第十三話 「暗殺者リュコーの受難(中編)」
「この前は、大変申し訳ございませんでしたぁああ!」
深々と土下座し、頭を地面に押し付けながら金髪娘に近づく。
「いやいや、頭を上げてよ。大事にならなかったのならそれでいいから」
「そういうわけにはいきません。知らなかったとはいえ、とんでもないことをしでかすところでした」
「いいって、いいって。あなたの気持ちはわかっているわ」
何を言っている。俺の気持ちがわかるのか?
自慢の毒を防がれ、俺がどれだけショックを受けたと思っているのだ。
土下座をして頭を下げながらも、金髪娘の的外れな言動に苛立ちが募っていく。思わず飛び掛かりそうになるが、我慢だ。
こいつは、まだ俺を信用している。とりあえず、ターゲットの懐に入っているのだ。チャンスはまだある。短慮は最も愚かな行為の一つだ。
内心の怒りを押し殺し頭を上げる。そして、金髪娘に感謝しているといった感じの表情を見せた。
「ティレアさん、お許しいただきありがとうございます」
「うん。でも、ヤナさん、何度も言うけど、野草を使う時は本当に気をつけて。野草には、そういう毒を持っている危険なものがけっこうあるから。むやみに料理に入れちゃだめ」
金髪娘がまたくどくどと毒草知識を語り始めた。
うざい。それくらいわかっている。これでも毒使いリュコー様だ。お前以上に毒については熟知している。
「ティレアさんの言う通りですね。すみません、これからは肝に銘じます」
訳知り顔で頭にくるが、我慢だ。ここは再度頭を下げて、話を終わらせる。
いつまでもこいつと毒談義しても始まらない。こいつには毒が効かないとわかっただけでも御の字だ。毒使い一番の武器が封じられたのだ。やれる手は大幅に狭まったと言える。仮に二流の暗殺者ならしっぽを巻いて逃げ出しただろう。
だが、こういうイレギュラーが起きても一流は動じない。
俺は一流の暗殺者だ。
得意手が封じられても備えはしている。
ここは、とある洞窟……。
街から数キロ離れた森の奥深く、古い石切り場の跡地に隠れるように位置している。
入口周辺には幾重にも術式が張り巡らされ、巧妙な人払いの結界が一般人の足を自然と遠ざけている。経験豊富な冒険者でさえ、なぜか別の方向へ足を向けてしまうだろう。この結界を看破できるのは、相当な実力を持つ術者に限られる。
この洞窟は、俺にとって切り札の一つだ。自分より格上の敵が現れた時、ここに誘い込んで一気に形勢を逆転させる——そのための周到に準備された戦場である。
一流の暗殺者たるもの、こうした隠れ家を複数確保しているのが常識だ。
あれから俺は、毒草入り饅頭の詫びとして金髪娘をこの洞窟に呼び寄せた。金髪娘は料理人でもある。食材には、目がないだろう。ゆえに、希少な野草が生えている洞窟を案内すると誘ってみた。
金髪娘は予想どおり誘いに乗り、のこのこついて来たという次第だ。
「本当に気にしなくていいんだよ。希少な野草の群生地なんて商人なら秘密にしておきたいでしょ」
「いえいえ。俺の手違いでティレアさんに詫びのしようもない間違いをしでかすところでした。これぐらいでは罪滅ぼしできないでしょうが、どうか気持ちだけでも受け取ってください」
「真面目だね。うん、誠意は伝わったよ。本当ならその言葉だけでも十分だけど、それじゃあヤナさんの気がすまないんでしょ?」
「もちろんです。言葉だけの謝罪では済まされません」
「ふふ、わかったよ。ありがたく受け取る。本当に楽しみなんだよね。珍しいアブリコーゼとか貴重なファイゲとか生えているんでしょ」
「はい、それはもう……」
よし、完全に信じきっている。
洞窟の入り口に近づくと、薄紫色の魔力が膜のように張り巡らされているのが見えた。
掌に魔力を集中させ、空中に術式を描いて結界を解除する。張りつめていた魔力の膜が音もなく消失した。
久しぶりの解除作業だったが、手順に狂いはない。さすがに体が覚えているものだ。
金髪娘を先導し、二人で洞窟の中に入った。
奥の方から断続的な放電音が響いてくる。蓄積された雷魔法のエネルギーが、封じ込められた空間で蠢いているのだ。
活性化している。これほど離れていても、その膨大な魔力が肌を刺すように伝わってきた。
「ねぇ、なんかこの洞窟バチバチ言ってない?」
金髪娘が不思議そうに尋ねてくる。
「ここは、バチバチ洞窟というのです。なんでも洞窟に入ってくる空気が反射してバチバチ音が鳴っているみたいですね」
「へぇ〜そんな洞窟があるんだ。知らなかった」
くっく、そんな洞窟があるか、馬鹿!
