もんだい編
ある高校の図書室の談話スペース。
高校2年生の僕、深水静海はイスに座って本を読んでいる。
対面には幼馴染の鹿屋夏乃が座っていて本を読んでいる。
夏乃は読んでいた本『詭弁論理学』を閉じて丸テーブルの上に置く。
「静海、なんか面白い話して」
声をかけられた僕は本を開いたまま答える。
「僕は今『スイミー』を読んでいる。みんなで力を合わせている熱い場面だ。読み終わるまで待ってくれ、夏乃」
「うん、いいから話しなさい」
「……。僕が友人とジャズ喫茶に行こうとした話をしよう」
~僕、深水静海の証言~
あれは秋のころ。
わかりやすくするため登場人物は僕、A君、B君、C君とする。
ある日、教室でA君が3人に言った。
「レコードでジャズをかけるオシャレな喫茶店がある。飯も美味しいから日曜の夜にみんなで行こうぜ」
それを聞いた僕とB君とC君は賛同した。
そして僕らは日曜の18時に駅で集合して喫茶店まで歩く。
4人で歩いている時、僕はふと疑問に思ってA君に聞いた。
「なあA、4人で行くって喫茶店に電話予約したか?」
A君は答えた。「いや予約してないよ」
「こういうのって予約するものじゃないのか? 満員なら僕らは待たされるぜ」
「大丈夫でしょ」A君はのんきに言った。
僕は不安を抱えながら歩いた。
喫茶店につくと人の気配が無い。
扉には『本日改装工事につき臨時休業』の張り紙がしてあった。
僕らは気が滅入ったね。
楽しみにしていた喫茶店に入れない。
これってA君が事前に予約の電話していれば休業だってわかったんだよな、とも思った。
それで普通こういう時は、僕らを誘ったA君が軽く謝るものだろ。ごめんな〜って。でも謝らねえんだよあいつ。
「ああ残念」って一言僕らに言って終わり、常識ねえなこいつ。
そして僕ら4人は食事のために集まったわけだ。
店がやってないから、はい解散とはいかない。
食事をする必要がある。
B君が「別の飯屋行こう、どこがいいか調べよう」と発言したから僕らはスマフォで近隣の飯屋を調べはじめた。
数分調べてもいい店が出てこない。
夜だから高い店ばかりで僕らは行けない。
B君がみんなに聞く。
「なんかいい店知らないか?」
僕は駅の近くに美味しいラーメン屋があることを思い出した。
「少し歩けば、美味いラーメン屋がある」
「ラーメン、いいじゃないか」とB君は乗り気だ。
ここでふと僕は思った。
ラーメンが嫌いな人がいるかもしれないから確認はするべきだ。
「なあ、みんなラーメン屋でいいかな?」僕は聞いた。
「俺はいいと思う」とB君。
「俺もラーメンは好きだよ」とC君。
「……」無言のA君。
「……なあ、Aはラーメン屋どう思う?」僕はA君に聞いた。
「うん……まあラーメンでいいよ」とA君は答えた。
なんだこいつの回答は?
お前のせいで別の店に行くのだから、答えは、『はい』か『いいえ』だろう。B君やC君が微妙な返事するなら別にいいけど。
「Aはどこか行きたい飯屋ある?」僕は聞く。
「いや別に」とA君。
「じゃあみんなでラーメン食べに行こうか」
僕ら4人は歩き出した。
ラーメン屋についた。
テーブル席につき、僕はみんなに見えるようにメニューを広げる。
そして大きくプリントされているラーメンを指さして言う。
「この店の名物は『白玉』と『赤玉』。赤玉は辛いやつ。僕の友人はどちらも美味しいと言ってるからすごくお勧めだよ」
僕は普段お勧めを言ったりしない。
何を食べるかはその人の自由で誘導すべきではないと考えているからだ。
だが今回は違う。
僕らはジャズ喫茶に行けなくて嫌な思いをしている。
だからラーメン屋では名物を食べて満足して今日を終わりたい。
「じゃあ俺は白玉にする」とB君。
「俺は辛い赤玉にするよ」とC君。
「僕は赤玉にしよう。Aは何頼む?」
A君はメニューの端っこをじっと見て口を開いた。
「うーん、俺はつけ麺を頼む!」
いやあ、僕は面食らったね。
メニューの端っこに小さく載せられたつけ麺。どう見ても主力商品じゃない。
それにつけ麺の専門店じゃない店のつけ麺は外れの可能性がでかい。
「えっとAは、つけ麺が好きなの?」と僕が聞く。
「いや別に」とA君。
なんだこいつ。
「好きじゃないならラーメンにしたら? そのつけ麺は美味しくないかもしれない」
「俺は初めて行く店では名物じゃないものを頼むことにしているんだ」
なんだこいつ。
「……そうか」
注文を終えてラーメン3つとつけ麺1つが届く。
僕らは食べはじめた。
とても美味しい。
B君とC君も美味しいと言っていて満足している。
そしてA君はつけ麺を2口ほど食べて口を開く。
「不味い」
「……」
それに対して僕ら3人は無言だったね。
それでここからがこの話のオチだ。
この後、A君が衝撃の一言を言って僕はブチ切れそうになった。
その一言がわかるか?
~証言終了~




