ごめんなサイコロさなイデ
俺は自分が造った画期的なロボットに『サイコロイド』という名前をつけた。
コイツは体内に埋め込んだ2つのサイコロを振り、出た目の組み合わせを動力源とする。
まあ、凡人には意味がわからないだろう。正直、造った俺にもよくわかっていない。
見た目は完全に人間の女の子だ。違うところといえば『サイコロ』という単語に異常に反応するくらいだ。
顔は完全に俺の趣味でかわいくした。ウィッグはアシメのショートボブをえらんだ。うん、かわいい。造る前に妄想してたのよりもかわいい。
後は性格を決めるだけだ。俺は自分で作った表を広げると、サイコロを2つ、手の中で転がした。
表にはすべての組み合わせが書いてある。①①か⑥⑥が出れば天使、①⑤か⑤①が出れば素直で大人しい子。②⑤か⑤②ならツンデレ、②②か⑤⑤ならわがままっ子だ。さて、何が出るかな、何が出るかな……。天使出ますように……えいっ!
出たサイコロの目を見る。④④だった。
表に照らし合わせる。④④が出たら……
……サイコパス。
「おはようございます、博士」
「わあっ!?」
起動してもないのにサイコちゃんが起き上がったので、俺はびっくりして後ろへ転んだ。
「あっ! 大丈夫ですか、博士? ごめんなサイコロしてあげましょうか?」
「なっ、なんで包丁を手に持ってるんだ!?」
「だって包丁がいるでしょう? 腹かっさばいて、中にあるものをコロコロするには」
「わあっ! 振り上げるな! ごめんなサイコロさなイデ!」
サイコちゃんの動きがぴたりと止まった。
眼球がコロコロと回転している。体内のサイコロが回り出したのだ。俺の言葉の中にサイコロという単語を無理やり見つけ出して、これからどういう異常反応をするか、決めているのだ。
造った俺だから知っている。①①や⑥⑥が出たらにっこり笑ってナデナデしてくれる。②②や⑤⑤が出たらほっぺにチューしてくれる。
まさかまた④④が出ることはあるまい。2回続けて4のゾロ目など……と俺が思っていると、サイコちゃんの眼球がチーンと音を立てて、止まった。
⑦⑦だった。
「大当たり〜☆」
サイコちゃんはそう言うと口を開け、パカパカと動かしはじめた。
俺、何がしたかったんだろう。俺、何が造りたかったんだろう……。
俺は役に立たないものを造ってしまったことを激しく後悔しながら、男のバカさを噛み締めながら、でもこういう無駄なものっていいよね、人生に潤いを与えるよね、と何度も神様に向かって言い訳をした。