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異世界のデウス・エクス・マキナ  作者: 光喜
第1章 流浪編
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第17話 祝祭の終わり1

 ユーフの町は熱狂に包まれていた。

 夜中だというのに広場には人がごった返していた。対アウディベア戦で不完全燃焼だった魔法使い達が、これでもかと照明を打ち上げているので、昼間のような明るさだった。普段なら安眠妨害だとキレてるだろうイカついオッチャンも、今日ばかりは魔法使いの肩を叩いてよくやったと褒めている。止めてやれよ、魔法使いムセてるから。

 老人がいた。

 子供もいた。

 人々に笑顔があった。


 飲食店の出店が出ていた。

 香ばしい匂いが漂う。アウディベアの肉だろう。臭みがあるので香辛料が必須だ。

 普段は競い合う店舗同士で、香辛料のやり取りをしていた。

 客はユーフの住人全て。

 誰もが広場を目指してくるので、手を取り合わないと食べ物が行き渡らないのだ。

 

 広場の中心には一体の死体があった。冒険者ギルドの職員が見張っている。素材を剥ごうという不埒ものがいるからだ。不死身っぷりのインパクトが強かったせいだろう。生き返って来るのを懸念しているのかな、と思ったのは内緒だ。


 アウディベアの王である。

 

 王の死体を目の当たりにした人が歓声を上げる。すると酔っ払いが呼応する。子供も面白がって騒ぐ。波が行き過ぎると新しい人が王を見に来る。その繰り返し。

 歓喜の声はやむ事を知らない。

 

 そう、これは祝宴だった。

 王の討伐を祝した祝宴。

 最初は冒険者ギルドの連中だけで祝っていたらしい。それがあれよあれよと波及して、気がつけば町を巻き込んでのお祭り騒ぎに発展していたということだ。

 

 王の傍には愚連隊もいた。例の四人組もいた。

 くくく、俺が仕留めたんだぜ、と普段なら言いにいっているところだ。アイツらは俺の事をナメてるからな。見返してやるにはいいチャンスだ。

 ……ま、今度でいいだろ。


 町民は不安だったのだろう。町から逃げた人も多いと聞く。チネルの町は壊滅してるワケで、ユーフもそうなってしまうと、怯えてしまうのは当然のことだ。

 うん、当然だよな。

 あの時の俺はそんな事にも思い至りはしなかったんだが。


 だって、ブラスがいる。


 アウディベアが大群で来ようと、ブラスがいれば殲滅出来るのだ。実際、やったしな。

 町の安全は保証されていた。

 え、夜中台風来るって? へー、戸締りしっかりしないとね。そんな感覚。寝て起きた頃には全て終わってるから、心配する必要なんて何もないねーみたいな。

 

「心配はいらない。俺とブラスがいる」


 そうナナに告げた時、彼女は苦笑してたっけ。

 子供が精一杯の慰めをしている……そんな風に受け取られたんだろう。ま、番犬としてのブラスしか知らないんじゃ、そう思うのも無理ない。

 なのに、俺はナナなら理解してくれると思い込んでいた。

 

 町には人が住んでいる。戦う力を持たない人々だ。

 分かっているつもりだった。

 でも、分かっていなかった。

 ブラスはこのことを言いたかったんだろうな。


 ――守るべきモノが間違っている時、自分の道も違えているモンだ。


 リスティを助けると決めたコトを間違いだったと言うつもりは無い。

 だが、あまりにも町民の存在を軽んじていた。

 ま、実績もない十歳児に何が出来たのか、ってのはあるけども。

 結果だけ見ればユーフの住民は誰一人として傷ついていない。しかし、身体が無事だったからといって、心まで無事だとは限らないのだ。この騒ぎを見ればどれ程抑圧されていたかが分かる。

 

