その始まり
「いってきます‼」
ミツキ=セントラルはいつでも、明るく元気に暮らす17歳。
ごく普通に、ごく普通の家庭で仲の良い両親の下で育っていた。
…ただし、財力がものを言う貴族社会で貧乏と言うのはマイナスだった。…それでも両親の、一日暮らせるだけのお金と笑顔があれば幸せに暮らせるんだ。という教育の賜物なのかミツキは笑顔であったが。
「いってらっしゃい、ミツキ。気を付けてね。」
送り迎えの執事さえ雇えるお金もないセントラル家。徒歩で学校へ向かうミツキを玄関から見送る両親の声に背中を押されるようにミツキは大きく一歩を踏み出した。
いい気持ち…毎朝同じ道を同じように歩いて登校するだけではあるが、ミツキはこの時間が大好きだった。
ただし
「まぁ、またよ。」
「毎日お可哀想ね。」
「送って差し上げます?」
「まぁ、ご冗談を。あんな没落貴族を私たちの車に乗せて差し上げるなんて。」
おほほほほ…
なんて会話が耳に入るまでの束の間ではあるが…
あれはカーノ家の姉妹だな。
声だけでわかってしまう位に毎日悪口を言われているせいか、悲しみは感じないが、ムカつくものはムカつく。
あっかんべー、と走り去る馬車に見せ付ける。自己満だけど。
それからのどこからともなく聞こえてくる悪口はどこ吹く風で歩いていると、
貴族の中でも高位に居るカーノ家の馬車よりもはるかに高級そうな馬車の音が聞こえてきた。
またか…さっきの悪口姉妹の時とは違う溜め息が出そうになる。でも、勘違いかも…そう自分に言い聞かせて、平然と歩く振りをする。
まぁ、無駄なことなんだけど。