あー、聞かなかったことでお願いします
ハイ。祭りを楽しむ一般通過魔法使いこと私です。
ここ数日街を騒がせていた辻斬り騒動は無事に終結。なんとかお祭りも中止にならずに済み、むしろ酒を飲んで祝う理由が増えたとか喜ばれ、街の人たちの逞しさを実感したわけですが…なんということでしょう。私は今、胴上げされています。いや怖いわ!大の大人が少女囲んで胴上げって怖いよ!だって容赦なく空にぶん投げられてるもん!?
「こらあんたら!その子が困ってるでしょうが‼それとまだ祭りの最中よ!?サボってないで稼ぎなさいや!」
結局胴上げは体感5分くらいされていた気がする……うっぷ…三半規管が死んだかも。気持ち悪い…コレ絶対酔った。主婦のおば…お姉さんの鶴の一声がなければまだ続いていたかもしれないですね…。想像したら…余計吐き気がk…おえっ…
「リンちゃん、大丈夫?盛大に持ち上げられてたね。……顔色悪いよ?ちょっと座って休も?」
「うっ…ごめんね…せっかくの…お祭りなのに…」
「でもさっきのリンちゃんはかっこよかったよ!元気出して!」
ふふ…ニコラちゃんに褒められても喜べないんだ今…私の三半規管こんなに弱かったのか。知らなかったなぁ…あはは~。
グロッキーな私とその介護をやらされる羽目になってしまったニコラちゃんの前に人影が。ぐぬぬ…死んでもニコラちゃんは守る…ぞぉ…しかしその人影は聞き覚えのある声をしていた。
「アレー?誰かと思ったらリンじゃ~ん。それにニコラちゃんも~。二人とも元気?……じゃ、なさそーね。」
声をかけてきたのはなんと……光の竜王様にして私の友人でもあるティアムさんでした。まだ気分悪いので彼女の顔を見上げられませんが。
「ぁぁ。ティアム…さんですか…お久しぶり…でふ…」
「声小っさ!?ちょー、マジ、リンがこんなになるとか何があったん?」
「あー、その…さっきリンちゃんが怪しい人を捕まえて…」
「まさか毒盛られた!?ちょい待ち!今すぐ回復を…そのあとはあーしのだちに手ェ出したやつしばき倒して…」
「いえ!違うんです。怪しい人には無傷で勝ったんですけど……その…それを見ていた街の男の人たちが盛り上がって胴上げしちゃって。」
「……あーね?それでリンは酔っちゃったわけね。意外だわー。リンが酔うなんて。でもま、普段やられないことされたら酔ってもおかしくないか。それにこの街の人間って案外鍛えられてるっぽそーだし。それじゃああーしがどうこう出来ることはないか。」
こんな情けない姿をティアムさんに晒すことになろうとは思いませんでしたね。…ふぅ。座って休んでたら段々気持ち悪くなくなってきましたかね。もう少し休めば…また歩けそう。あ、顔上げても大丈夫そう。いつまでも下を向いて人と話すのは礼儀に欠けますからね。
「おっ?リンの顔色ちょい良くなってんねー。これならもう数分休めば復活するっしょ。」
「そうですね。そういえば、ティアムさんは旦那さんと赤ちゃんはどうしたんですか?」
「んー?ちょうどあーしらも休憩できそうな場所を探してたんだよねー。」
丁度その時、通りから黒髪の一見気弱そうに見える子連れの美男子が。バハディさんとグウィン君ですね。グウィン君はお元気そうです。……2,3年で成人間近になるん…でしたっけ?…求婚されても受ける気はないですが、まぁ、健やかに育ってくれると…お姉さんは嬉しいのですよ。
「ティア、探したぞ。」「だ~ぅ♪」
「ごめんねーバハ君、グウィンちゃーん。偶々リンとニコラちゃんを見かけてさー、話してたの。」
「そうだったか。…リン殿お久しぶりだ。…ん?顔色が悪いぞ。人酔いでもしたのか。」「う~?」
「ああ。お久しぶりです。いえ…さっき胴上げされまして…それで…。」
「……何があって胴上げされたか分からないが大変だったようだな。そうだ。普段から出かけるときは飴を持ち歩いているんだ。良かったら一つどうだろうか?舐めていれば気分も落ち着いてくるだろう。」
「は、はは…ありがたく頂戴します。まだ歩くには辛いので。」
「そうしてくれ。たくさんあるからな。」
あ、甘い。それもくどくどとした甘みじゃなくて何だろう。具体的には分からないけど何かのフルーツと…それにはちみつの合わさった爽やかでほんのり優しい味わいだ…それだけじゃなくて舐めている飴玉のいい匂いが口いっぱいに広がっていて…確かにこれは落ち着くかも。それに気持ち悪いのも引いているような…?材料が違うのかな。
…?なんか気分悪いのだけじゃなくて体の調子も良くなってきた気がするんですけど、普通の飴玉にそんな効果ありませんよね?
「おー?リンの顔色かなり良くなってんじゃん。」
「え?あ、ほんとだ。リンちゃんの顔、さっきまで真っ青に近かったのに、今はいつものリンちゃんだ!」「だ~♪」
「グウィンもリンお姉ちゃんが元気になって嬉しいでちゅね~」「きゃーう♪」
「……効いたようだな。」
「はい。とても体の調子が良くて。…ちなみにコレ、何を材料に使ってる聞いたら教えてもらえたり…」
「問題ないぞ。これは俺の故郷に群生している仙竜桃をベースに、クリムゾン・エルダービーの女王から譲ってもらったはちみつに加え、エグゼ草をブレンドしたものだ。エグゼ草は…確か人間たちの間では万能薬の…「すいません、そこまででいいです。」」
「む?」
「下手に材料聞いたら気軽に舐めることが出来なくなりそうなので…そこまでにしていただけると…もしかしたらそういうレアな素材を狙う輩に着け狙わるかもしれないので…」
「そうか。確かにどの素材も人間からすると希少な素材だった。今のは忘れてほしい。とにかく、疲れてる時などに舐めると良く効くんだ。」
「はい。とても助かりました。ありがとうございます、バハディさん。」
「いい、気にするな。俺としても、嫁さんの友人は他人ではないからな。それに息子もリン殿を気に入っている様子からして…将来、義理の娘になるかもしれないのだ。」
「あはは…け、検討はしますね?期待に添える回答が出せるかは別として…」
「うむ?楽しみにしているぞ。まだ時間はあるからな。ゆっくり考えてほしい。」
外堀が埋められないようにだけ気を付けよう。
誤字修正しました。「…ちなみにコレ、聞いたら何を材料に使ってる聞いても…」とかいうしょーもない誤字がありましたので。ここ多分寝る前にバーッと勢いで書いたので気付かなかったのでしょうきっと。
リンちゃんは仙竜桃もクリムゾンエルダービーも知りませんがエグゼ草が万能薬の材料と聞いて察しました。あとエグゼ草はエグゼ草ではなくエグゼ草ですんであしからず。




