あの出来事後
「ご両親は即死、のような、の…
」
先生も何といえば良いか分からないのだろう、それでも途切れ途切れに私に伝えてくれた。…ように思う。
正直言って、この辺りから葬式が終わるまでのことは全く記憶に無いのだ。
お父様もお母様も、もう居ない…
その事実だけが受け止めきれずに私の心の中で飽和し、気付いた時には葬式も終わって、優しい人柄で人から好かれていた両親のために集まったであろう人たちもすっかり居なくなった後だった。
そんな私は当然今の状況を把握することも出来ない。…と思ったが、目の前に一枚の置き手紙。
「ミツキちゃんへ
多分まだ混乱していると思います。そんなミツキちゃんを一人にしておくのは申し訳ないのだけれど、ミツキちゃんの今後のことを代わりに話しておきます。差し出がましいことをしてごめんなさい。でも私はあなたのことを見捨てないから。明日の昼には戻ってくるわね。」
…異国の先生で、初めは古語しか話せなかった先生。今でこそ私たちと普通に話しているが、まだまだ書き取りは慣れていなかったはずだ。そんな先生が丁寧に丁寧に書いてくれた手紙。その上両親の他に身寄りの無い私の代わりに動いてくれているらしい。
それを理解した途端、手紙の上に水滴が、一滴…二滴…
それから先は目が涙で霞んで、手紙の上にどれだけ水滴が落ちたのかはわからくなった。
-私はその時初めて両親の死で涙を流した。