やはり、この金髪娘は頭がゆるい。たとえ古武術の達人であっても、その粗末な頭が足を引っ張っている。
雷魔法——。
火、水、木、土、風、雷、光、闇。八つある魔法属性の中で、雷は闇に次ぐ最強の力を誇る。ただ闇魔法は魔族の専売特許。実質的に、雷魔法こそが人間の扱える最高位の属性だった。
かつて伝説の勇者雷電がこの力で大陸を統一したという逸話も頷ける。
俺はこの洞窟に、高位魔法道具と特殊な術式を用いて雷魔法のエネルギーを蓄積し続けてきた。一日また一日と、まるで蜂蜜を壺に集めるように、丹念に魔力を注ぎ込んだ。
十数年の歳月をかけて。
今や洞窟に眠る雷撃は、最大雷魔法をも凌駕している。
SSランクの冒険者だろうと古代龍だろうと、この一撃を受けて立っていられる生物は存在しない。
金髪娘よ。俺の最強毒を防いだからと言っていい気になるな。
俺が長年構築してきた電撃罠をぶつける。ただの落雷と思うなよ。人工的に作り上げた最大級の雷だ。
くっく、ここが貴様の墓場となるだろう。
洞窟の奥へ進むにつれ、足元や岩壁の隙間に見慣れない野草が顔を出していた。外界から隔絶されたこの空間で、希少種たちが密かに繁茂している。
「うぁあ! 本当に野草がいっぱい生えているね」
金髪娘が、喜色を上げて叫んだ。
まぁ、野草がいっぱい生えているのは事実だ。この洞窟は、結界を敷いていたので誰も入れなかった。人に荒らされていないので、これだけ多くの野草が育ったのだ。
「うんうん、これはすごいよ。もしかしたら伝説の食材ムゲットもあるかも」
「そうですね。この辺りもそうですけど、奥に希少な野草がさらにあります。ムゲットもあるやもしれませんよ」
「本当に?」
「えぇ、あまりの上質さに痺れが止まらないでしょう」
「それはすごい」
金髪娘は、疑うということを知らないらしい。警戒することなく、奥深くへ移動していく。
「さぁさぁ、ここが群生地ですよ」
「うん、本当にありがとうね。あれれ? ここ何か光ってるよ……」
洞窟の奥から青白い光が断続的に明滅していた。封じ込められた稲妻が、岩壁を不気味に照らし出しているのだ。
金髪娘が光に気づいたが、問題なし。すでに準備した言い訳がある。
「そうですね、ここは特殊なヒカリダケが多く生息しています。夜でも真昼のように明るいんですよ」
「そっか、そっか。大自然は雄大だね」
金髪娘は、うんうんと納得しながら雷魔法が充満している場所に到達。部屋中に充満していた雷が、突如現れた避雷針に向かって突撃した。
「ん!? なんだこりゃ——ってあっびぃばばばばばばばば!!」
金髪娘の絶叫が響く。
十数年溜めに溜めた雷魔法を全て食らったのだ。細胞一つ残さず塵となって消えただろう。
馬鹿め。天下の暗殺者リュコー様を舐めるからこうなるのだ。
くっくっく、くっあははははははは——はぁ?
