1話-弟
今日も俺は人を相手に仕事をする。
人って言ったってオフィスとかで仕事してるわけじゃない。本当に人。
そう…抱かれているんだ。
「お兄さん、ご贔屓に。ありがとね」
これはビジネスだ。買ってもらう代わりに金に見あったことをする。
「今日はそうだな…十万でどうだ?」
「OK、いいよ。ま、俺はいくらでも断んないけど。何がいい?クスリとか以外ならいいよ」
クスリは十万に見合わない。10億とかなら考えたけど。
俺は願い通りに話を聞いた後に抱かれた。
「ふう…そうだな…そろそろくるかな。凛兄。」
「んー?ずっといるけど?」
本名柏木凛。一応俺の兄。
凛兄は5年前に家を出て行ったきりどこにいるのか何をしているのかもわからなかった。
俺がこのビジネスを始めて1年が経った頃凛兄に出会った。
それから二人でお金を貯めてやっている。まあ、今更家に戻る気もないし。
「で、いくら稼いだ?」
「15万。今日は少なかったんだよね。」
凛兄の客は上客で、毎回必ず30万は超えて持ってくる。
だから二人で暮らしているとお金を余してしまう。
「いや十分だ。帰ろう」
こういうビジネスはしてるけど、お金はあるから普通のマンションに住んでいる。
「なあ蘭。大変だったら辞めろよ?無理するな。」
「え?なんで?俺こういう仕事の方があってたみたいだよ?」
凛兄は驚きながらも微笑んで言った。
そうか、と。