」



「いや、パティ君のあの表情は、何か良からぬ妄想をしている時の顔だ」

「パティさん、こんなピンチの時に何を……」



「俺もユーキちゃんに挟まれてぇー!」

「羨ましいぞ! パティー!」

「パティ! 代わってくれー!」


「私も挟まれてみたい……」


 ボソッと言うアイバーン。


「何か言いましたか? アイバーン様」


 冷ややかな顔で言うメルク。


「い、いや……気のせいだ、メルク」



「ギブアップしろっ! パティ!」

「あ、あたしだって簡単には負けられないのよ!」

「むう……ならば!」

「ホーミングアローズ!」


 ポコポコポコ!


「痛っ、痛っ、痛っ!」


 ユーキの出したアローズがパティの頭に直撃するが、刺さると言うよりは、軽く叩かれた程度の威力しか無いようだ。



「ユーキ選手の出した光の矢がパティ選手の頭に当たりましたが、それほど威力はなさそうです!」



「どうだ! 参ったか? パティ!」

「こ、この程度……どうって事ないわ」



「このー! アローズ!」


 ポコポコポコ!


「痛たた!」



「アローズ!」


 ポコポコポコ!


「痛っ! い、痛い!」



「これでもかー!」


 ポコポコポコ!


「痛っ! やめっ! 痛い!」


「ハアッ! ハアッ! どうだ? パティ!」



「く……このー……」


 パティから黒いオーラが溢れ出す。


「い、い、か、げ、ん、にー」


 体制を起こし、技を決められたまま、高々とユーキを持ち上げるパティ。


「ゲッ‼︎ 嘘ー‼︎」

「しろおおおおお‼︎」


 そのままユーキを地面に叩きつける。


「ガハッ‼︎」


 衝撃により、技を解いてしまうユーキ。



「な、何とパティ選手! 技ではなく、力で強引に脱出したー‼︎」



「くっ、しまった……」


 体制を起こそうとしたユーキだったが、いつの間にか全身をエアバインドに絡め取られていた。


「え? いつの間に? くそっ、動けない!」


「ユーキ……」


 ビクッとなるユーキ。

 恐る恐るパティを見ると、顔は笑顔だが、明らかに怒っているのが分かった。


「死んだフリで人を心配させてからのだまし討ち……邪法であるマジックロブの人に対しての使用……そして、あたしが苦労して考え出したアローズを使っての、人を小馬鹿にした行為……」


「あ、いや……それは……」

「命懸けの戦いの中でならそれもアリでしょう……でもルールのある試合でこんな事されると……お姉さん、ちょおっと頭に来ちゃった……」

「ヒイッ! こ、怖い……」


「マーキュリー‼︎」


 杖を空に掲げて叫ぶと、上空に巨大な水の塊が出現した。



「ああーっとー‼︎ 上空に巨大な水の塊が現れたー‼︎ どうやらユーキ選手は動きを封じられている模様! これはまともにくらったらひとたまりもないぞー‼︎」



「いいっ‼︎ ちょ、ちょっと待ってパティ‼︎ あんなのくらったら僕死んじゃうってー‼︎」

「フフ……そう言えばユーキって、サイクロプスの一撃をくらっても平気だったじゃない……なら、あれぐらいじゃ死なないわよね?」

「ええええ‼︎」


「素直で良い娘だと思ってたのに……」

「あたしはあなたを……」


 杖を振り上げるパティ。


「そんな娘に育てた覚えは……ありませーん‼︎」


 杖を振り下ろすと、マーキュリーがユーキ目掛けて落ちて来る。


「いやあああああああ‼︎」


 絶叫するユーキに直撃するマーキュリー。



「巨大な水の塊がユーキ選手を直撃したー‼︎」



「育てられた覚えも……ない……ガクッ」


 力尽きるユーキ。



「ユーキ選手ダウン‼︎ 今レフェリーがカウントを取りに行きます……おおっと? レフェリーが腕を交差させます! どうやらユーキ選手、気絶しているようだー‼︎」

「試合終了ー‼︎ ユーキ選手失神により、パティ選手の勝利でーす‼︎」





「水でもかぶって反省しなさい!」




ようやくパティ戦、決着が付きました。

とは言え、このまま負けっぱなしではユーキも悔しいので、何とかリベンジしたいと思います。

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