大笑いをしていた矢先、金髪娘が無傷で立っているのに気づいた。金髪娘は、両の足でしっかり立っている。感電死どころか、傷一つ負っていない。
「ふぅ、びっくらこいた。ヤナさん、気をつけて。なんかこの辺、静電気がたまってるよ」
「せ、静電気?」
「そうそう静電気が溜まってる。いや〜静電気とはいえ馬鹿にできないね。びりびりきちゃって心臓に悪いよ。子供やお年寄りは要注意って看板がいるかも」
金髪娘は「袖口をまくって端に触れたほうがいいよ」と静電気対策のアドバイスらしきことを述べている。
俺の切り札が静電気だ、と?
……
…………
………………
ふ、ふざけんじゃねぇえええ! 一億ボルトだぞ。なんでてめぇ死んでねぇんだ! ありえねぇだろうがぁああ!
はぁ、はぁ、はぁ、落ち着け。落ち着くんだ。
俺は一流の殺し屋。どんなイレギュラーにも対応できるからプロなのだ。冷静に分析しよう。
たしか『魔法修行概論』第八巻で読んだことがある。
魔法耐性を後天的につける方法があった。それぞれの属性に対してわざとダメージを受け続けることで、その耐性力を上げていくのだ。例えば、火属性の耐性をつけるためにあえて火中を裸足で駆け抜ける修行があると聞いたことがある。
雷耐性も同様の原理で習得可能なはずだ。あえて雷魔法を受け続ければ、自然と雷に対する耐性がつく。
金髪娘は、古武術の修行と並行してこの耐性訓練も行ったのだろう。
ただ、一億ボルトだぞ?
どんなに強靭な肉体を持とうと骨すら残らぬ威力だ。それを無効化できるほどの耐性って……少なくとも生まれたときから電撃を浴びていないと説明がつかない。拷問に近いレベルの電撃を数年は浴び続けていたのだろう。
こうして笑っているだけでも奇跡——いや、副作用はあったようだな。
この金髪娘の頭がゆるいのもこの耐性をつける特訓のせいかもしれん。雷を浴びすぎてアッパラパーになったと考えれば納得がいく。
そうか、そういうことか。
金髪娘に雷は効かない。
金髪娘は何事もなかったかのように野草の採取を続けている。時折、空中に残る電撃の余波が彼女の身体を掠めるが、まるで暖かな春風でも感じているかのような平然とした様子だ。その余波だけでも数万ボルト——熟練の冒険者でさえ一瞬で炭と化すほどの電圧なのだが……。
どうやら第三ラウンドも俺の完敗のようだ。
金髪娘め、どこまで俺を弄べば気が済む。
これで同じ標的に対して三度も失敗してしまった。
いいだろう。俺もプロだ。貴様を殺さんことには示しがつかん。とことんやってやろうではないか!
数週間後……。
使役魔法を行使した。使役したスライムに、標的が興味を引く香辛料ウゥーパを持たせる。小さな宝石のように鮮やかな紫色に輝く貴重な香辛料だ。規格外な能力を持つ金髪娘だが、その性格はほぼ把握している。
金髪娘は料理人。食材には目がない。魅惑的な香辛料を持っていれば、十中八九、興味を持つだろう。
ボウガンも魔法も効かない超タフガイな金髪娘。
ただし、穴を見つけた。それは頭が弱いこと。幼少の頃より雷を浴びてきた弊害である。
プロは、ひとたび弱点を見つけたら徹底的にそこをつく。どんなに巨大な城も蟻の一穴で崩れるものだ。
ふふ、金髪娘よ。今度こそ、ここがお前の墓場となるだろう。
のほほんと歩いている金髪娘の前方に使役したスライムをけしかける。このスライムは俺の意のままに動く。しかも、ただのスライムではない。機工兵団アルクスで極秘に開発された火薬を主成分にしたスライムである。
本来、スライムの主成分は水である。しかし俺は機工兵団アルクスに大金を積み、極秘開発中の火薬を入手した。それを特殊な錬金術式で液化し、ニトログリセリンという極めて危険な揮発性液体へと変質させる。この液体こそがスライムの新たな生体となった。
ニトログリセリン——その一滴が戦車装甲を粉砕する破壊力を秘めている。今、俺の前を這うスライムは、純粋な殺戮兵器そのものだった。
軟体生物でなく、正式には火薬軟体生物である。
くっく、金髪娘よ。お前に魔法耐性があるのはわかった。
だが、物理耐性はどうかな?
