2.依頼内容:殺人
前回のあらすじ
化異人発生の原因が分かり日々問題の増えつつある本国首都FS、そこへ助け舟として狩り出た
今では英雄と称される酒井、烈血、月壊
夢のマイホームも手に入れた3人だったが
謎の2人が家にて待ち構えていたのだった
「いやあ、ちょうど待ちくたびれていたところだったんだ助かったよ」
「ポリポリポリポリ」 サラサラサラァ
「あ…買ったばかりのソファ」 顔面蒼白になる月壊
「だれだてめえらあああああああ!?」
「ぎっ、いきなり大声を出すな」 たちまち烈血が怒号を浴びせると、男は耳を塞いだ
「きっ、他人の家に土足で上がり込むとは見過ごせねえなあ!」
「おい、烈血!」 斬りかかろうとする烈血を制しようとしたが…
「あっ?」
「ていっ」 バゴッガゥワァーン 女が烈血を弾き飛ばした
「ってえ…」
ひびの入った壁を見てさらに深刻な顔になる月壊
「お遊びは外でやりましょ」
「ふっ、キェェェイ!望むところだぜ」 ドガッ バゴッ
そうして2人は壁を完全にぶち破って外へと出ていった
「あ、あがががっ」月壊が壊れかけ出したところで
「さて、静かになったことだし本題に移ろうか?」 と男が切り出してきた
「待て、まだお前たちを認めたつもりはない」 俺はそう言いつつ剣に手を添えた
「酒井、ここは俺に譲ってくれ」
「月壊!?いや、わかった助かるよ」
「さて、新築の仇ぃぃぃぃぃ!」
「!?」 しまった、全然冷静じゃなかったまずい…このままだと
「続いてのニュースです、英雄!殺人!?」
「怖いですね〜」
「いつかやると思ってましたよ、あの月壊って人…なんか顔色悪いでしょ?」
「英雄とか正味オワコンだね」
とか言うことになりかねない…せっかくここまでのし上がってきたというのにぃ
酒井はなんだかんだ名誉欲に酔いしれていた
「月壊!やめろおおおおおっ」
バシッ
「ゴホッ」 ドサッ ガクッ
「って…月壊!?」 男に腕を掴まれひとたび殴られた月壊は床に倒れ悶えている
「そんな、まさか!」 冷静でなかったとはいえ、あの月壊がこんなにもあっさりと…何者なんだ?
「いやあ、悪い悪い私は弱点部位を見抜く能力に秀でていてね…つい良いパンチを打ち込んでしまったよ」
「…」
「さて、これで話を聞くに値する者だと証明できたかな?」
「グフッオェェ」
「ああ、言ってもらおうじゃないか!」 男の話にとくとして臨んだ
「では話すとしようまず俺の名前は堕白管、今回は英雄と称されるお前達を見込んでとある依頼を持ってきた」
「依頼?」
堕白管と名乗る男は懐から、ある写真を取り出すと
「お前達にはこの男を殺してもらいたい」
はぁぁぁぁぁぁあ?
こいつは何を言っているんだ俺達に!この俺達にっ!
