たそがれ⑭〜『ナキ』かもね☆ミ〜
いつかのどこかの遠い遠い星☆ミ
落下して消滅してしまう星☆ミ
そんな終わりに向かう星で☆ミ
落下星人の少女『ナツ』と
落下星犬の『ピーちゃん』は、
昇ることも沈むことも辞めた太陽が照らす。
夕暮れの黄昏時しか存在しない土手で、
今日も一人と一匹で散歩する。
「ワンUo・ェ・oU」
「なぁに?ピーちゃん」
何時もの昇ることも沈むことも辞めた太陽が照らす。
夕暮れの黄昏時しか存在しない土手のオレンジ色に染まる河原を歩きながら落下星犬の『ピーちゃん』は、飼い主の落下星人の少女『ナツ』に訊ねる。
「ワンUo・ェ・oU」
「ん?ピーちゃん季節にハマってるね」
「ワンUo・ェ・oU」
落下星犬の『ピーちゃん』が、広い額からピョコンと生えている落下星犬の証であるピーナツと呼ばれる触角を揺らして隣を歩く飼い主の少女『ナツ』を見上げて訊く。
「ワンUo・ェ・oU」
「今?」
「ワンUo・ェ・oU」
何時もの夕暮れの黄昏時しか存在しない土手のオレンジ色を見上げて飼い主の少女『ナツ』は「ーそうだねー」と。
落下星人の証のピーナツと呼ばれる触角をセンターパートの前髪からピョコンと揺らして呟く。
「ー秋は、実りの多い季節だったんだってー」
「ワンUo・ェ・oU」
「ーそうー実り…沢山…美味しいものが実ったんだって」
「♡U^ェ^U♡」
「ーそうー沢山…例えば、柿とか…」
「♡U^ェ^U♡」
大きなお目々をキラキラと輝かせる飼い犬の落下星犬の『ピーちゃん』を飼い主の落下星人の少女『ナツ』は優しく抱き上げて、オレンジ色に染まる空を指さして囁く。
「ーこの…お空の様な夕焼け色の果物…ー」
「♡U^ェ^U♡」
「さあ…食べた事ないから解らないけど…」
生暖かい風が『ナツ』の声をオレンジ色の空に運ぶ。
「…とっても…甘いんだって」
「♡U^ェ^U♡」
「…そうだね…この星は実るのを辞めてしまったからね…食べてみたかったね…」
『ナツ』の声が静かにオレンジ色の空に消えた。
「ワンUo・ェ・oU」
『ピーちゃん』が『ナツ』の腕の中で言う。
「ワンUo・ェ・oU」
無邪気に問いかける…………。
「…季節を巡るのも…実るのも…辞めてしまったから」
……『ナツ』がオレンジ色の空に呟く。
「…何も無い…何にも無くなる…だから」
……ポツリと独り言の様に。
「…『ナキ』かもね…」
「ワンUo・ェ・oU」
『ピーちゃん』が『ナツ』の腕の中で無邪気に言う。
「ワンUo・ェ・oU」
そう言った『ピーちゃん』を『ナツ』は「ーそうだねー」と。強く抱きしめた。
『ピーちゃん』を抱きしめる『ナツ』とーー。
『ナツ』に抱きしめられる『ピーちゃん』をオレンジ色の空が静かに見下ろしていた。
いつかのどこかの遠い遠い星☆ミ
落下して消滅してしまう星☆ミ
そんな終わりに向かう星☆ミ
太陽は昇るのも沈むのも辞めた星☆ミ
何時も夕暮れオレンジ色の黄昏時の星☆ミ
暑いも寒いも無い生温かい風が吹く星☆ミ
季節を巡るのも実るのも辞めた星☆ミ
ーー…たぶん季節は『ナキ』かもね…な星☆ミ
ーー…軈て…何にも無くなる……星☆ミ
ーー『ピーちゃん』と『ナツ』一匹と一人が居る星☆ミ
《159》オレンジ色の空に浮かぶ奇妙な数字の羅列は、この落下してゆく星の落下する期日を示している……。
たそがれ⑭〜『ナキ』かもね☆ミ〜
落下するまで159日☆ミ




