たそがれ〜☆63☆躰の傷よりも☆ミ〜
いつかのどこかの遠い遠い星☆ミ
落下して消滅してしまう星☆ミ
そんな終わりに向かう星で☆ミ
落下星人の少女『ナツ』と
落下星犬の『ピーちゃん』は、
昇ることも沈むことも辞めた太陽が照らす。
夕暮れの黄昏時しか存在しない土手で、
今日も一人と一匹で散歩する。
「ねぇ。ピーちゃん」
「Uo・ェ・oU?」
「打撲傷の話したでしょ?」
「ワウUo・ェ・oU」
何時もの昇ることも沈むことも辞めた太陽が照らす。夕暮れの黄昏時しか存在しない土手のオレンジ色に染まる河原に座り落下星人の少女『ナツ』は言う。その額には落下星人の証のピーナツと呼ばれる触角がセンターパートの前髪からピョコンと生えている。
「打撲傷とか躰の傷は治療すれば治る事もあるけれど」
「心の傷は躰の傷よりも治すのがとても難しいんだって」
夕暮れの黄昏時しか存在しない土手のオレンジ色に染まる河原に座り落下星犬の『ピーちゃん』は飼い主の落下星人の少女『ナツ』を見上げて訊ねる。飼い犬の『ピーちゃん』の可愛い額からも落下星犬の証である。ピーナツと呼ばれる触角が生えていて、飼い主の少女『ナツ』を見上げる度に可愛く揺れている。
「Uo・ェ・oU?」
「…心がね傷つくことだよ…」
飼い主の少女『ナツ』は、可愛い飼い犬の『ピーちゃん』をセーラー服のプリーツスカートに包まれた膝上に抱っこして乗せて言う。
「Uo・ェ・oU?」
「…うん…ちょっとした事で深く傷つくんだよ」
「Uo・ェ・oU?」
飼い主の少女『ナツ』はオレンジ色の土手から思いの外深い大きな川を遠い目をして眺めその水面に反射して浮かび上がる《110》奇妙な数字の羅列を見詰めポツリと呟いた。この奇妙な数字の羅列は、この落下してゆく星の落下する期日を示している。
「…誹謗中傷とかね…」
「Uo・ェ・oU?」
「…言葉で人の心を傷つけることだよ…」
「Uo・ェ・oU?」
「…傷つくんだよ…見た目はわからないけど…みんな怪我してる…この星の人達もそう…どうせ落ちて消えてしまうからって言いたい放題…喧嘩して言い合って、傷つけ合って、バカみたい…落下してゆくからと言って、それが人を傷つけて良い理由になんてならないのに…本当に愚かだと思うわ」
「クゥンU´꓃`U?」
飼い犬の『ピーちゃん』は、飼い主の少女『ナツ』の夕陽のように輝く赤いスカーフが、暑くも寒くも無い生温かい風に揺れる柔らかな胸に顔を埋めて心配そうに訊ねる。
「ふふ。大丈夫だよ。ピーちゃん」
飼い主の少女『ナツ』は、自分の胸に顔を埋めて心配そうにする優しい飼い犬の『ピーちゃん』を抱き締めて呟いた。
「私には、ピーちゃんがいるから平気なの」
慰め合う様に寄り添い合う飼い主の少女『ナツ』と飼い犬の『ピーちゃん』を大きな川の水面が静かに見詰めていた。
この落下してゆく星の大気はオレンジ色の砂埃(無数のチリ)により汚染されつつある。このオレンジ色の砂埃(無数のチリ)により汚染された空には朝も夜も無く。何時も黄昏、夕暮れ時しか存在しない。そして、この星からは汚染されたオレンジ色に包まれた黄昏た空しか見えない。その黄昏たオレンジ色の空に浮かぶ奇妙な数字の羅列…落下してゆく星の落下する期日…それしか見えない。この星がオレンジ色の砂埃(無数のチリ)に汚染されていなかった頃、空からは雨や雪が降ったらしい。そして雨上がりの空には、綺麗に七色に輝くー虹ーと言うものが架かったらしい。ー虹ーは、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、の七色に輝いていてとても綺麗だったそうだ。今、現在ー虹ーは確認する事ができない。そして飼い主の少女『ナツ』は飼い犬の『ピーちゃん』には、言わなかったが、この星の古い文献には、ー虹ーは、この星の未来を約束する為に神様と結んだ契約の証……。そう記されていた。つまり。飼い主の少女『ナツ』は、オレンジ色の黄昏た空を見詰め思うのだ。ー虹ーが確認できないと言う事は、もう、この星は、神様から未来を約束されていないのだと。そう『ナツ』は、オレンジ色の空を見詰めて思うのだった。
そして今、現在、この星の落下星人達の躰の腐敗が始まり。躰のあちこちに腐敗した✹紫色の痣✹が出現していた。かねてより過激な論争を繰り返していた。落下星消滅論には、二つの派閥が在り。片方は、賞味期限が切れたらそのまま星も消滅すると言う。消滅派。もう片方は、賞味期限が切れたら星が腐敗して朽ち落ちると言う。腐敗派。そして今回の腐敗した✹紫色の痣✹の出現により。腐敗派の説が正しいと立証された。ただし賞味期限が切れたら星が腐敗して朽ち落ちる。と言う仮説よりも思いの外早く始まった腐敗は、この星の人々の躰だけでなく心までも腐食して逝くのだった。そして腐敗が進むと✹紫色の痣✹は全身へと拡がり。軈て黒ずんで身体が腐り朽ち果てると言われている。
また今、現在。落下星犬は躰の腐敗が確認されてはいないが、いずれ落下星人のように腐敗が始まり。同じ運命を辿るのでは無いかと言われている。
そして、落下星人の少女『ナツ』も例外ではなく躰の腐敗が始まり。その白い二の腕には、✹紫色の痣✹がくっきりと浮かび上がっていた……。
この✹紫色の痣✹は、腐敗の経過により打撲傷の様な症状が進んで逝くらしぃ。唯一つ違うのは、打撲傷や怪我等の躰の傷であれば、まだ治ると言われているが、躰の腐敗は治る事は無いと言われている。軈て躰の細胞が再生するのを辞めて逝くからである。そして、躰が朽ちるよりも先に…この星は落下してしまうのでは?と言われている…。
この星は刻一刻と終わりへと向かって逝く……。
刻一刻と終わりへと向かって、黒ずんで逝く……。
終焉へと堕ちて逝く中で、この星の人達の心もまた酷く醜く痛み…傷つけ合い…何処までも愚かに堕ちて逝く……。
躰に受けた傷よりも心に受けた傷のほうが時に深刻で、この星の人々に絶望と言う名の致命傷を与えていた……。
たそがれ〜☆63☆躰の傷よりも☆ミ〜
落下するまで110日☆ミ




