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プロローグ

 その昔、都心から遠く離れた自然豊かな山奥にぽつんとあった私立天谷地学園高等学校しりつあまやちがくえんこうとうがっこうは今やその学校を中心として小規模なレトロ洋風建築も多々見られる都会的な町が出来上がり、全寮制を廃止して、他にも通いやすくし、徒歩、自転車、バス、電車でも通学可となり、女子校から男女共学、セーラー服からブレザーの制服となってもここに入ったら良いとおすすめはあまりされないが頭のレベルに合わせずとも入って来る者が後を絶たない。

 それはこの学校が品性下劣な事を一切認めず、人の輪を乱す者が現れれば即刻その者を自主退学に追い込む何かしらの方法があるからだ――と自分の祖父が言っていた事を思い出す。

 今時、自主退学なんてさせたら問題になるだろうし、じいちゃんは何を考えているのやら、それにしても今日はそんな学校の入学式でとても嫌な日だった。

 人々は俺を見た瞬間にこう言う。

「あ! 眉目秀麗な人!」

 世に言うイケメンだろう! と心の中でその女子生徒に突っ込んで、皆が皆、それを皮切りに指差してそう言うもんだから、こうしてあっという間に人が群がって来る。

「あの、すみません」

 声も良いと誰かが言った。

 失礼だ。

 背も絶対高くなるわよ! そこまで高くなりたくはない。今だって平均並みなのに。

 母親はこういう行事の時にこうなるのを分かり切っていて、先に行って! 後で行くから……と別行動をする。

 それはとても賢い。

 こんなに群がれては前に進めず、高校を違う所にしたってきっとまたこうだ。

 ましてその天谷地学園高校の自主退学の事もある。大人しくしていようと思った。

 けれど――どういう訳か数日もしないうちに俺は自主退学に追い込まれていた。

 きっとじいちゃんが言っていた事はこれなのだ。

『品性下劣な事を一切認めないからこそ、人の輪を乱した者は居辛くなって、自分からそうするように仕向けられる』

 生徒ばかりが騒ぎ、先生達は何も言わない。けれどその態度はとても冷たく感じる。顔は普通にしていても伝わって来る、そういうものが直接。

 それは自分達の手を汚さない一番綺麗な方法だ。

 下位になる者にとってはとても苦痛な事だった。

 まして、まだこの学校に慣れない者にとっては助けてほしい、頼りたい存在に手を伸ばしても放っておかれるのだから。

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