「事の発端はこの男が…」 堕白が言い切る前に酒井が割り込み
「ちょっと待て!お前俺達に人殺しをやれってのか?そんな依頼呑めるわけないだろ!」 そう突っぱねた
「ちっ、おいおい話はまだ続いてるんだ最後まで聞いてくれよ」
「はぁ?」 不信感を募らせたままの酒井だったが
「酒井、ここは大人しく聞いておくのが吉だ」
「月壊!大丈夫なのか?」
「あぁ…幸いな」 そうして月壊は堕白の方を向くと
「続けてくれ」
「はぁ〜はいはい」
そうして再び口が開かれた
「事の発端はこの男、界時海人というのだが…」 堕白は続ける
「こいつは国家犯罪を企む要注意人物として度々注目されてきた、それが最近バケモノ液を購入したという情報を掴んだことで暗殺協会:血のファントムより俺達が派遣された」暗殺協会…
「だがそこで、大きな問題があった
それは対象がバケモノ液を所有していることだ。家が暗殺するのはあくまで人間専門、もちろんお抱え力剣士もいることにはいるが…」 堕白がふと空いた壁に目を向ける
あの女か…
「それは対化異物に限った話で対化異人はもっての外だ、現在までにバケモノ液所有の暗殺任務は17件あったが…」
ゴクリ…
「内15件が成功している」
「は?いやそこは、全滅とかそういう雰囲気だろ!なんで好成績だしてんだよ自慢のつもりか?」 と酒井が声を荒らげるも
「数の問題じゃない、血のファントムは任務の失敗を許さない…今回は標的が標的だけに慎重に行動することに越したことはないんだ」 すると堕白は頭を下げ
「任務を確実に成功させるために是非手を貸してほしい、何も人殺しをさせようというんじゃないバケモノ液による化異人化が起きた場合に対処を頼みたいだけだ」 と懇願してくる
ぐっ、流石にそう簡単に呑む訳には…
酒井の意地が沈黙を続かせていると
「これが今回の成功報酬だ、7:3でどうだろうか?」 堕白が懐からデバイスを取り出し画面に写る金額を見せてくるも動かぬ2人
次に堕白は細長い筒を懐から取り出し机に置いた
「…これは?」
「武器が種類を問わず入っている、力剣士は一般的に武器は使い捨て、数回限りの品とされているが…うちの技術なら核エネルギーにも耐え数年に渡って使い続けられる強度を持つ武器を用意できる」
「おいおい酒井見ろよ、これはスチールブランドの特殊合金だぜ!」 月壊がその性能に惹かれているのを横目に堕白が寄ってきた
「今回の協力でうちとのコネクションが出来ればこういったものの支援や…」 急に堕白が酒井の耳元に来ると
「知名度だって上げられる!」
「!?」
酒井は思った、俺達は所詮田舎の出、英雄と呼ばれているのも通り名の様なものでしかない…FSの強豪達と肩を並べていくには持ってこいかもしれない!
「よし、乗った!月壊それでいいな?」
「あ、ああそうだな…うん!そうだ」
「よし、じゃあ話の続きと行こうか」 俺達は任務概要や日程を聞いた
シャキンッ キンキンキンキンッ パシュッ
クソォ全然近づけやしねえ…あの変幻自在の布切れ、回避した先に瞬時に攻撃を繰り出しやがる
「貴方 話 ならない 」
「なにぉぉ!」 烈血は躍起にやって再び飛び出す
「何度 来ても 同じ…」
「おーい!サキ〜」 すると堕白が酒井、月壊と共に現れ女の動きが止まった
「キェェイ!隙やりぃぃぃ」 ヒュン
「どべぁっ」 すかさず斬りかかった烈血だったが真後ろを向いていたはずの女の攻撃に敗れた
「ってオイ!それは反則だろっ」
「いいえ これは 私の」
「あちゃー、やっちまったか…」 堕白が苦笑していると ふと月壊が女を見て
「へぇ、帯刀かぁ珍しいな」 帯刀、平鞭とも呼ばれるそれはよくしなる素材でできており手に添わせることで投擲や面の攻撃を可能としている
「目 怖い」
