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屋上での会話たち  作者: 吉川緑
水野と竹宮編
10/27

映像化……?

「巨人がきた」

「は? 目でも腐りましたか。せんせーは」


 そこは都会のビル群に囲まれた非常階段の踊り場。せんせーと呼ばれた水野(みずの)は、売れないゲームのプロデューサーである。


「ちげーよ。知らんのか、最強キャラクターたちの集結を」

「説明しろ定期」


 水野に向かって、うさんくさげな目を向けているのは竹宮(たけみや)だ。彼女はデザイナーで別に生徒ではない。

 にも関わらず『せんせー』呼びをしてくるのは、きっと水野が竹宮のメンターだった頃のなごりだろう。


 竹宮がはやくしろと首を傾げていく。すると、ピンクのインナーカラーが重力に従い垂れた。


「つまりな、大人気Vたちがコミカライズ、それに映像化されるんだよ」

「はあ。なんかそんなの前もありませんでしたっけ。ミニキャラでー、なぜか学校に集められるっていう」


 竹宮が言うのは、異世界に転生やら召喚やらした面々が謎の学校に集う作品だ。アニメーション化もされている。


「あった。だが、俺の見るところではあれはコラボレーションであって、今回は出演なんだよ」


 コラボレーションと出演。その意味するところは、水野にとって大きく異なる。

 あくまでも原作あってのコラボレーションに対して、出演はその作品自体が原作になるのだ。


「うーんと……。モノクマさんとドラえもんが同じ作品内に出てきたらコラボ……。のぶ代さんとわさびさんが同じ作品に出ていたら出演……ですか?」

「そうだけど、そのたとえは紛らわしい」


 竹宮はこれで案外飲み込みの良い生徒だ。理解したうえでこぼけを差し込んでくる。


「これまでの似た取り組みと決定的に違うのはその実在性だ。某皇女の言葉がわかりやすい」

「その言葉ってのは?」

「『リプライとかマシュマロは見て、届いているから。バーチャルライバーは双方向性コミュニケーションだから』」


 皇女は、自身がかつて、某ゲームキャラクターのガチ恋勢だったとも語っている。

 その経験があったゆえの言葉ではあろうが、これはある意味で本質をさしていた。


「モノクマさんと話すことはできないけど、のぶ代さんとは言葉を交わせる……ってこと?」

「そういうことだ」

「まるでドラマに出てくるアイドルかタレント定期」


 実写の界隈ではよく行われていることだ。視聴率や劇場動員数……いわゆる数字のために人気あるキャストが選ばれるのは。

 もちろん、アニメやゲームにもCV:○○のような形で行われてはいる。しかし、今回のメディアミックスはそれより一歩踏み込んでいるのだ。


「どうする? そういう大人気Vが異世界に行ったり、婚約破棄されてざまあしたりする作品が出てきたら」

「せんせーはまるで、プロデューサーみたいに語りますね」

「まるで、じゃないぞ。実績ある筋書きに超人気タレントの共演だ。どうだ、巨人の来訪だろう?」

「ふん」


 水野のきらきらした目に向かって、竹宮は冷たい視線を向けた。


「残念ですけど、そんな思惑通りにいきませんよ。なぜって……」


 口角を上げてにいっと不敵に笑った。まるで、その背後には燃えるような闘志が沸き上がっているかのように。


「わたしの描く子が、もっと愛されるに決まっていますからね」


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