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61.第7章最終話「心は乙女」

(キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン)



「シュドウ君シュドウ君」

「なんだよ神宮司」

「ありがと教えてくれて」

「お前なら教えるまでも無かっただろあのテスト」

「えへへ」



 1限目、日本史の授業が終了する。

 事前にクラスメイトのほとんどが知っていた、毎年恒例で同じ問題が繰り返されるという噂のテスト問題。

 もしかすると来年も同じテストがあるのだろうか?

 江頭先生の考えている事はよく分からない。


 野球部の2年生、3年生の先輩たちから結城数馬が得ていた情報通り。

 そして俺の持つ未来ノートの1ページ目に映し出された問題と全く同じ。

 そう、紫色に映し出された答えと共に。


 おそらくクラスの全員が100点取れたはず。

 俺も当然自信があった。



伊黒(いぐろ)の山に始まって、松伊松伊と大隅山(おおくまやま)



 日本史が得意科目の結城数馬に教えてもらった、必殺の語呂合わせの魔法。



『伊藤博文 黒田清隆 山縣有朋 松方正義 伊藤博文 松方正義 伊藤博文 大隈重信 山縣有朋 伊藤博文』



 すべて筆記で答えさせる、太陽に言わせるところのエグいテスト問題。

 なんの予習も無しに、絶対に突破できない難問と言えるテスト。



「あんた」

「えっ?どうした岬?」

「ありがと、教えてくれて」

「お、おお」



 1限目の授業終わり。

 すぐに俺の席に近づいてきて礼を言いに来る岬れな。

 いつもツンツンしてるこの子に、突然お礼を言われるとドキリとさせられる。


 

「さあ守道君。次の授業に行こうか。君、神宮司さんだね」

「うん、誰?」

「結城数馬。守道君のお友達」

「シュドウ君のお友達?」

「そう、以後よろしく」

「うん」



 コミュ力が半端ない爽やかイケメンボーイ。

 結城数馬が一瞬で神宮司葵と知り合いになったようだ。

 お友達のお友達は、きっとこの子にとってお友達に違いない。



「神宮司さんは次の芸術の科目は何にしたんだい?」

「シュドウ君と一緒」

「なるほどね。じゃあ一緒に行こうか」

「うん」

「わたしらも次、行くっしょ」

「おう」



 数馬と岬、神宮司と4人で教室を移動する。

 1年生と2年生が入る第一校舎の1階へ向かう。 

 着いた先の入口には、木彫りの大きな表札が掲げられていた。



――美術室。



 大きな教室には、大きな作業台や様々な道具に工具。

 なにかの絵に、花瓶や壺のような物まで置かれていた。


 小学校や中学校で言うところの図工室のような教室。

 大きさが全然違う。

 教室の中にレンガ造りのかまどが見える。


 1限目の選択科目が終了し、引き続き2限目と3限目は芸術の時間になる。

 


「高木君」

「成瀬、それに太陽も」

「ようシュドウ、数馬も一緒か。どうだった2人とも日本史のテストは?」

「バッチリ」

「ちゃんと出来たよ朝日君」



 理系の選択科目を選んでいた太陽と成瀬が合流してくる。

 2人はSAクラスとS1クラスで普段は違う教室にいる親友。

 2限目と3限目の芸術の授業を同じ美術Ⅰで合わせていた。

 唯一3人が揃う貴重な授業の時間になりそうだ。



「結衣ちゃん~」

「葵さん」



 結衣ちゃんとか言ってるよ神宮司。

 成瀬もまんざらでもなさそう、むしろ喜んでるし。

 キャピキャピ言い出した、2人とも女の子してる。


 なんか成瀬と神宮司が超仲良くなってるのが目に見えて分かる。

 昨日も成瀬、神宮司の家に遊びに行ったとか言ってたな。

 どうなってんだよこの2人。

 


「先生来たわよ」

「凄い!髪の毛ピンクよ」



 嘘だろ!?

 美術の時間だよなこれから?

 どんな凄い先生来たんだよ。



「お待たせ~」

「キャ~」

「先生素敵~」



 本当だ、髪の毛、超おピンク。

 服は男子。

 凄い先生きた。

 


「やだ~みんなか・わ・い・い~」

「うそ~」

「信じらんない~」



 めっちゃ乙女の男子教師きた。

 お姉系だよお姉系。


 心は乙女、見た目は男子。

 女子たちから絶叫と悲鳴が上がる。


 ん?

 うわ。

 乙女教師こっちに近づいてくる。

 なんで?

 どうして?



「おはようございます御所水(ごしょみず)先生」

「昨日はありがとうございました御所水(ごしょみず)先生」

「あら~良いのよ結衣さん、そんなにあらたまらなくて。葵さんったら、相変わらず今日も可愛いわね」

「えへへ」



 なんだよ、なんだよ。

 なんで神宮司はおろか、成瀬まで何でこのおピンク先生の名前知ってるんだよ?