グサッ…女の言葉が月壊に刺さる
「私の 子 その目で見るな いやらしい」
ガーン 月壊は項垂れた
「行くぞサキ」
「うん」
「それじゃあ、英雄ご一行さん次会う時はそういうことで」そう言い残し2人は去った
〜任務決行日〜
「あぁ〜、あぁ〜、あぁぁぁぁあ」
「月壊、どうした?寝不足でおかしくなったか?」
「キェイ、いつもの事だろ」
「違うわ!ったくなんだよここ」 月壊は手を広げて辺りを見回す…ツギハギの家々、散乱するゴミ、すれ違う人々は薄汚れていた
「国家犯罪を企むって言うくらいならもっとマシなとこに住めよ!」
「ははっ面白いことを言うなあ」
「不謹慎」
「まぁ、裏でコソコソやるにはこういった場所の方が都合がいいんだろう」
本国貧民街…政府国の闇市と並び本国1治安の悪い場所と呼ばれている
「じゃあ、移動するぞ」 そうして俺達は界時海人の家の付近までやってきた
「俺は今から配置に着いてターゲットを待つ
英雄ご一行さんは外で適当にしていてくれ…サキはターゲットの帰宅を確認した後連絡を」
「了解」
「1人で大丈夫そうか?」 酒井が声を掛けると
「一応プロなんでね」 そう言うと堕白は屋根の上に登っていった
そうして訪れた沈黙、最初に破ったのは月壊
「あのなんだ…この前は悪かったな、俺も悪気があったわけじゃないんだが。以後気をつけよう」 苦笑しつつも謝罪の意を示す月壊だったが返答はなく再びの沈黙
「あ!そういや名前聞いていなかったな俺は月壊無倉、お前はなんて言うんだ?」
「…」
「お、おいなにか言ってくれないか…俺としては」
「苦手 奴 答える 必要 ない」
「えっ、いやだが」
「謝罪 イコール 仲直り 違う 人は 向き不向き ある これ 任務 馴れ合う 必要 ない」
そう言われた月壊は豆鉄砲を食らった鳥のように唖然として固まった
「キェイ、フラれたなぁお坊っちゃんオレが格の違いってのを見せてやるよ」 そう言って次に食ってかかったのは烈血
「キェェイ、女!待っている間暇だろぅ、この前の続きも兼ねてオレと遊ぼうぜ?」
「任務 仕事 遊びじゃない」
そう言い放たれた烈血は仮面が割れ砂のように崩れ落ちて顔面蒼白となった
「キェィ アソビ ジャナイ…」
そしてこの男もまた…
「俺の仲間が申し訳ない俺の名前は酒井純滅だ、堕白から聞いているだろうが一応名乗っておく」
「…」 再び無言を貫くサキに酒井は、何も言わず離れようとしたが
「あ、ひとつ言い忘れてた!」 そう言って女の元へ駆け寄ると
「堕白がくれたこの武器すっげえ耐久力だったんだ、俺は今まで仲間との立ち会いが出来なかった…持ち手に込めるエネルギーならまだしも放つ力の方は大抵のものを破壊してしまう」
そう淡々と俯いて語る酒井は急に上を向き
「だがこれは違う!持っていた月壊は衝撃波で吹き飛ばされたが、肝心の刀身は俺の攻撃に耐えてヒビすらついていないこんなことは初めてだ堕白には本当に感謝しかない」
「そう…」 熱く語る酒井に気圧されたのかサキは少しばかりの感情を見せた
「それじゃ、俺はこれで」 離れる酒井を見ていたサキだったが
「待って これ」 急だった、少々声を荒らげ酒井の剣を掴む
「えっどどうした?」 思わぬ行動に戸惑う酒井
「これ ボロ ボロ」 するとサキは首に纏わせていた 帯刀を解くと酒井の刀を叩いた
「!?」 するとそれはヒビが入り全体に広がって粉々となった
「ええええええっ」 驚いた酒井はサキの方を見ると
俺の攻撃を耐えた剣を一撃で!?な、もしかしてこの方が…
「蓄積 ダメージ…」
「えっ?」
「見かけ では 分からない けど 今にも壊れそう だった」 なるほど…俺の攻撃であと一歩の所まで削れてしまっていたのか
「気づかなかった…だ、だが生憎換えを持ってきていないんだどうすれば」 たちまち頭を抱え出す酒井…すると
