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44.第5章サイドストーリー「朝日太陽は裏切らない」

~~~~~朝日太陽視点~~~~~



「今日の練習はこれで終わる。解散」

「うっーーっす」



 平安高校野球部。

 さすが京都の名門。

 練習もハードだ。


 外はすっかり暗くなってしまった。

 明日も早朝から朝練が予定される。



「じゃあね朝日太陽君」

「数馬。そういやお前男子寮だったな」

「そうだよ。僕の部屋、寄ってくかい?」

「誰が行くかよ!気色悪い事言ってんじゃねえよ!」

「ははは。気が向いたらいつでもどうぞ。僕はいつでもウェルカムだよ」



 結城数馬。

 本当にキモイやつだよあいつは。

 地元の神奈川から、わざわざ平安高校の男子寮に入ってまで単身でここに住んでる。


 たしかにこの平安高校の野球部なら、甲子園への近道かも知れない。

 あいつの身体能力の高さは、中学生の頃から俺が一番よく知ってる。

 認めたくないが、あいつは俺にとって、この野球部の同級生の中でレギュラー争いをする最大のライバルとなるやつに違いねえ。


 

「太陽君お疲れ~」

「真弓先輩、うっす」

「今日は高木と勉強でしょ?」

「知ってたんですか先輩?」

「まあね~。赤点男の高木に勉強なんて、わたしますます太陽君のファンになっちゃいそう」

「本当、あの野郎どうしようもないやつなんすけど、俺の親友っすから」



 練習がようやく終わった。

 さて、今日は9時からあいつをしっかりシゴいてやるぜ。


 赤点なんか取りやがって、あの野郎。

 俺と結衣のいる高校に入りたい。

 今年の1月に言ったあいつの言葉、俺は今でも忘れねえ。

 本当に一般入試で合格しちまいやがって、相当無理させちまったに違いねえ。


 俺にもシュドウをそそのかした責任がある。

 どうせ入試が終わってバイトばっかで勉強サボったに違いねえ。

 今日は俺の得意科目で、あいつをしっかりシゴいてやる。


 平安高校から家に帰る道のり。

 俺の家の近くの公園にさしかかる。


 この公園は、シュドウとよく男同士の話をする時に使う公園。

 俺がよくトレーニングに使う小さな公園。


 小学1年生からの腐れ縁。

 シュドウとの腐れ縁。


 俺は絶対にあいつを裏切らない。

 俺は絶対にあいつを見捨てない。


 最高にお人好しで、絶対に俺を裏切らなかったシュドウの野郎。

 あれは小学生の時。

 この公園で俺とシュドウはキャッチボールをして遊んでた。


 俺が投げたボールが、公園の隣にある家に飛んでいく。

 そうそう、あの家のガラス。

 割っちまったな、俺の不注意。


 すぐに家の中にいる人が出てきて、俺とシュドウが並び立たされた。

 ものすごい怒られて、しまいにどっちが投げたボールなんだと家にいたオジサンがブチ切れて。


 俺の近所の家という事もあって。

 俺は親にバレるのが怖くて黙り込んでしまった。

 そしたらシュドウのやつ。



『俺が投げました』

『お前か!このバカモンが!』



 あの時、俺が投げたボールで割ってしまったガラス。

 当然だが今はもう直ってる。

 今なら分かるが、それなりに金もかかったはず。



『ごめんなさい』



 俺が投げたボールでガラスを割ったのに。

 怖くてごめんなさいの一言が言えなかった俺の代わりに。

 俺はシュドウに謝らせちまった。


 子供のやった事だと、最後にはおとがめ無く公園の隣のオジサンは家の中に戻って行った。

 メチャメチャ怒られた。

 シュドウが謝ってくれたおかげで、事なきをえた。



『おい高木。俺が投げて割ったんだぞ』

『俺も一緒に遊んでたんだからいいんだよあれで』



 シュドウの野郎、本当にあいつはお人好しだ。

 俺が投げて割ったなんて、一言も言いやしなかった。


 あの赤点クソ野郎。

 後でしっかりシゴいてやるぜ。


 小学生の時に俺が投げてガラスを割ってしまった家を通り過ぎる。

 俺の家が見えてきた。


 おっ?

 2階の俺の部屋の電気がついてるな。

 シュドウの野郎、ちゃんと勉強してるに違いない。


 あの時俺を裏切らなかったシュドウ。

 あの頃から俺は、シュドウに絶対の信頼を置くようになっていた。

 あいつは俺を裏切らない。


 あいつは俺の、最高の親友だ。

 わざわざ俺のいる平安高校に入って、赤点取って苦しんでるあいつ、本当にバカな野郎だ。


 誰が来月の中間テストで、赤点2発目取らせるかよ。

 今日は日付が変わるまで、勉強であいつをみっちりとシゴいてやるぜ。

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