9.第1章サイドストーリー「成瀬結衣は眠らない」
私の名前は成瀬結衣。
「おはよう成瀬」
「高木君おはよう」
彼の名前は高木守道君。
わたしの幼馴染、とても面白い男の子。
わたしがいつも、高木君って呼んでる仲の良いお友達。
日曜日。
今日は高木君と朝から待ち合わせ。
2人で地元にある球場へ向かうバスを待ってます。
高木君と同じ幼馴染がもう1人。
中学校の野球部の試合がある日。
御所水通りのバス停から、球場行きのバスに乗ります。
今日、太陽君の応援に高木君と2人でやってきました。
野球場の入口に野球部の人達の姿。
あ、いました。
わたしたちが応援に来た朝日君の姿。
「よう結衣、おはようさん」
「おはよう、朝日君。はいどうぞ」
「悪いな、ありがたくいただく」
彼の名前は朝日太陽君。
高木君と一緒に、試合がある日は必ず応援に駆け付けます。
「ズルいぞ太陽、俺にもそのクッキーよこせよ」
「ははは、今日はダメだなシュドウ」
わたしが作ったクッキーは、2人が頑張る時のおまじないのようなもの。
「ちょっと高木君。わたしと高木君の分はちゃんと別にあります」
「マジか、早く言ってよそれ」
「も~」
「ははは」
2人とはいつもこんな感じで仲良くしてます。
とても、とても楽しいわたしの時間。
小学校3年生の時から、わたしたち3人はずっと一緒のクラス。
家で一緒に遊ぶ事も。
中学校に上がってからは、美術部に入りました。
高木君。
いつもわたしの描く絵はおかしいって言うんです。
ひどいと思いませんか?
わたしは3人で過ごせる時間をとても楽しく感じています。
球場の中に高木君と一緒に入ります。
バッターボックスの後ろ、バックネット裏の席に、高木君と並んで座ります。
マウンドにはピッチャーの朝日君の姿。
とても真剣な表情。
(カキ~ン)
キャ!?
打たれちゃった。
は~良かった。
無事にアウト。
頑張って、朝日君。
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朝日君がナイスピッチング。
ツーアウト、ランナー2塁。
ピンチの場面になると、とても胸がドキドキします。
やった!
良かった~。
無事にバッターを抑えてスリーアウト。
マウンドにいる太陽君がベンチへ戻っていきます。
「お~い太陽!ナイスピッチング!」
も~高木君ったら。
あんな大声で朝日君の応援するなんて。
周りの視線が集まります。
本当に恥ずかしい。
ほら。
正面の視線の先にいる朝日君。
わたしたちがいるのに気付いて手を振ってる。
もう。
朝日君も高木君も。
今は試合中なのに。
もう少し真面目に……。
あら?
朝日君、わたしたちがいる場所と違うところ見てた。
その朝日君の視線の先。
わたしは気になって、その視線の先を追ってしまいました。
その視線の先には。
とても美しくて。
とても綺麗な人。
朝日君が今試合をしている相手チームと試合がある時。
必ずあの人の姿を探してる。
もしかして、朝日君……。
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わたしには姉がいます。
2つ年上のお姉ちゃん。
「この前の英語のテスト、どうだった?」
「ばっちりです」
いつも明るいお姉ちゃんは、わたしの事をとても大事にしてくれます。
「あのねお姉ちゃん。あの人、お姉ちゃんといつも一緒にいる」
「ん?うん、一緒だよ。平安高校」
「そうなんだ……ねえ、お姉ちゃん」
「なに結衣ちゃん?」
「平安高校の推薦入学って、どれくらい内申点取れたら入れそう?」
お姉ちゃんの話を聞いて、わたしは平安高校に入る決意をしました。
今日はもう夜遅いけど、もう少し勉強を頑張ります。
椅子に座り。
机に教科書を広げます。
そして。
ノートを広げて。
勉強。
もう少しだけ。
頑張らないとです。