おぼろづきよにおもうこと
小説ぽいですが詩です。
ぼうぼう、と、闇を照らしだすのはおぼろづき。けどなつみはそれを背にして立っていたんだ。
薄暗い光のなか、いつも冷徹ななつみの顔が、歪んでいって。
「うそ」
「本当」
やだ、そんなの。
「なつみ」
背中をさすると、青白いほっぺたからぼたぼた涙の粒が落ちる。初めて聞く、なつみの嗚咽。
初めて抱く、なつみの肩。
はっ、と、した。
肩の、その、細いこと。こんなに頼りない小さな体で、あたしの肩を、ずぅっと抱いてきてくれた。
「なつみ」
私は、なつみみたいにきれいに抱き留めてあげられない。
冷徹に向き合ってあげられない。力になれない。
あたしが、もぅちょっとだけ。
なつみのほんのヒトカケだけでも、強いなら。
最後だけでも、つよく。
やだ、そんなの。
これで、さいご?
率直に別れを悲しんでくれる人がいるのは嬉しいことよ、ママはそう言ったけど。
あたしは強くありたかった。
最後、こそ。
あの日、泣きすぎて意識をもうろうとさせたあたしを、脇から抱えてひっぱってってくれた。
幾筋もの涙の線が、かぴかぴになって、細い肩にうっすら汗をかいて。
薄暗く、光を放ってる。あたしに当たって反射する。
注意深くあたしたちの足元を見るしかできなかったなつみ。月、月光。ぼぉっとしてたばかなあたしが、ずっと独り占めしてて。
見せてあげれたなら。
弱さしかないあたしと月が目を合わせた。
一人見たおぼろづき。胸のずくずくした、痛み。
あぁ、なんで?
もう少しだけでも。
強さ、欲しかったのに。
あなたなりにいろんな伏線を感じてもらえれば、嬉しいです。