 はー。

 今なら分る。

 全部そう。

 俺、どんだけ余裕なかったのか。

 もーね、身悶えしそう。


 だから、誇らしさを覚えつつも……

 正直、キミらのコト、忘れてたっつーか……

 そんな思いがあって……

 歓喜の輪に混じるのは気が引けた。


 ブラスが救助に来た後、十名ほどの冒険者が遅れてやって来た。

 その中にはステンとトルウェンの姿もあった。彼らから再会を祝す言葉はなかった。おっとり刀で駆けつけたら、俺とリスティが抱き合っているのだから。

 リスティ寝てるし。

 トルウェンは苦ぁぁい顔になっていた。

 それよりも諦めたようにため息をつくステンが印象的だった。

 何を諦めたのか。

 聞けない。

 想像はつくが。

 ブラスに抱えられてすぐ俺は寝た。


 起きたらマリア薬剤店だった。ブラスとリスティの姿はなかった。

 冒険者ギルドにいったと、一人残っていてくれたナナが教えてくれた。

 ひでぇ話だ。王倒したの俺だよ。主賓差し置いて何してんの。


「そーねー。クロス君の言い分ももっとも。でも、一応、子を持つ親の立場から言わせてもらえれば、寝かしておいてあげようって思ったんじゃないかしら」

「ナナさん、ダメですよ。信じてないこと口にしちゃ」

「うっ。バレたか」

「バレますよ」

「ブラスさんだものね。あ、寝かしておいてくれっていわれたのは本当よ」

「僕がいると自由に酒飲めないから。でしょ?」

「どう考えたってね。不思議な親子よね、あなたたち」

「血の繋がりありませんからね」

「…………」


 俺はナナと連れ立って広場に出てきていた。

 ナナに誘われたのだ。本音を言えばアニマグラムを組んでいたかった。楽しみにしてたゲームが届いて、さあプレイするぞと気合入れたのに、「く~ろす君っ、お祭り行きましょっ」と友達が来てしまった気分というか。前世では居留守を使った。男だったからだ。

 ナナは女だ。しかも美人。折れましたね。

 ま、出てきて良かったよ。笑顔を見ていたらそう思う。


 何でも奢ってくれるという有り難い話だったが――食欲がなかった。

 肉体的な不調なら加護で治っているだろう。魔力切れの影響なんだろうな。


 墜火葬は暫く封印だな、こりゃ。リスクがデカすぎる。

 改良って言っても……気軽にデバッグも出来ないし。

 《AGO》なら青ポット飲み飲みぶっ放せば良かった。

 しかし、この世界では青ポットは高い。安くて一万エルはする。Cランク冒険者の一日の稼ぎが吹っ飛ぶ。毎回、二日酔いじみた魔力切れになるのも勘弁願いたいし。

 アニマグラムがリミッター無視ってのもな。下手をすると身体に悪影響が出る可能性だってある。う~~ん、墜火葬は奥の手として、新しく組んだ方が建設的かね。

 なんて考えていたら、不意打ちにのように、


「ユーフ。出て行くの?」


 ハッとしてナナを見る。

 それが答えとなったようだ。


「さびしくなるわ。うん、さびしくなる」


 ナナは人の流れをぼんやりと眺めていた。祭りは最高潮である。だというのに、もう祭りが終わってしまった。そんな目をしていた。


「驚いた? ふっふー。クロス君の鼻を開かせて気分がいいわ」

「…………」

「店も。あたしも、リスティも。キミが来て全てが変わった。キミは風ね。しがらみや迷いを吹き飛ばす大きな風。あ、つかみどころがないのも。風は一箇所にとどまらないわ。だから、気にやむ必要は無いの。な~んてね、キザだったかな」

「……キザですね。一体何歳を口説いてるんですか」

「口説き文句に聞こえた? あたしもまだまだやれるわね。リスティに怒られるか」

「なんでリスティが?」

「はぁ~~~~~~。ところどころ鈍感よね」

「鈍感ですか」


 そわそわした。

 だってこの流れだ。

 どう考えたってリスティは俺のことを――


「懸けてもいい。いい機会だしいっておくわ。キミはね、何よりもキミ自身の気持ちに鈍感なんだと思う。見てて危なっかしい。十歳だっけ。成長すれば変わるのかもしれない。でも、気に留めといて」


 ……まさかの説教でした。

 逸らなくて良かったよ。赤っ恥をかくところだった。妙な期待が残ってるんだろうな。なんでもかんでもソコに繋げちゃう。期待は五年後まで封印しとけっつーハナシだ。

 

 しかし、耳の痛い指摘である。

 実はコレ、前世でもよく言われた。頭で考え過ぎるから感情に鈍くなっている……らしい。そんなことはないと思うんだけどなー。クソ神にはイラっと来るしー。

 ナナが餞別として贈ってくれた言葉だ。

 軽んじるつもりはない。

 が、実感がないのでは直そうにも……


「店のことは心配しないで。加護持ちが増えたのよ」

「加護持ちが?」


 そんな簡単に増えるものか?

 疑問を俺の顔から察したのだろう。ナナは最初から説明してくれた。


 加護を得たのは五名。チネルの町民だという。

 俺が簡易キャンプに行くのと入替りでやってきた人達らしい。簡易キャンプをすっ飛ばしてユーフに到着したのだ。いかに逃げ惑っていたかと言うことが分かる。


 さて、冒険者ギルドにやって来た彼ら。

 まず回復薬を求めた。

 アウディベアに追い立てられ。

 慣れない森をさ迷い。

 全身が傷だらけだった。

 そこでナナが呼び出された。

 期待に応えるのは簡単だった。

 赤ポットを渡せばいい。

 しかし、ナナは一計を案じた。

 加護の取得を試させたのだ。

 

 ――ヘカテの慈愛。

 