火薬は今までにない新技術の攻撃だ。対策はしていまい。
ニトロスライムは、ぷるぷると体を震わせながらゆっくりと金髪娘に向かって移動する。香辛料ウゥーパを体の前面に押し出すように持ち、まるで贈り物を差し出すかのような姿勢で接近していく。
距離が縮まるにつれ、心臓も高鳴った。今度こそ——今度こそ確実に仕留める。
「うわっ!? こんなところにスライムがいるよ。あわわわわ! ど、どうしよう? 治安部隊呼んできたほうがいいかな?」
金髪娘は明らかに動揺している。きょろきょろと周囲を見回し、どうしたものかと狼狽えている様子だ。
最弱の魔物に怯えるとは——これほどの実力者が、何を恐れているのか。スライム相手に逃腰とは、戦力の差も理解できないのか。
やはり、頭のネジがショートしているのは間違いないな。
金髪娘は後ずさりを始めた。このままでは逃げられてしまう。
絶好機を逃すわけにはいかない。
慌ててニトロスライムを操作した。
見ろ——このスライムが持っているのは、お前が欲しがる貴重な香辛料だぞ。
「あれ? それってまさか……」
金髪娘がウゥーパに食いついた。
早速それをプレゼントするというニュアンスでニトロスライムを動かす。
「もしかして、それを私にくれるの?」
金髪娘の問いに、ニトロスライムをプルルンと揺らして肯定する。
「おぉ、そうなんだね。すごい、人間の言葉がわかるんだ」
金髪娘は、警戒心を解くとそのままニトロスライムのもとに駆け寄っていく。
馬鹿か! 魔物が人間の言葉を理解できるわけないだろうが!
「ねぇねぇ、君はどこから来たの?」
金髪娘は、興味津々な様子でニトロスライムに語りだしてくる。それに合わせて、ニトロスライムをプルるんと震わせ回答した。
それから適当に金髪娘の問いに相槌を打っていると、
「おぉ、これだけ話がわかるって……はっ!? もしやあなた人間?」
くっく、どうやったらそんな結論を導くんだ。馬鹿すぎるぞ。
とりあえず、ニトロスライムに対する警戒心は急速に減っている。ここは、ダメ押しだ。ニトロスライムへの信頼を得るため、金髪娘に話を合わせてやる。
金髪娘の問いにプルルンとニトロスライムを揺らして肯定してやった。
「やっぱりそうなんだ! 人間……となるとやっぱり転生したらスライムだったってオチなのかな?」
それから金髪娘は【転生】だの【ニッポン】だのわけのわからん言葉を投げかけてきた。
やはり頭のネジが飛んでやがる。狂人の言葉だな。意味が通じない単語の羅列だ。
俺は、その全ての問いに適当に答えていった。
「……そっか、あなた福岡出身なんだね。私もなんだぁ。本当に奇遇だね」
適当に相槌を打っていると、俺のニトロスライムがどうやら【ニッポン】という国の【フクオカ】という州に生まれたという設定になっていた。しかも、元人間が死んでからスライムに生まれ変わったと本気で信じ込んでいる。
どんな絵物語だ。妄想に囚われている。
よし、頃合だな。
金髪娘は、ニトロスライムに完全に心を許している。
あとは、最大のチャンスを待つ。
すると、金髪娘が自分の家に招待すると言いながら、ニトロスライムを胸に抱きかかえた。これ以上ない密接距離——完璧な状況だ。
千載一遇の好機。
息を殺し、魔力を集中させた。そして——
「今だ!」
内心の咆哮と共に、ニトロスライムを自爆させる。
瞬間、辺り一帯が炎と轟音に包まれた。
機工兵団アルクスが威信をかけて開発した最新兵器。いかなる防御も意味をなさない絶対破壊の力。今度こそ塵一つ残るまい——標的は完全に消滅したはずだ。
はははははは! やった。やったぞ!
