表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夏の殺せ

夏の朝が永遠に続いてしまったら、いいね。そしたら模試の結果は帰ってこない。

たくさんの女子高生が救われて、18歳のままでいられるようになる。

「好き」が反響する森の針葉樹を切り倒して、風通しの良いゴルフ場をつくることができる。

彼女たちはもう間違えることなく寄り道をすることなく、恋にうつつを抜かしていられる。

例えばの話。


たくさんの殺せが、教室の床にこびりついているから、私達は上履きを履く。

ナイフもペンもなくたって、人は簡単に操れます。愛を見せてあげればいい。

きみの夏休みが続く限り、幸せにしてあげる。そういう殺しが流行っているんだ。

友達たちが、おおきなリュックサックを背負って、登校してくる。

中につまっている安全ピンがジャラジャラと揺れて、日焼け止めクリームのにおいがして、レースのカーテンを透かす日射がももいろの肌を、あれ、あの子は違うなって。

君の立てるビニール袋のがしゃって音が嫌いで、スリッパのぺたぺたの音が嫌いで、ふと髪を撫でる癖が嫌いで、笑うと目が細まるところが嫌いで、読んでいる詩集が同じだから嫌いで、いつも私のうしろについているところが嫌いで、だから殺せが湧いたんだ。


夏の朝は永遠ではないけれど、私達には一瞬だけ永遠だった。

君が殺したという男の子の話も、私が殺すであろう君の話も、朝のテレビで流されるようなものなんじゃないってことはわかりきっている。

もっと鋭敏な殺せが、森から聞こえてくる。


それは例えばの話だった。もう忘れてしまった。

濡れた髪の毛ももう乾いてしまった。

寄り道をして帰ることになる。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