 ナナの持つ加護の名だ。


 試そうと思った理由は二つあった。

 一つ。話を聞けば更にチネルの町民がやってくるかも知れないという。重傷者の為に赤ポットは取っておきたい。在庫の大半は簡易キャンプへ運ばれていた。


 二つ。今後の為だ。チネルは壊滅した。彼らは一からユーフでやり直すことになるだろう。加護持ちであれば職を探すのも大分楽になる。同じく裸一貫でユーフにやって来たナナらしい配慮と言えよう。


 幸い冒険者ギルドには薬草も毒草も在庫があった。

 町の一大事である。役に立ちそうなものを町民から提供してもらっていた。毒草を精製して罠を作れば、役に立つのは間違いなかった。しかし、冒険者が罠を使うのを拒否した為、集めるだけ集めて余っていたものだった。

 

 最初、ナナの提案に乗って来る町民はいなかった。

 毒草すって飲めば回復するとか言われてもな。安易に乗って来るようであれば、逆に窘めなければいけないレベルだ。

 事態を好転させたのはルナマリアだった。

 

「…………誰ですか?」

「あれっ。知らない? 向こうは凄くクロス君に感謝してたわよ。あたしと同じ加護持ちの。ほら、クロス君が毒草すって飲ませてやりましたよ、って言ってた」

「…………ああ」


 んん? 俺、そんな悪ぶったいい方で言ったっけ。

 加護には取得条件があるらしいと分かり、はしゃいでいた事しか覚えてない。

 ま、いいそうだけども。

 てか、またマリアか。

 多いのかな、マリアって。

 

 チネルの町民にはルナマリアの顔見知りがいた。

 ルナマリアが太鼓判を押している事もあり、試して見ようかという流れになった。

 準備をしっかりすれば危険は少ない。命に別状の無い毒草を使う。解毒作用のある薬草を用意しておく。

 容体が悪化するようなら赤ポットの提供を約束したのが決め手となった。

 

「最初の一人で成功したから、イケると思ったんだけど。加護を得られたのは十人に一人だったわ。ギルドの職員がいたから。その場で加護の更新してもらったの」

「十分じゃ? 珍しい加護なんだし」

「まー。そうなんだけどね」

「煮え切らないですね。一割の確率で取得できたなら御の字だと思いますけど」


 MMOでレアドロップと言えば取得確立は1%以下とか当たり前だ。

 一割ではレアと呼ぶのもおこがましい。


「確立かあ。クロス君は信仰心薄いわよね」

「薄いというか、ないというか」

「加護は祝福よ。神様からの。ホントは取得しようなんて考え自体恐れ多いのよ。キミと一緒にいると常識が崩れて行くわ。うまくいって良かったと思う反面、ヘカテ様に申し訳ない気持ちがあるの」

「ま、加護が大盤振る舞いされたら、取得出来なかった人が妬みますしね」

「…………あー、もう。キミ、ホント、時々、ものすごーくズレるわよね。ないわよ。加護を得られなかったのは自分が至らなかったから。普通はそう思うわよ」


 あ、なるほど、そう思うのか。

 いかんな。クソ神への憎しみが俺の目を曇らせている。

 いや、それだけでもないか。俺は神々をシステムの一部だと捉えているのだ。神々に人格があるのは知っているんだけどな。一定の法則が神々をも縛っているのは間違いないだろう。


「でも、クロス君の言ってた取得条件? そういうのホントにあるのかなって思ったわ」

「でしょ」

「名前にも共通点があったの」

「……………………名前?」


 ……イヤな予感がした。

 でも、多分、当たってるんだろうな。

 ルナマリアって名前聞いた時から薄々と。

 おっと、その前に確認しないとな。


「加護持ちの人を雇うつもりですか」

「……そっ、そのつもりだけど……マズかった?」

「店長の判断にケチをつけるつもりはありません。ただの確認です」


 ワケの分からない質問で話の腰を折られ、ナナは困惑していた。


「……共通点なんだけど。みんな名前にマリアって付くの。これって――」

「偶然です」


 食い気味にいった。


「で、でも。偶然で片付けるには――」

「ぐ・う・ぜ・んですっ」

「……わっ、分かったわ」


 偶然が重なった場合それは必然だ。

 俺の周囲では。

 クソ神の仕業だ。

 多分、


「マリア薬剤店の店員が全員マリアって面白いだろう?」


 とか、そんな理由で俺の運命を改竄しやがった。

 いいけどね。害は無いし。

 でも、イラっと来た。

 今晩の祈りは長くなりそうだ。


「人が増えてきたわねぇ」


 次から次へと王を見に人がやって来る。これだけの人がユーフにいたのかと驚く。

 大声を出さないと会話も出来なくなってきた。


 ナナが路地を指差す。

 俺は頷いて了承の意を示す。

 ナナに続こうと思ったら……人波に飲まれた。くそっ、酔っ払いめ。足元見て歩け。てめぇは今、ユーフの救世主を足蹴にしやがったんだぞ。

 

「……ん?」


 路地についた。

 ナナの姿が無い。

 ……奥か?