「これ」 サキが背中に入れていた筒を取り出し酒井に突き出す
「これは。」 筒の中には酒井のものと同じ仕様の刀が入っていた
「私の 予備」
「いいのか?いや、助かるえーと…」
「縄頑崎」
「え?」
「私の 名前 呼び方は そっち 任せる」
「お…おい、おまさっき馴れ合う必要は無いって」 すると硬直から解けた月壊がサキに突っかかる
「必要性 出た だけ…」 そう言いつつ帯刀を巻き直すサキ
「ありがとう縄頑!これが終わったら1杯奢らせてくれ」 と返す酒井
「1杯と 言わず 何杯 で…」 すると急にサキの顔色が変わった
通信機を取り出し早口で堕白になにかを伝える
「酒井達 ターゲット ここ 通る 知らん顔」
「おおえっ?」
「酒井達?」
「キェイ?」
突然の事だったが4人ともそれぞれそれっぽいポーズを取り待ち構える
すると黒いパーカーに身を包んだ男が何食わぬ顔をして俺達の前を通り過ぎようとした…が
ぬはっ!? 男がこちらを向き一瞬酒井の目が男と合ってしまった
はっはっはっはっ… サイズが頭を超えるトサカの様な刈り上げを目に焼きつかせ、男は行った
〜堕白の待機場所〜
「堕白くん 報告 ターゲット 帰宅 確認」 間違いない、サキからの通信だ
「ふふ、しっかり言いつけを守ってんな」 堕白くん と言うのは万が一のための合言葉のようなものだ、しかしあの表情からこれを出していると思うとつい込み上げてしまう
「さあて位置につこうかぁ」 屋根に腹ばいとなって寝そべり砲口をトタンで塞がれた窓に向ける
対多属性汎用光輝ライフル:戦争の産物光輝を最新技術で改良した武器、使用者の属性に依存していた従来の光輝とは違い、5大属性全てのエネルギー弾を放てる
「ふふっダメだよぉ熱源探知だからそんなもので覆っても!」
ガチャッ ターゲットである界時海人が家に入ったようだ 固唾を呑んで待ち構える堕白
熱源探知で位置は既に特定出来ている…あとは窓の前に立つのを待って俺の能力、弱点感知で核を確実に破壊できる軌道を取るだけだ
ターゲットが窓の前に立つ 上着を脱ぎ壁に掛けるような動作、鍵を置くような動作、その一つ一つに充てられる時間を神経を研ぎ澄ますことに費やす そして時が来る
今?今か?今だ!
プルルルルルッ 電話が鳴った 堕白の背筋が凍る
「お、落ち着けまだ失敗した訳じゃない…電話が終わるタイミングを狙ってもう一度」 そうして界時に目を向ける
「ああ、順調そうでなによりこっちも問題なく進んでいる」 電話の内容は把握出来ない今のうちに撃っても良いが
「いや、今回は任務が任務安全策を取るに越したことは…」 すると界時が反対側の窓へと歩いていく
「なんだ?受話器を持ったまま、外に何かあるのか?」 疑問に感じていると バァガァリーン
「なっにぃぃぃぃぃ」 界時がトタンごと窓を突き破って外に出た
「はっこうしちゃいられない」 堕白は急いで通信機を取った
〜待機中の4人〜
「ん。」 サキが通信機を取る
「サキ!ターゲットが逃走…いやバレたわけじゃないけども、とにかく追いかけてくれ!」
「!?」
「酒井達 緊急事態 」
「えっ?何何?」
「ターゲット 移動開始 追う」 それだけ言うとサキは帯刀を解き バシュンッ 地面に叩きつけて跳び上がった
「うひょ〜」 空高く跳躍したサキを見ていると屋根から堕白が降りてきた
「はぁっはぁっはぁっはぁっ」
「何かあったのか?」 息を切らす堕白にそう尋ねる月壊
「はぁターゲットがはぁはぁ逃走した」
「なんだと!?」 酒井と月壊は驚くも烈血は
「キェェェイ!スピードならオレに任せろおぉぉぉぉ!」 と走り出した
キェイ、たとえ飛べなくとも速さだけはあいつに譲るわけには行かねえよぉ!
