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Ep.00 プロローグ

新連載です。よろしくお願いします。

「先輩……良かった……間に合った」


 引っ張り込まれた娼館の部屋の中で、ノエル君は私を壁に押し付け耳元でこらえるように囁いた。

 熱い吐息が耳元をくすぐる。

 ノエル君のさわやかなシャボンの香りがした。


「の……ノエル君! なんでここに? ていうか、大丈夫?」


 サラサラの金髪が首筋に当たってくすぐったい。

 ノエル君は熱い吐息をこぼしながら、私の首元に顔を埋めて動かない。


「ノエル君? あぁああああなたどっから湧いてきたの?」


 焦ってとんちんかんなことを聞いてしまう。


「先輩が危ないと思って飛び出してきたのに、ひどくないですか?」


 なんだか吐息がさっきより早くなっている気がする。

 いや、それよりも、よ。


「ノエル君、ありがとう、とってもとっても助かったんだけど、ちょっと離れてもらえないかな?」


「いやです、先輩のことが好きって言いましたよ、僕」


 今! そんなことは聞いてないのよ!

 だから、あの、近い! 近い近い近い!

 なんとか離して貰えないかと肩を叩くがぺしぺしと軽い音がするだけでびくともしない。

 なんとなく察してはいたけど、結構いい体してるんだよな、この子。

 と、ノエル君はすぅっと私の首元で息を吸い込んだ。


「先輩の……甘い香り……すご……」


 すぅーはぁーってイケメンなら許され……ないのよ! イケメンがやってもダメなやつなんだから!

 に……匂い……嗅ぐとか、変態だー!


「ちょ……ちょっと! 匂いかがないで! 何すんの!」


「……僕、なんだか……体が……熱くて……」


 抱きしめるノエル君の手にぎゅっと力が入る。

 は? ちょ・・・ちょっと待って。そういえばノエル君さっきなんか飲み干してなかった?

 そうおっさんに絡まれて、おクスリで一緒に楽しもうって・・・。


 それ! 私が追いかけてる方のオクスリじゃないの!

 なんで飲んじゃうの!

 いや、危ない方のオクスリじゃん!


「の……ノエル君……、アレ、全部のんじゃったの……?」


 ノエル君の目がさっきより潤んでトロンとしている。

 あ……! あかんー!

 これー! ダメなやつー!


「先輩が好きです……、こんな密室で二人きりだし……、僕、今日この部屋借りてるんですよね」


 えっと……どういう意味かな?

 頭にハテナがいっぱい浮かぶ。


「あ、先輩。こういうお店使うことないですもんね

 お店のお姉さん達と一緒に入るのが普通ですけど、こうやってお部屋だけを借りて非日常を楽しむこともできるんですよ……」


「いや、私は特に非日常は間に合ってるんで! 品行方正なんで! ……だから離してって! ていうか、部屋借りてるって何よ! やだ! 答えなくていい! 聞きたくない!」


「うふふ。先輩、かーわいぃなぁー」


 言葉で応酬する間もぎゅうぎゅうに抱きしめられて全然抜け出せない。

 

「それに、このオクスリ、いつもの先輩の甘い匂いと似てる気がして……」


(す……鋭い!)


 思わず抵抗していた手をピタリと止めてしまう。

 いや、そうなんだけど、そうじゃないのよ!

 いつもはにこにこと柔和な表情なのに、部屋の明かりで仄暗く揺れるノエル君の瞳に覗き込まれていた。

 反論しようとして開きかけた口を思わず閉じてしまう。


「美味しそうだなって……」


 舌がゆっくりとノエル君の唇を濡らす。

 可愛いはずの後輩から目をそらすことができない。 

 

(誰……? これ……?)

 

「先輩……いつもこんな香りさせて……誰と楽しんでるんです……?」


 は? そうくる? そうきちゃうの?

 いや、だから違うんですぅー! はーなーしーきーいーてー!

 全然話せてないけれども!


「想像だけで妬けちゃうな……僕と……、いいでしょう……?」


「だだだだだだから! そんな非日常は送ってないです! 薬も! こんなやばいの、飲んだことないですっ!」


 ノエル君の唇が耳元をかすめる。

 やだ、これ! ゾクゾクするから!


「やばくないヤツなら飲んだことあるんですね。詳しく聞きたいなぁっと」


(——————————!)


 ひょいっと抱え上げられたはいいんだけど、これはいわゆるお姫様抱っこというやつでは?

 見た目にそぐわず力持ちすぎじゃない?

 こんな抱えられ方人生で初めてですよ!

 目を白黒させている間にぽすんと極彩色のシーツに落とされる。

 

「う〜ん、こうしてみると先輩、えっちだな

 僕、我慢できなくなっちゃうかも……」

 

 起きあがろうと伸ばしたはずの手を貼り付けに、上から押さえ込まれてしまう。

 止まってほしくて何か言いたいのに、何もいえなくて口がはくはくと金魚のように動くだけ。

 ランプの光に照らされたノエル君は、いつもの優しい後輩とは違う男の顔になっていて私を覗き込んでいる。


(これは……これで私大ピンチなのでは?)


 全身から冷や汗が止まらない。

 薬を調べにきただけなのになんなの!

 キモいおっさんに絡まれたと思ったら、可愛いはずの後輩に追い詰められてるし。

 早く借金返そうとか考えたのが良くなかったのよ!

 甘い誘いに乗ってあぶないバイトなんかするんじゃなかった!


 この後、私どうなっちゃうの?!

Ep.01は9:10にアップします。

引き続きお楽しみください。

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プロローグからスロットル全開で、 引きが強すぎる…… 2人のイチャイチャを楽しみに、ブックマークさせて頂きました!
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