 いた。

 が、様子が……変だ。


 深々とお辞儀していたのである。

 それは在りし日のメイドを想起させる。


 アレかな、と思った。


「レン様、今までありがとうございます」


 やはり。そうか。


「レン? レントヒリシュですか」


 がばっ、とナナが身体を起こす。

 大きく見開かれた瞳には、色々な感情が混ざっていた。

 その名を知っているということは――そう思っているのだろう。

 でもね。思い出せ。

 

「ナナさんの秘密を知ってるんですよ。レントヒリシュぐらい知ってます」


 あっ、とナナが声を上げた。

 うっかり屋さんめ。設定忘れてたんだな。

 俺もすっかり忘れてたけどさ。


 動揺しているところ悪いが、畳みかけさせてもらおう。


「でも、なんで? 俺はクロスですよ、ナナさん。名前間違えないで下さい。一緒に暮らしてたのに名前覚えて貰ってなかったとか泣いちゃいますよ」

「……………………違ったの」

「なにがですか」


 当てがハズれた。そんな顔をしていた。

 どこか傷ついた様子に――分からなくなる。

 ここにいるのはクロス。

 レントヒリシュではない。

 その前提に立って、どう行動すべきか――


「あ。そうだ。ごめんなさい。俺、行きますね」


 ナナが眉根を寄せた。

 疑念が再浮上。そんなトコか。

 だよな、露骨だったな。

 でも、俺もそろそろ……

 

「用事を思い出したんです。冒険者ギルドに行かないと。報酬の話があるんです。父さんに任せてたら、酒で払ってもらうとか言いかねないですから」

「…………そうね」

「なので早くいかないと」

「……待って」


 踵を返そうとした俺をナナが引きとめる。

 振り返ると、再びナナが頭を下げていた。


「ありがとう、クロス君」


 ナナは笑っていた。

 疑念が払拭されたワケではないだろう。

 もし俺が本当にレントヒリシュだったとしても。

 正体を明らかにされる事を望んではいない。

 そう、理解してくれただけ。

 出来たメイドさんだ。

 これで人を誘拐するクセがなけりゃあ、言うこともなかったんだけどな。


「今生の別れみたいに言わないでくださいよ。もう少しユーフに滞在するんですから」

 

 そう言って足早に路地から去る。

 

「……ふぅ」


 十分距離を取ったところで足を止めた。

 額の汗を拭う。


 危ないところだった。

 予期していなければバレていただろう。

 ペルソナ(笑)を磨いていた甲斐があった。

 最後のほうはペルソナも剥がれかけていたが……うん、そうだな。ココ、どこだ? 冒険者ギルド行くって言って、迷子になってるとかさあ……ま、ナナは見てないだろうし、いいか。


 ナナが俺の正体に気づいているのではないか。そう思った切っ掛けは月下で聞いたリスティの話である。俺は悪さをしないと、ナナが語ったというアレだ。

 一緒に仕事をしていれば、俺に害意が無いのは分かる。だから、ナナが警戒心を解いたのも納得できた。しかし、リスティまで説得するのは、少し行き過ぎな気がした。

 秘密を握った得体の知れない男。

 どう考えたって怪しい。

 だが、素性が明らかだったとしたら?

 そう、警戒する必要は無い。


 ナナがメイドをやっていた頃、俺の目と髪は銀髪だった。それが今では生粋の日本人の色へと変化している。顔立ちだって変わっているハズだ。

 だというのにナナは俺がレントヒリシュだと見抜いた。

 レントヒリシュはヴェスマリアの元でぬくぬく育っている。

 あのレントヒリシュは偽物かもしれない。

 その前提が無いとこの結論には辿りつかない。

 俺なら絶対に無理だな。

 女性というのはたまに過程をすっ飛ばして答えに辿り着く。


 もうレントヒリシュの名に未練は無い。

 クロス。

 それが俺の名だ。

 でも、レン様と呼びかけられて、取り乱しそうになった。

 なんでなんだろうな。

 俺自身よく分からない。

 コレが自分の気持ちに鈍感だってことなのか。

 いや、違うか。

 きっと、答えを出す必要は無いのだ。アレコレ考えて納得しようとする方が、鈍感だと言うことなのだろう。感情を理屈という箱に押し込めようと言うことなのだから。

 だから今はそう。

 叫びたいような。

 泣きだしたいような。

 この気持ちに浸っているだけでいい。


 顔を上げる。

 月が出ていた。

 滲んでいた。

 冒険者ギルドに行くのは少し遅れそうだ。

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