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涙
「ご、ごめんなさいっ!
いくらでも謝りますから、だからっ」
ゆるしてください…
そう、私が続けようとした言葉は、「謝罪などいらない。謝る、謝らないの問題は関係ないのだからな。」
先ほど旦那様になったと知らされた男の声に遮られた。
どうしてこうなったのか…
そう、私は帰宅と同時にこの男、レオンハル=オプティマとの婚姻が決定していたのだ。
私も知らない内にミツキ=オプティマへ変わっていたのか…
現実逃避して無駄なことを考えられたのは、帰宅してそうそうに見たことの無い大人達から婚姻を告げられた直後だけだった。現実逃避の最中に
「それも持っていけ。」
持ち主の許可も無しに部屋の整理をしていたレオンハルのメイドや下男に主人の冷たく鋭い声の指示が行き渡ったからだ。
その瞬間、ちょっと待って!と冷静に止めることなく冒頭のようにミツキは叫んでいたのだった。
「ご、ごめんなさいっ!いくらでも謝りますから、だから…」
彼らが処分しようとしていたのは、ミツキの両親の遺影だったのだ。