「お、俺達も急ごう」 そうして酒井と月壊も走り出すが…
「まっ待ってくれぇ」 後ろで堕白が声をあげながらのろのろと駆けてくる
「だっ大丈夫か?」 2人に追いついたことで一息をつく堕白
「おいおい、あんたそれでも暗殺業やってる身か?」 とツッこむ月壊に堕白は
「こ、こっちには、重い光輝があるんだ。それに俺はぁ〜 隠密タイプなんだよぉ」
「うんしょっ。えっしょ」
「うんしょっ。えっしょ」 堕白の嘆きを聞いた俺達は堕白に光輝を背負わせて両側から肩を組んで支えて走った
「ターゲットが逃走した理由に心当たりはないのか?」 走りながら俺は堕白にそう聞いた
「普段から頭のおかしい奴らしいからな、突発的な行動に意味があるとは考えにくいが…」
「おい、何がつっかえてるんだ?」 月壊がそう詰めると
「テロ…」
「え!?」 「ん!?」 その発言に少し驚いた
「いや、あくまで可能性の話だ人の集まる街中でバケモノ液を使えば肥大時の衝撃とその身の力で大量殺戮を可能とする…もちろんメリットがあるとは考えにくいが、危険人物と言ったらそういうことをしでかしてもおかしくはないだろ?」
「うぅーん…」
俺は、そんなことは起こらないことを祈りつつも姿の見えない烈血と縄頑にもしもの時を願った
「いた」 FS商店街前の広場で噴水に腰掛けた界時海人を発見した、ほっと一息つき近くに降りようとしたが
「キェェェェェイ!見つけたぜぇぇぇい!」 烈血も既に駆けつけており界時海人目掛けて突っ込んでいく
「はダメ!」
「キェェェイ、オレが!1番乗りだぜえがっ」 ドガァァァァァンッ 烈血の頭上にサキが降り立ち何とか特攻を阻止したが衝撃波で注目を集めることとなってしまった
「キェェイ!何故邪魔をするこいつぶぁ」 サキが烈血の口を抑え耳打ちする
「こいつ まだ 人間 あなた ダメ」
「お怪我はありませんか?お嬢さん」 周囲の人間と共に界時海人が至近距離まで近づいてきていた
「キェイ、早くしろよほら」 烈血が耳打ちするもサキはサキで刀を振るえない事情があった
____________________
「いいか?サキ、何度も言うがな俺達はアサシンでなくてはならない」孤児だったサキに仕事を教えるための堕白の講義、この任務が来た日、久しぶりの時間がやってきた
「ヒットマンやハニトラとは違い後処理をやるのは協会ではなく依頼者側だ!俺達は殺害現場を人に見られてはいけない、事実を殺人以外に変えられる可能性を潰しちゃいけないんだ。だから、何があっても人目に付くんじゃないぞ」
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ダメだ…烈血 抱えたまま 撤退 不可、烈血 離せば 任務 失敗 ダメ
絶対絶命 為す術なし かくなる上…
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「ん?任務成功の目処が立たず絶対絶命の危機に瀕した時どうすればいいか?うーん、身切りという手がないことも…あいやなんでもない忘れてくれ」
「ヘェ〜身切りについて聞きたいんだぁ、そうね身切りってのは…」
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「"ターゲットを殺して自分も死ぬ"」 死体は残らずただ2人の人間が消えるだけ、姉さん、堕白 ごめん なさい…サキに考えられたのはもはやそれだけだった
ジィーーーザンッ 核目掛けて刀を刺す
「ぐぼあっ」 界時は倒れ、辺りに叫び声が広がり出す
「これ で…」 自らに刀を向け突き刺すっ
ダシンッ
「く っ」 烈血に押され倒れるサキ
「何やってんだ!」
「邪魔 するな」 烈血を引き剥がそうとするもビクともしない
「キェイ…単純な力でも負けちゃあいなかったようだなぁ」 と笑みを浮かべる烈血だったが
「うおっおわっ」 サキは帯刀を解いて烈血を攻撃する
「待てってオイ!落ち着つけ!見ろ!」 帯刀を躱しつつ刀を掴んだまま烈血はサキの背後に回ると、目を見開かせる
