アルファードさんをグシャグシャにしかけた話
大型トラックの運転手をしております。
この前、荷物を約13トン積んで、自動車専用のバイパス道路を走っていた時のことです。
片側二車線道路でした。流入と流出が重なるポイントで左側が詰まったので、私は右側車線に車線変更をしました。
白だったか黒だったか忘れましたが、前をアルファードさんが走っていました。
独断と偏見ですが、私はこの車に対していい印象がありません。
『偉そうな自分勝手運転をしながら、何かあるとすぐにルールを持ち出す車』という印象をもっています。
もちろん色んな方が乗っていて、色んなアルファードさんがいるはずなのですが、なぜか同じような運転をされる方が目立ちます。
嫌な予感がしながらも後ろをついて走っていました。
それからすぐ、アルファードさんがブレーキを踏みました。
フルブレーキでした。何のインフォメーションもなく、信号も何もないバイパス道路上でいきなり急停止。
意外とパニックにはならないもので、私は『あー……。これは止まれないかな。アルファードさん、グシャグシャにしちゃうな』と思いながら、日頃つけている癖とは有り難いもので、手は自動的に排気ブレーキを入れ、ハザードランプを焚き、追突されないように情報を後ろへ向けて発信しながら、ブレーキペダルを踏み込んだり抜いたりを繰り返しました。
止まれるものです。
完全に停止しているアルファードさんのお尻に向かって、速度を殺しながらゆっくりと近づいていきました。
なんで止まってるんだろう? と首を傾げていると、左側車線の切れ目を見つけてアルファードさんが、急ハンドルで、ノーウィンカーで車線変更していきました。
アルファードさんが退いたあとに、右側車線のど真ん中に、子供用の便座が落ちていました。
誰かが落としたばっかりだったのでしょう。アヒルさんを模した小さな白い便座が、ちょこんと、かわいい顔をこちらに向けていました。
私はトラックを降りて、歩いて退かせに行きました。箸より重いものを持ったことのない私でも、ひょいと片手で持てるような軽いものでした。
中央分離帯にそれを置くと、左から私のトラックを避けていく車にぺこりとし、再び発進しました。
積荷はぜんぶ前に動いていましたが、無事でした。
急ブレーキのショックで前のキャッチ(ウィングを止める留め具)が両方とも弾けて閉まらなくなっていましたが、トラックにも異常はなしです。
何ともなかったからよかったというものではありません。
もし私が突っ込んでグシャグシャにしていたら、あのアルファードさんはどんなことを言ったのでしょう?
自分のことだけでなく、周囲のことを考えてほしいと願います。
急ブレーキになる時には後続車列にハザードランプ等で知らせましょう。
どうせ停止してしまったのなら、落下物が手で持って退けられるようなものであれば取り除きましょう。
もちろんそんな『ルール』はありません。
渋滞時のハザードは推奨されてはいますがルールではありませんし、落下物は専門の方に任せるものです。
でも、退けられるものなら退けましょうよ。
この世から事故も渋滞もなくなってほしいと切に願います。