表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

121/173

121.第13章サイドストーリー「朝日太陽は謝りたい」

「すまん数馬!!」

「もう頭を上げてよ朝日君」

「悪かった、俺が悪かった、全部俺のせいだ!」

「僕が内角をサバき損ねた、ただそれだけの話さ」



 野球部の部室。

 死球による負傷。

 結城数馬の右腕はギプスで固定され、包帯が巻かれる。

 会うなり土下座をして謝り始める朝日太陽。



「投げたのは俺なんだぞ!」

「打ったのは僕だ。僕がヘマをした」

「そんなわけねえだろ数馬!」



 いつしか、お互い自分の方こそ悪いと口論に発展。

 野球部の部室内で言い争いをする2人の1年生。


 それぞれの1年生の後ろに立つ、3年生のマネージャー。

 朝日太陽の背中に立つ、神宮司楓。



「朝日君、落ち着きなさい」

「う、うっす」



 消沈。

 神宮司楓の一言で黙り込む朝日太陽。



「続けて」

「はい……数馬。怪我をさせたのは俺のせいだ。それはハッキリと言わせてもらう、俺が悪かった」



 冷静になった朝日太陽が詫びを入れる。

 朝日太陽の背中に立ち、その姿を見た神宮司楓。

 視線の先、結城数馬の背中に立つ成瀬真弓とうなずき合う。



「結城君」

「はい」



 成瀬真弓。

 結城数馬の背中から一言。

 はいと返事をする結城数馬。

 数馬の口が開く。



「朝日君、1つ君に頼みがある」

「なんだよ、俺に出来る事なら何でも言ってくれ」



 口論していた1年生2人が、落ち着いて話を始める。



「続けて欲しい、野球」

「数馬……」

「今年の夏はもう無理だけど、僕は来年必ず戻ってくるよ」



 結城数馬の右腕のギプス。

 夏の地方大会には、間に合わない。



「甲子園、まだ諦めないで」

「数馬」

「チャンスはあるよ、君なら絶対」



 1年生の出場機会そのものが厳しいハードル。

 それを分かった上で託す、友への願い。



「僕の分も頼んだよ」

「か、か、かずまーーっ!!」

「ちょっと朝日君!?折れてるから抱きつかないの!」



 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「行きましょう朝日君」

「楓先輩……うっす」



 話が終わり、先に部室を後にする3年生の神宮司楓、1年生の朝日太陽。

 部室の中に残る、3年生の成瀬真弓、1年生で怪我をした結城数馬。



「ちょっと結城。あんたちょっと甘すぎるんじゃないの?」

「ははっ、これは手厳しい」

「もっと言ってやんなさいよ。やられ損でしょ?」

「いえ、そうでもありません」



 神宮司楓と朝日太陽に遅れて、成瀬真弓と結城数馬が部室の外へ出る。



「あんたは病院」

「はい」

「お母さんたちに怒られたでしょ?」

「はい」

「わたしの言う事、ちゃんと聞く」

「はい」



(ガチャ)



 部室を出る2人。

 常勝園グラウンドで練習をする球児たちの声。



(「イチ!ニ!サン!シ!」)

(「ゴー!ロク!シチ!ハチ!」)

(「ニー!ニー!サン!シ!」)

(「ゴー!ロク!シチ!ハチ!」)



 同じ部の球児たちが練習する光景を眺める、結城数馬。



「結城、腕治るまで我慢だよ」

「分かってます」

「悔しい?」

「かなり」

「つらい?」

「平気です。あなたが一緒なら」


 

 練習を続ける球児たちを背に、グラウンドを後にする2人。

 地方大会がある7月まで残り2カ月を切る。

 ベンチ入りを目指す、球児たちの熾烈な競争が続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