転換
-しきりに泣き喚くと、
この世に身内が一人
この事実に気が狂いそうになった。
「うぁぁぁーー」
誰もいない事をいいことに、身の回りのものを手当たり次第に投げ続ける。
…はあはあ
投げ続ける体力も無くなり、ペタンと尻もちをつく。
「どうして、なのよぅ…」
そうつぶやいて、近くにある枕を力無く叩いた時だった。
かさっ…
叩いた枕から普通ではあり得ない乾燥した音が聞こえた。
「なに…?」
不審に思って枕カバーを外す。
確かこれは母の枕だったはず。
「手紙⁉」
ガサゴソと外した中から出てきたのは封筒に入った、二枚の便箋だった。
ミツキヘ
母の字で綴ってあるそれ。
ミツキがこの手紙を見つけたって事は私達に何かあったってことかな。貴方のことだから錯乱してこの手紙を見つけたってとこかしら。(笑)
…どれだけ鋭いの、お母様。そして明らかに暗い話しを何でそんなに明るく話しているのよ。
まるで生前の母のようで少しだけ涙が出たが、読み進められないと困る。気のせいだと自分に言い聞かせて手紙を読み進める。
ときおり母のジョークが混じった手紙の内容をまとめると
毎日、その日暮らせるお金と笑顔があれば幸せだということを忘れないで欲しい。
どうしても生活が苦しくなったら何もかも捨てて構わないが、出来れば屋敷に暮らせるように頑張って欲しい。
ということだった。
手紙の冒頭からして、母が死を、その原因を予期してそのことを手紙に書いていると思ったのだが
ーー 一切なかった。
両親はどうして死んだのか、2人は何かを知っていたのか予期していたのか、これをどうして書いたのか、今の私に知る術は無かった。
家に馬車は無いのにどうして馬車に乗っていたのか、それさえもわからない。