「いぇええいい。ざまぁみろ。じーえぇえええええんど!」
興奮して身を乗り出してガッツポーズを出す。
くっくっく、あっははははははは……あ〜
煙幕が静まり、見てみればさきほどと変わらない姿の金髪娘がいた。金髪娘は、はらほろひれぇええと不可思議な踊りを踊っているが、無傷だ。
ば、馬鹿な。一摘で戦車すら吹き飛ばすほどの威力なんだぞ。
ターゲットはまたもやびっくらこいたと叫ぶだけである。
お、おのれぇ! 俺を舐めてんのか!
ニトロだぞ。最新鋭の爆発兵器だ。どれだけ物理耐性が高かろうと防ぐのは無理だ。絶対におかしい。
なぜだ? なぜ、生きている?
プロにあるまじき行為だが、気持ちが抑えられなかった。枝葉を踏み散らしながら隠れていた茂みから姿を現す。もはや潜伏など意味がない。
「あれ? ヤナさん、こんなところで奇遇だね」
あれ、ヤナさんじゃねぇええよ! 普通に挨拶してんじゃねぇえええよ。
怒りと困惑で足取りも荒く、金髪娘の元へと詰め寄る。
「ヤナさん、ちょっと聞いてよ。さっきスライムが爆発しちゃってさ。もうびっくらこいたね。やっぱり魔物は油断できないよ」
「なぜだ?」
「うん? な〜に?」
「なぜ、傷ひとつないんだ!」
「ん、まぁ音と光だけだったからね。魔物といっても所詮は、最弱モンスター。自爆したとはいえ、その威力はたかが知れているよ」
「なわけあるか! おかしいだろ? かすり傷一つないんだぞ! ありえねぇよ!」
今までのこともあり思いの丈をぶつけた。
もう我慢ならん。こいつと関わると、俺の暗殺経験の根底が崩れる。
ありったけの疑問を金髪娘にぶつけてやった。これだけの攻撃で無傷なんてありえねぇだろうが!
だが、金髪娘は要領の得ない回答ばかりしてくる。最後には「人体ってすごいね!」とか言って自己完結する始末だ。
だめだ。馬鹿と話していても話が通じない。
いったいなんだ。なんだってんだ。
何が人体がすごいだ。絶対にお前人体じゃねぇだろうが! ふざけんな。なに人間のふりしてんだ!
恐らく、金髪娘は龍人、いや、魔族の血を引いている。そうでなければ、この頑健さは説明がつかない。
魔法耐性も物理耐性も飛びぬけている人外の化け物。
わかった。わかったよ。認めるよ。俺の手には負えない。
ふふ、くっあはははははははははは!
いいだろう——もはや手段を選んでいる場合ではない。
最悪の切り札を切ってやる。国が滅ぼうと、この世界そのものが終焉を迎えようと構うものか。ここまで俺を愚弄した報いを、その身で思い知るがいい。
俺の向かう先は、国家連合が『絶対立ち入り禁止区域』に指定したサントゥアリオ。そこには、太古の昔から封印された究極の災厄が眠っている。
かつてこの化け物は、大陸人口の三分の一を死の淵に追いやった。時の七英雄をもってしても歯が立たず、幾多の軍団が跡形もなく消え去った。国家そのものを丸ごと呑み込んだとさえ言われる、まさに悪夢の権化。それを伝説の大賢者が、命を賭して封印したのだ。
その封印を、今この手で解いてやる。
化け物には、化け物をぶつけるしかあるまい。