第五回目《気づく者と逆襲の【ホーライ】》
お待たせしました。物語りも終盤です。楽しんで頂けたら幸いです。
「今日も風が気持ちいい」
私(月宮由紀)は、屋上で寝そべっていた。そういえば最近、何か足りないと思った事が、増えてきたり、私の体力では到底、手に入れられないデラックスサンドセットの味を知っていたりと、不可思議な事が増えた。
「疲れてる? 私?」
すると屋上の扉が開く。そこに幸香がやってくる。
「あれ? ユキちゃん。元気ないね? そんなときは皆のアイドル、幸香ちゃんでも見て元気出すといいよ!」
「幸香はアイドル舐めすぎ。元気なんて出る訳ない」
「えぇぇぇぇ! ユキちゃんひどいぃぃぃぃ!」
『当たり前だ。可愛ければ良いってもんじゃない』
突然風が吹き、そんな声がした。
「そんなぁぁぁぁ! ユキちゃん、良いしゅぎだよぉぉぉぉぉ」
すると幸香は、そんな空耳みたいな声に反応した。
「幸香。今、なんて聞こえた?」
「ふぇ? 急にどうしたの?」
「いいから」
「『当たり前だ。可愛ければ良いってもんじゃない』って」
幸香は、私にさも当たり前の用に言う。
「それ、私じゃない」
「え?」
「よく考えて、そんな言葉の使い方、私しない」
『そりゃあ、そうだ。俺とユキは違う』
「「!!」」
また聞こえた。どういう事? 何だか懐かしいこの声の主は誰なの?
「あなたは誰? 誰なの?」
私は大声を上げて聞く。
「ちょっと落ち着いて、ユキちゃん」
「落ち着いて、られない! 私、何か、大切な人、忘れてる!」
「ユキちゃん。落ち着いて!」
『そうだぞ。落ち着け。落ち着いて牛乳飲め。ユキ、お前はカルシウム足りてないから、短気だし、胸も成長しないんだぞ』
また聞こえる。懐かしい声、でも馬鹿にされて無性に腹が立つ。
「あんたは少し黙ってなさい! って私は誰に……怒鳴ってるの?」
「分からない。思い出せない。あなたは誰? 誰なの?」
二人が混乱していると、周囲の時が止まる。そして校舎側の影から、私はまだ知らないが、○○が取引をしたという【使い神】が現れた。
「すいません。遅くなりました。あなた達の大切な人を助けに行きましょう」
そう【使い神】は深々と二人に頭を下げた。
■□■
天国【クロノスの管轄】三日前
「クロノス様の馬鹿。なんで、あんたの目論見を、暴いたのに、その話に乗ったのよ!」
「知りませんよ。僕に言われても」
この時、私、【使い神】は勤めを果たしたのに、クロノスの代行であり、上司をしている神、ホーライ様から、説教を受けていた。
ホーライ様は、クロノスの上司なのにもかかわらず、何故か遜り(へりくだり)の姿勢を取り、慕っている。何故かと聞くと、彼女は決まって、年功序列だからと、訳の分からない事を言って、誤魔化していた。ひょっとすると、クロノス様が、原初の神の一人と言われているから、ホーライ様より、年上なのかもしれない。
「それより、この件、何だか不信な点が多くない?」
「私もそう思います」
「何かよからぬ事を、考えてる神がいそうね」
ホーライ様は書類を見て頬杖をつく。すると、何かに気付いたようだ。
「ちょっと、この子達」
「はい。何でしょう?」
「名前は?」
「確か、名前は月宮由紀、前野幸香だった筈です。二人ともクロノス様の親友だそうで」
私がそういうとホーライ様の目が輝く。そして次々に資料を漁り出した後、フフフフッと不敵な笑みを携え、資料と書類の海から、立ち上がる。
「分かった。この企画そのものが、胡散臭さマックスだって事がね!」
「ええっ!」
私はそのセリフを聞いて驚愕する。
「あんたさ、【神力】の持ってる子達の特性は知ってるわよね」
「ええ。まあ。確か強い【神力】を持っている者はより強い【神力】を持つ者に、吸い寄せられるって事ですよね?」
一般常識だ。そんな事は、この天国にいるものなら、誰でも知ってる。
「ええ。そう。ならそういえば。なんであの時、時島拓斗がクロノス様だって、分かったんだっけ?」
「それは、いつも大量の【神力】を垂れ流している、危険な保護対象者だったからです」
「おい。まだ分からないの?」
ホーライ様は呆れ顔で言う。
「え? 分かりません」
「はあ。まあいいわ。そしたら、そんな大量の【神力】を垂れ流す奴の周りはどうなる?」
その時、ようやく私は気づいた。
「ああ! クロノス様の周りにいる人間は、ひょっとして全て」
「そう全員【神力】持ちの人間。しかもさっきの二人は、特に強力な【神力】を持ってるわ」
ホーライ様は胸を張って言う。
「ですが、なにをするつもりでしょうか?」
「見て見なさい。この学園の地図」
「これは魔法陣ですか!」
「そう。しかもこの術式は、少しずつ、【神力】を人間から、吸い上げる術式よ」
「でも、そんな少しずつとはいえ、学校全員の【神力】をどこに貯めるんですか?」
「こいつよ」
私の疑問に答えるように、ホーライ様は、私に一人の男子生徒の書類を渡す。
「この生徒が器よ」
「ええ! でも一界の人間がそんな器になれる訳……」
「一界の人間じゃないわよ。そいつは」
「え?」
「そいつはかつて、数々の悪事と蛮行を働いた、悪戯好きの神」
ホーライ様は、書類を纏めながら本棚にある、神の名前が書かれた、一冊の本を私に向かって投げた。
「ロキよ」
それに驚き、私は生徒の書類を落としてしまう。そこに写っていた生徒は竹本辰一。
拓斗の腐れ縁にして親友だった男子生徒だった。




