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160.第17章サイドストーリー「岬れなは癒されたい」

 9月、暑い日差しが照りつける夏日。

 お昼休憩の時間、第一校舎1階旧図書館に入る2人の女子。

 手さげ袋にはパンダのマーク、それぞれの袋に入る小さなお弁当箱。



「うっーす」

「失礼します」

「れなちゃん~花ちゃん~いらっしゃ~い」


  

 1年生S2クラスパンダ研究部部員、岬れな、末摘花。

 部室内には写真、論文、世界地図、ありとあらゆるパンダに関する資料が展示されていた。

 その部室の一角には、入学式オリエンテーション用に部長がこしらえたパンダスーツが飾られる。


 部室に入るとすぐに部長席。

 ハイスペックのパソコンとモニター画面に、双子のパンダの赤ちゃんが映し出されていた。



「2人とも見て見て~わたしの赤ちゃん~」



(ホワワ~ン)



「可愛い」

「可愛い~」



 上野動物園で生まれた双子パンダの赤ちゃん、南夕子自称わたしの赤ちゃん、名前はまだない。

 女子3人でモニターに釘付けになる。

 部長席のパンダ視聴モニターを通り過ぎ、冷房直下、涼しい風が当たる長椅子まで到着。



「花、こっち座んな」

「う、うん」



 末摘花に隣に座るように言うと、素直にそこへ座る末摘花。

 机にお弁当箱を広げる女子2人。



「岬さんのお弁当美味しそう~」

「うちが作った」

「玉子焼き上手~」

「一つ花にあげる」

「えっ、でも……」

「遠慮するなし」

「う、うん……嬉しい、ありがとう」



(ホワワ~ン)



 末摘花の笑顔に癒される岬れな、本日の玉子焼きの出来栄えやいかに。



「美味しい~」

「そう?」

「岬さん綺麗だし、お料理も上手だし、うらやましいな」

「早く食べな」

「う、うん」



 岬の口元が緩む。

 末摘花の小さなお弁当箱が、ゆっくり時間をかけて無くなっていく。

 2人のお弁当が無くなる頃、お菓子の家から魔女がやってくる。



「れなちゃん~花ちゃん~今日のおやつ~」

「うっす」

「わ~」



 パンダ研究部部長、南夕子の座る部長席の引き出しから絶え間なく供給される鬼カロリー。

 癒しのお昼休憩、岬れな安息のオアシス。

 部室の外から何やら足音が聞こえてる。



「南部長、お疲れ様です」

「こんにちは」

「いらっしゃ~い」



 パンダ研究部部員、高木守道、結城数馬。

 癒しの空間を一瞬で破壊するエアークラッシャーの余計な一言。



「おい岬、昼から何お菓子食べてんだよ」

「うるさいし」

「太るぞ」



(ブチッ)


 

「うるさいっつってんでしょ!!」



(バァァーーン!!)



「ひぃぃ」

「守道君、早く謝って」


 

 岬れなの怒りが一瞬で頂点に達する。



「ちょっとそのアホヅラ貸せや」

「かしこまりました」

「ははっ、いってらっしゃい」



 今来たばかりの男、部室の外へ連れていかれる。

 パンダ研究部、いつもの光景を見送る末摘花と結城数馬。



「高木君大丈夫かな」

「面白いねあの2人」



 部室の外へ出ていく、エアークラッシャーの言い訳。



「許してくれよ岬~」

「はよこっちこい」

「悪かったって~」



 背中の後ろの男の声に岬の口元が緩む。

 平安高校のお昼休憩は、まだ始まったばかり。

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