53.第6章サイドストーリー「高木守道はくじけない」
中学3年生。
高木守道。
中学の卒業差し迫る、3月。
難関の私立高校の入試に合格した俺。
進学先は県下随一の進学校。
平安高校の超難関、特別進学部の入試を突破した。
学費を稼ぐためにバイトを始める事にした俺。
俺がバイト先にこのコンビニを選んだ理由。
それは店長夫婦の人柄だ。
来春の高校入学を控える俺は面接で店長に家庭の事情を説明。
コンビニの店長は、俺の家庭事情を察し、快く俺をコンビニに迎え入れてくれた。
アルバイト雑誌の求人広告。
食事付きのアルバイト先はたくさん募集されていた。
食費を節約できるバイト先は、居酒屋、ラーメン屋など飲食系が大半。
たまたま目に留まったコンビニの募集に応募。
家から歩いて通える場所も魅力的だった。
早朝に起床。
外は当然真っ暗闇。
アパートの電気をつける。
布団をしまうのは面倒なので放置。
時々アパートに帰ってきたら、布団シーツや枕カバーが綺麗に洗濯されている事がある。
俺のアパートの唯一の合鍵を持つのは、妹の紫穂、ただ1人。
俺が別居を決めて怒ってるくせに、たびたびアパートに来ては俺の生活の面倒を見てくれている。
本当に心優しい妹。
そんなズボラな俺だが、1つだけ、かかさない日課がある。
母さんに手を合わせて家を出る。
ただ、それだけ。
俺にとって、大事な日課。
これだけは絶対に欠かせない。
『守道さん』
あの頃の、母さんが生きていた頃の声が聞こえてくるような気がする。
『守道さん』
詩織姉さん。
母さんと同じように、家族のように俺の事を呼んでくれる詩織姉さん。
『一緒に住みませんか?』
心は一瞬揺らぐ。
優しい家族の温かさに触れていたいという欲求にかられる。
でも、今はまだ割り切れない。
おっと。
もう朝のバイトの時間。
これから走って行けばバイト先には十分間に合う。
3月の早朝。
2階のアパートの玄関の扉を開く。
地平線の向こうから、わずかに光る朝焼けの光が薄っすらと見えてくる
もうすぐ日の昇る。
夜空に輝く星が、段々と朝日の中に消えていく空の境目がハッキリと見える。
早朝バイトにもバイトをする俺だけが知ってる、大自然の綺麗な光景。
朝の空気はとても冷たいが、遠くまで澄んでいて景色がとても綺麗に見える。
何気なく生きていて、景色って綺麗だなって思える瞬間。
おっといけない。
バイトバイト。
貧乏暇なし。
今日もバイト頑張って、気持ちだけは前向きに頑張ろう。




