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20.第2章サイドストーリー「3人の絆は終わらない」

 3月21日。

 朝の気温はまだ低く、大分肌寒い。



「来たぜシュドウ、ひらかたパーク」

「やべ~よ」

「ふふっ。高木君さっきからやべ~よばっかり」



 京都市営地下鉄に乗り、遊園地に向かう3人。

 向かう先はひらかたパーク、通称ひらぱー。

 本当は離れ離れになる運命だった俺たち3人の関係に奇跡が訪れる。


 平安高校、特別進学部一般入試の合格。

 30人の枠に、1000人を超える受験生が挑んだ高い高いハードルを突破。

 中学時代の成績からは考えられない快挙。

 その奇跡が、ちぎれかけた俺たち3人の絆を繋ぎ止めた。



 俺たち3人の卒業旅行。

 中学生最後の卒業旅行。


 普通の友達同士なら、とっくの昔に終わっていたであろう関係。

 俺たちにとって、これは卒業旅行であって、卒業旅行ではない。


 仲直りの新しい高校生活をここからスタートさせる。

 入試に合格したら行きたいと。

 3人でどこかへ遊びに行きたいと。

 俺が2人に願った夢。

 叶えてくれた、優しい親友の2人。



『おいシュドウ。無料の遊園地のチケットが手に入ったぞ』

『無料!?マジか。ネズミーか?』

『ネズミーが無料のチケットくばるわけねえだろ』

『ふふっ』



 太陽の手には3枚の遊園地の切符。


 太陽と成瀬。

 そして俺の3人分。

 その3枚のチケットの中に、俺も含まれている事が、何よりも嬉しかった。


 枚方公園駅を降りて徒歩3分。

 遊園地の入口のゲート。

 たくさんの人が入場ゲートに並んでいる。

 

 遊園地の中からは、楽しそうな人の声があたりに響く。

 


(キャーーーーーーー)



 

 なんだよ。  

 なんなんだよこのでっかいジェットコースターは!




「凄~い」

「あれ乗るつもりか成瀬!?」

「シュドウ、なに今さらビビってるんだ?」



 俺、ジェットコースター超苦手。

 なんだよなんだよ2人とも。

 成瀬まで超ニコニコしてる。



「ほら、早く行くぞシュドウ」

「俺、下で見てるから2人で乗ってきてよ」

「ダメだよ高木君~」

「お前が今日は主役なんだよ」

「俺ジェットコースター苦手なんだって」

「ははは」



 無料の遊園地チケットには裏があった。

 俺は大のジェットコースター恐怖症。

 そんな俺が、なんでこんなところに。





(ガラガラガラガラ・・・バァァァァァァーーーーー)



「キャーーー」

「うおぉぉぉーーー」

「………」







 意識が……。






「おい、しっかりしろシュドウ」

「あれ、ギルドは?」

「しっかりしてよ高木君~」



 一瞬お城のようなものが見えたけど、どうやらここはまだ遊園地らしい。



「わたし、これ好きやわ~」

「嘘だろ成瀬!?」

「ははは」



 知らなかった。

 成瀬と遊園地なんか来た事なかった。

 可愛い女の子はジェットコースター好きなのか?



「さあシュドウ。訓練を積めば苦手は克服できる」

「先生みたいな事言ってんじゃないよ太陽」

「ふふ」


 

 2人とも2回目乗る気満々。

 俺は体のフシブシが痛いくなってきた。



「もうやめとこうぜ2人とも。こればっか乗ってたら、首、絶対に痛めるって!」

「ははは、なに言ってんだよシュドウ」

「そうだよ高木君。そんな事あるわけないでしょ?」



 太陽は相変わらずだが。

 成瀬のテンションが高い。


 いつもは主張しない成瀬が、今日は2回も3回もと、何度も俺を異世界に転生させようとする。

 なんかとても楽しそう。

 学校でグジグジしてた成瀬とは大違いだ。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「はい、お弁当~」

「やったなシュドウ。無料だぞ無料」

「料理人が良いから、絶対うまいぜこれ」



 一度遊園地を出て、外にあるフリースペースで昼食を取る。

 成瀬はわざわざお弁当を作って持ってきてくれた。


 

『わたし、お弁当作ってくね』

『マジか成瀬』

『コンビニの売れ残りは持ってこないで下さい』

『ラジャー』



 コンビニで売れ残った弁当を食べているのが成瀬にバレてる。

 合格が決まってから平安高校に入学する費用を稼ぐためにバイトを始めた。


 今日のお弁当は塩分控えめ。

 成瀬が作ってくれたというだけで、このお弁当箱は宝箱にしか俺には見えない。



「太陽、そんなに食うのかよお前!?」

「今日は朝早かったからな~」

「ふふっ、たくさん炊いたん食べれるだけどうぞ」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「あの巨人、デカかったなシュドウ」

「ああ。指令の席があると思わなかったよ、結構リアル」

「帰れ!」

「似てね~」

「ふふっ」



 地平線に陽が落ちていく。

 夕方には帰宅の途につく。

 家へ帰る時間。

 駅に向かって歩き出す3人。



「見て~綺麗な夕日」

「ホンマやな」

「やべ~よ」

「ふふっ」


 まいはまパークの観覧車が夕日に照らされ、赤く、赤く燃えていた。


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