 凄い知り合いみたいなやりとり。

 なんだよ御所水(ごしょみず)先生って。


 突然現れた御所水先生という名の乙女教師。

 成瀬と神宮司2人が親しげにやりとりしてる姿を目の前にして驚く。


 もう乙女教師と成瀬たち3人の女子話(じょしばな)にまったくついていけない。

 太陽と数馬に近づく。

 



「シュドウ。あの先生、この辺じゃ有名人だぞ」

「えっ?太陽あの先生知ってたの?」

御所水流(ごしょみずながれ)って平安高校の美術の先生だよ。この近くに御所水通りってあるだろ」

「あるな。俺のバイト先も御所水通り店だよ」

「なんでも平安時代から続く華道の先生で、54代目だか何だかの家元らしいぜ」

「へ~僕知らなかったよ朝日君。さすが、地元の民はその辺詳しいね」

「まあな」



 太陽と数馬の話を聞くに、御所水先生ってこの辺だと相当な有名人らしい。

 俺はこの辺の地元の民だけど、そんな話全然知らなかったよ。


 乙女教師が成瀬と神宮司の女子2人と交流して、今度は違う女子とさも自然に女子話(じょしばな)を始めてる。

 絶対ヤバいよあの先生。

 先生と仲良くおしゃべりしていた成瀬と神宮司がこちらに合流してくる。



「成瀬、あの先生知り合いなのか?」

「え?う、うん。ちょっとね」

「マジか」

「シュドウ君シュドウ君」

「なんだよ光源氏」

「あの先生、わたしの先生」

「は?」



 なに言ってんだ神宮寺は?

 この子の片言の日本語は、一体なにが言いたいのかいつも全然分からない。


 入学してからまだわずかな時間しか時を過ごしてはいない。

 それにも関わらず、この平安高校。

 会う人会う人、どの人もキャラが濃すぎる。



「え~やだ~」

「うそ~先生もですか~」


 たくさんの人との出会いが待っていた、平安高校に入学してからの毎日。

 地元の公立高校に進学していたら、同じような出会いを果たして経験する事が出来ていたのだろうか?



(キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン)



「さあ皆さん、授業始めるわよ」


 美術の時間がスタートする。

 始まったばかりの高校生活。

 容赦なく進んでいく時間。


 俺の周囲が日々変化する。

 人間関係も大きく変わっていく。


 日々変わる未来ノートの1ページ目と同じように。

 俺が過ごす未来の時間は、一体どんな景色が待っているんだ?



 第7章<華道 家元 御所水流> ~完~



【ここまでの登場人物】



【主人公とその家族】



《主人公 高木守道たかぎもりみち

 平安高校S2クラスに所属。ある事がきっかけで未来に出題される問題が浮かび上がる不思議なノートを手に入れる。


高木紫穂たかぎしほ

 主人公の実の妹。ある理由から主人公と別居して暮らすことになる。兄を慕う心優しい妹。


蓮見詩織はすみしおり

 平安高校特別進学部に通う2年生。主人公の父、その再婚を予定する、ままははの一人娘。主人公を気遣う、心優しきお姉さん。



【平安高校1年生 特別進学部SAクラス】



朝日太陽あさひたいよう

 主人公の大親友。小学校時代からの幼馴染。平安高校特別進学部SAクラス1年生。スポーツ万能、成績優秀。中学では野球部に所属し、3年間エースとして活躍。活発で明るい性格の好青年。




【平安高校1年生 特別進学部S2クラス】



結城数馬ゆうきかずま

 平安高校特別進学部S2クラス1年生。主人公のクラスメイト。


《岬れな(みさきれな)》

 平安高校特別進学部S2クラス1年生。主人公のクラスメイト。



【平安高校1年生 特別進学部S1クラス】



神宮司葵じんぐうじあおい

 主人公と図書館で偶然知り合う。平安高校1年生、S1クラスに所属。『源氏物語』をこよなく愛する謎の美少女。


成瀬結衣なるせゆい

 主人公、朝日とは小学校時代からの幼馴染。平安高校特別進学部S1クラス1年生。秀才かつ学年でトップクラスの成績を誇る。



【平安高校 上級生】



神宮司楓じんぐうじかえで

 現代に現れた大和撫子。平安高校3年生。誰もが憧れる絶対的美少女。神宮司葵の姉。


成瀬真弓なるせまゆみ

 平安高校3年生。成瀬結衣の2つ上のお姉さん。主人公を小学生の頃から実の弟のように扱う。しっかりもののお姉さん。





【平安高校 教師・職員】



藤原宣孝ふじわらのぶたか

 平安高校特別進学部S2クラス、主人公のクラスの担任教師。教科、現代文を担当。


江頭中将えがしらちゅうじょう

 平安高校特別進学部日本史担任教師。


御所水流ごしょみずながれ

 華道 御所水流 第54代家元。謎のお姉系乙女男子教師。平安高校芸術科目、美術を担当。

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