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残りマナ0.003%、世界の家計簿を黒字化します~追放された元監査官の最適化無双~  作者: れーやん
第二章:氷と聖騎士編

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第4話:追跡者——白銀の聖騎士

 村に戻ると、異変が起きていた。


 村の入り口に、武装した騎士団が集結している。


 白銀の鎧。王国聖騎士団の紋章。


 そして——その先頭に立つ人物。


 金色の短い髪。鋭い青い瞳。


 白銀の鎧を纏った、女騎士。



『クラリス・フォン・アルトハイム:聖騎士団第三部隊隊長』

『年間マナ消費:0MP』

『戦闘スタイル:完全物理特化アンチ・マナ

『脅威度:A+(魔法が効かない)』

『備考:カイ・ヴェルナーの元婚約者』



 ——クラリス。


 5年前に、婚約を破棄した女。


 俺がマナ効率化に傾倒するにつれ、彼女との溝は深まっていった。


 最後に会ったのは、婚約破棄の日だ。


 彼女は、俺に言った。


 『お前は、数字しか見ていない。人の心が、見えていない』


 俺は、答えた。


 『数字こそが、人の心を救う。お前には、それが分からない』


 それきり、俺たちは会っていなかった。


 ——今日まで。



「久しぶりだな、カイ」


 クラリスが、俺を見つめた。


「まさか、魔族と旅をしているとはな」


 彼女の視線が、俺の隣にいるベルに向けられた。


「その子供は——大魔王ベルフェゴールか」


「よく知っているな」


「聖騎士団の記録にある。数百年前に消滅したはずの、最強の魔王」


 クラリスが、剣の柄に手を置いた。


「カイ・ヴェルナー。お前を、国家反逆罪で逮捕する」


「逮捕? 俺は何も悪いことはしていない」


「王都で機密情報を公開し、国家の安定を脅かした。それだけで十分だ」


「安定? お前が言う『安定』とは、貴族が浪費し、庶民が死ぬことか?」


 クラリスの目が、わずかに揺れた。


 だが、すぐに表情を引き締めた。


「それは、私の判断することではない。私は命令に従うだけだ」


「命令に従う。便利な言葉だな」


「黙れ。お前に、正義を語る資格はない」


 クラリスが、剣を抜いた。


 白銀の刃が、灰色の空に光る。


「抵抗するなら、斬る」


 俺は——動かなかった。



「カイさん……!」


 エルが、俺の前に出ようとした。


 俺は、彼女を止めた。


「エル、下がっていろ」


「でも——」


「大丈夫だ。クラリスは、俺を殺さない」


「……どうして、分かるんですか」


「彼女を、知っているからだ」


 俺は、クラリスを見た。


「クラリス。この村を見たか」


「……見た」


「人々が、どんな状態か。分かったか」


「……」


「お前の『命令』は、この人たちを救うのか? それとも、見殺しにするのか?」


 クラリスの手が、わずかに震えた。


 彼女は、正義を重んじる人間だ。


 だからこそ、聖騎士になった。


 だが、今——彼女は、矛盾の前に立たされている。


 『命令に従う正義』と、『目の前の人を救う正義』。


 どちらを選ぶべきか。



「……カイ」


 クラリスが、低い声で言った。


「なぜ、お前はいつも——私を困らせる」


「困らせているつもりはない。ただ、真実を見せているだけだ」


「真実……」


 クラリスが、剣を降ろした。


「……今日は、見逃す」


「隊長……!?」


 部下の騎士が、驚いた声を上げた。


「いいのですか!? 反逆者を——」


「黙れ。これは私の判断だ」


 クラリスが、俺を睨んだ。


「カイ。次に会った時は、容赦しない」


「分かっている」


「……お前の目的は何だ。世界樹の欠片を集めて、何をするつもりだ」


「世界を救う」


「世界を救う? お前一人で?」


「一人じゃない」


 俺は、エルとベルを見た。


「仲間がいる」


 クラリスが、しばらく俺を見つめていた。


 そして——


「……ふん」


 彼女は、騎士団に向き直った。


「撤収だ」


「で、ですが——」


「撤収だと言っている。聞こえなかったか」


 騎士団が、渋々ながら撤退を始めた。


 クラリスは、最後に俺を振り返った。



「カイ。一つだけ、教えてやる」


「何だ」


「オズワルド団長が、お前を追っている。300名の討伐隊を編成した」


「オズワルド……」


「私の師匠だ。お前も知っているだろう」


「ああ。知っている」


 聖騎士団長オズワルド。


 王国最強の騎士。


 SSSランクの戦闘力。


 そして——クラリスの師匠。


「奴は、容赦しない。私のように、甘くはない」


「忠告、感謝する」


「感謝なんかいらない」


 クラリスが、馬に乗った。


「……生き延びろ、カイ。死んだら、許さないからな」


 彼女は、騎士団を率いて去っていった。


 灰の中に、蹄の跡だけが残った。

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