「ごぼっぐうぅぐがっ…」 目の前には倒れかかったままの姿勢で悶える界時がいた、そして
「ぐっぐげぁ コァオォォォォォ 」 界時からエネルギーが放出され身体を覆い出す
「そんな、核 刺した はず」
「だがこれが現実だ!勝手に退勤しようとしてんじゃねぇ!」
タッタッタッタッ
「烈血〜!」 「サキぃぃぃ…」 そこへ酒井達もようやく到着した
「酒井…」 「堕、白…」 すると堕白はサキに会うや否や バチンッ
頬を叩いた
「忘れろと言ったはずだ!身切りなんて誰も喜ばないぞ」 と物凄い剣幕でサキにあたったが
「待て、確かにこいつは自分を犠牲にしようとした。だがそのおかげで広場にいた人間は逃げ化異人化に巻き込まれることはなかった」 と言い返す烈血
「それは結果論に過ぎない!」 堕白がそう言うと
「結果論に過ぎないだと?さっきてめえ忘れろと言ったはずだ?とか言ってたよなあんな言葉足らずな言葉で納得し切れるわけねえよ!全ててめえの監督責任だろうが!」
その言葉に堕白は言い返せなかった、きっと思い当たる節があったのだろう
「酒井、月壊、今はとりあえずあれを倒さねえと行けねえ」
「ああ!もちろんだ烈血!」
「当然だろ…何があったか知らねえけどここからは俺達の仕事だ」
「グギゴガァァァァァ!」 化異人となった界時海人が酒井達に襲いかかる
ガシン ジャキン ジャシンッ
「グゴゲガァァァァァ」 人間だった頃の端正な顔立ちの面影はなくずんぐりむっくりとした体格に大きな口と爪、そして頭部には大量のトサカが生えていた
「言葉を失っている…これでは化異人というより化異物そのものだな」
「ぐっ…硬いこの武器でも両断は無理か」
「キェェイ、このトサカ1本1本が槍だぜぇ捌き切れるかぁ?」 酒井、月壊、烈血の3人係でも苦戦を強いられているようだ
それをただ眺めるしかできないサキの元へ堕白が寄ると
「サキ、すまなかった今まで俺は何も言わなくとも察してもらえると甘い考えをしていた、俺はお前とのチームワークを信じていたからな…笑えるだろ?俺はお前に一度もチームワークの話をしていないってのに。」
堕白はそういうと地べたで膝を曲げ両手をついて頭を下げ
「俺の言葉足らずが本当にすまなかった」 と言った
「ない」
「なんだ?」
「いらない 謝罪 なんて 私こそ 直接 聞こうと しなかった 卑怯 」
「それは俺だって…あいや」
「ふ、ふふ」
「ははっははははははっ」 「ふふふふふふふっ」
2人は心ゆくまで笑った
「はぁ〜さてこれからどうするか…」
「加勢 あるのみ まだ、終わってない」
「そうか、そうだな!」
ゴォォォォォドグワァァァァン
「よし、酒井何とかこれで…」 すると界時の残った身体から大量の肉が生成され形をなして再び起き上がる
「キェイ!一瞬で再生したぞ?」
「えっ…まさか核が吹き飛んでいなかったっていうのか!?」
油断していた月壊を、伸びた界時の腕が襲う
パシィーンッ っというところで天高く跳んだサキが腕に帯刀を叩き込む
「た、助かったありが…とう?」
「どう いたしまして」
「堕白!」
「キェイ!どういうつもりだ?」
「出来ればそういうの後にしてくれないかなあ?」 駆けつけた堕白は一旦咳払いをすると
「そいつは核を自在に移動させている、人型に見えるが中身は無形型に近いんだろう。俺の能力弱点感知で核の位置を教えるからタイミングよくさっきのを叩き込んでくれ!」
「!!」
「キェェェイ、わかったぜぇ!」
「おお!やってやろうじゃねえか」
「了解した!ありがとう堕白」
一同は堕白の指示を聞いて勢いを取り戻したようだ
「キェェェェェイ!ご自慢のトサカ全てを粉微塵に切り裂くぜぇぇ!」
「ちっ速すぎだ烈血、お前の剣撃に沿わせないといけないんだからもっとスピードを合わせろよっとぉ」 パシンッ パシンッ
「他の 攻撃 気にせずに カバー 任せた」
「堕白!まだか?エネルギーを留めて置くのにも体力がだなぁ」
「い、いいから静かにしといてってこっちは集中してるんだから!」
烈血は降り注ぐ槍を切り月壊がその再生を封じる、腕の攻撃はサキがひるませる完璧な連携に、全神経を集中させもろば斬りの発動を控えて耐え続ける酒井と同じくベストコンディションを待って位置を探る堕白
目の前の敵を討つべくして5人は全力を挙げていた
「いつだ?今か?はっ今田ァ!」
「もろば斬りぃぃぃぃぃ」 放たれたエネルギーは界時の身体を貫くだけに留まらず中心から全体へ勢いを広げ塵も残らず消し飛ばした
「おっか、勝ったのか?」 あっけに取られる月壊を他所に
「勝った 勝った 勝った 勝った」
「キェェェイ!倒したぜぇぇぇい!」 と喜ぶサキと烈血、対して…
「ぜぇーはぁーぜぇーはぁーぜぇーはぁー」
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」 意気消沈して地べたに這いつくばって息を切らす
酒井と堕白であった
ピンポーン
「こーんにちは〜!」
「こん にちは」 インターホンを鳴らして入ってきたのは堕白とサキであった
「おお〜まさか直接出向いてくれるなんてなぁ」
「キェイ、ちょうど飯時でよかったなあがってけよ!」
「うへぇーう、嬉しいなー」
「ジャクジャクジャクジャク」
「この野菜炒め美味いなぁソースどこの使ってんのー?」
「月壊 料理 得意 意外 」
「そうなんだよ!やっぱ結局この味が1番なんだあ」
「キェイ!月壊の料理はカセイ1だなぁ」
「ハッハッハッハッハッ」 と団欒する一同だったが
「さっさと本題に入ってくれよ…」 ただ1人この男月壊無倉だけは怪訝な眼差しのままであった
「では話すか、今回ターゲットの暗殺に失敗し化異人化させた後に倒した訳だが…そういう事例は今までになく協会としても任務失敗としていいか審議中なのだが。」
「いいから続けろ」
「正直、第三者であるお前達を介入させたことでだいぶ危うい方向に傾いてしまっている…このままだと協会をクビになってしまうかもしれん」
「ああ、ん?ああ…で?」
「頼む、どうか俺とサキをお前達の仲間に入れてくれ!」
「はぁぁぁぁぁ?いや待て、何故そうなる?」
「ほ、ほら…俺達結構いい感じに連携できてたろ?」
「確かに…」 「キェイ…」
「いや待てお前ら、壁の修理代は?協会とのコネクションはどうすんだよ?」
「月壊 そんな 細かいこと 気にするんだ 」
「お前が言うな!壁壊した張本人っ」
「そうだぞ月壊、流石に横暴だ」
「キェイ、心が狭いって嫌なもんだなぁ」
「お前らはどっちの味方なんだよ!?」
「そう… 月壊は 私達が 路頭 迷っても いいんだ」 それを聞くと月壊の眉がピクピクと動いた
「あ、あらあらサキさーんいつハニトラなんて教わったんですか〜?ダメですよそんな」
「そうだぞ縄頑、迂闊だ」
「キェイ、月壊には逆効果なんだぜぇ?」
「あぁ〜ダメだもう付き合いきれん俺は寝る」
「とよーし!月壊の許しも得たことだし、早速仲間入り祝いで飯に行こう!」
「おっ良いねぇ〜」
「酒井 太っ腹 」
「キェイ!全部酒井の奢りだぜぇー」
「ああ、もちろんだとも!」
「ちっ…俺の存在は〜?」
こうして堕白とサキは晴れて酒井達の仲間となったのであった
「プルルルルル もしもし ええ、来てみて正解でしたよ間違いありません…オリジナル様」
ガチャッ
「誰と電話されていたのですか?海人様」
「俺の肉片の一体さ、昔の隠れ家に潜ませていた一体が殺されたと報告があったんだ…それとオクテイター俺はもう界時海人じゃない。これからは怪獣王と呼ぶように」
「かしこまりました、怪獣王様」
「良いぞ、これで暫く奴らにとってはいい目くらましになるだろう…その間に思う存分準備を進めておけ!俺がこの世界を支配する準備をな」
次回予告!
新たに加わった仲間を登録するため組合に向かった酒井達、ところが強豪力剣士グループの八属聖に出くわし絡まれてしまう!
酒井達の命運はいかに
次回 第1章 3.ライバル現る?そして来る刺客