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12.「全力予習してテストに臨みたい」

 平安高校の図書館に到着。

 学生証をタッチして防犯用ゲートを通過。

 

 未来ノートに表示された唯一の問題。

 それはおそらく明日実施される、学力テストの古文の問題に違いない。


 未来の問題がノートに出る。

 それを事前に調べる。

 テストで良い点を取る。

 中学3年生の時のこのループが通用しなくなった。


 俺は焦っていた。

 万能では無かった未来ノート。


 なんで学力テストの問題がすべて表示されなくなった?

 なんで古文の問題だけ突然出現した?


 理由が分からない。

 思い当たる事も何一つない。


 多分古文の問題だと思われる、未来ノートに表示された問題だけでも調べておきたい。

 未来ノートに表示された古文の問題は、ほんの数問程度。

 それを俺が調べたところで、一体どれだけのアドバンテージと言える?

 

 平安高校の特別進学部への合格が決まって、入学できた事ですっかり安心し切っていた。

 油断していた。


 なにやってんだ俺。

 成瀬はせっかく俺を勉強に誘ってくれたのに。


 なに断ってんだよ俺。

 成瀬と一緒の高校に居続けたいから、成瀬の誘いを断ってしまった。


 明日の実力テストでいきなり赤点を取る訳にはいかない。

 俺は未来ノートに映し出された未来の問題を全力で調べないといけない。

 

 未来の問題を全力で予習するしかない。

 成瀬が一緒だと予習できなくなる。


 ただ未来ノートはほぼ真っ白。

 1ページ目にちょろっと古文の問題出てるだけだ。

 入試の時と今と、一体何が違うって言うんだよ。


 まさか。



――大きな願いを叶えたから。ノートの力が失われた?



 嘘だろ。

 願いを叶えたら使えなくなるのかよこのノート。


 ふざけるな。

 ふざけるなよ俺。

 なに万能万全のチートアイテムだと勘違いしてたんだよ俺。


 未来ノートは万能じゃなかった。

 今突き付けられたその事実。

 頼りにしてたからこんな事になる。


 学力テストは明日。

 もしこの後すぐにいきなり明日の問題が、5科目全教科ノートに表示されたところで調べる時間はない。


 この未来ノートには答えが載っていない。

 英語の問題だって、ちゃんと覚えていない単語のスペルがたくさんある。

 正確に一字一句覚えるのはたった1日だけでは不可能だ。


 時間がない。

 とにかく時間がない。


 詩織姉さんだから、初見で難問の入試問題をスラスラ解く事が出来た。

 模範解答が先に見えるわけではない未来ノート。

 未来の問題だけ先に見える未来ノート。


 テストが平均点以下の俺が未来のテストが見えたところで訳が分からず、ただの宝の持ち腐れ。

 今日は入学初日だってのに。

 初日にいきなり地獄に突き落とされた。


 俺の最後の希望は未来ノートに唯一表示されている、1ページ目の学力テスト、古文の問題と思われるこの問題。


 さっそく解こう。

 1点でも多く取らないと。

 赤点ってそもそも何点の事だ?


 500点満点だから。

 7割、いや、8割くらい取れるやつは、わんさかいるかも知れない。


 単純に6割取れるやつが多いと考えて。

 300点が平均点だとして。


 みんな6割取ったとして。

 赤点ってその半分だろ?


 えっと300点の半分。

 150点。

 つまり、5科目で150点以下を取れば、赤点1回。


 英単語の和訳すら怪しい俺。

 とにもかくにも入試問題は、覚える時間が1か月もあった。


 しかもまったく同じ問題だけ1か月ひたすら答えだけ暗記してなんとか合格できた。

 学力テストどうするんだよ本当に。

 

 8割くらい得点するクラスメイトが続出すれば。

 その分赤点である平均点のラインも上がってしまう。


 せめてみんなが悪い点数を取れば……。

 俺、なに人が悪い点数取るの期待してんだよ。

 最低かよ俺。


 とにかく分かってる問題だけでもなんとかしないと。

 早く調べて、あとは普通に勉強するしか対策他にないだろ?


 早く自習できる場所に移動しよう。


 それにしてもこの図書館。

 ホテルか美術館かって見間違えるほど綺麗な図書館。


 俺の通ってた超古い開設40周年の中央図書館とは雲泥の差。

 新築のような木の匂いがプンプン漂う。


 入り口ゲートなにやら貼り紙。



――新図書館が新しくなりました――



 この図書館、今年リニューアルオープンだったのか。


 あと1年早く生まれていたら、俺はこのゲートをくぐる事なく中央図書館へ直行するところだった。

 そういえば詩織姉さん言ってたな。

 耐震工事中でこの図書館が使えないから、俺の勉強してる中央図書館に本を借りに来てたのか。


 わざわざ遠回りしてあんな古い中央図書館まで。

 わざわざ遠回りして。


 あれ?



――旧図書館は以後閉館となります――



 さっき図書館の貼り紙見たけど。

 この新図書館が閉まってる間、旧図書館が開いてたみたい。


 詩織姉さん。

 なんで平安高校にある、耐震工事中に開いてた旧図書館に行かなかった?


 俺が姉さんなら。

 旧図書館で本を借りるよな普通。


 おかしいな。 

 なんでだろ。


 でもあれで助かった。

 そうでないと姉さんが中央図書館寄ってくれなかったら。

 俺は今ここにはいなかった。

 

 今日はまだ平安高校に入学して初日。

 マジかよ俺。

 なに初日でいきなり詰んでるんだよ。

 バカ過ぎるだろ俺。


 赤点だけはヤバイ早く調べるぞ。

 テストの1点が運命を分けるかも知れない。


 学力テストの平均点が何点なのかも分からない。

 何度も考えるが1点でも多く得点するしか、俺がこの特別進学部で生き残るすべは他にない。


 なんだよこの入学初日からまったく余裕のない状況。

 俺は焦る気持ちを覚えながら、とにかく図書館の中を見て回る。

 そこら中に自習するための机や椅子が備え付けられている。


 この図書館には総合普通科に通う多くの生徒も利用している。

  最新の雑誌や漫画も置かれたコーナー。

 最新映画から名作映画のDVDをカップル2人で視聴してる奴らまでいる。


 何をしてるんだあいつらは?

 俺にはタイタニックを鑑賞している時間は1秒もないよ。


 俺だって本当は成瀬と一緒に映画を見たい。

 ダメだダメだ。

 タイタニック何時間あるんだよ、ふざけるなよ。


 図書館の閉館時間は夜7時。

 未来ノートに出てる、本当少しの問題さっさと調べて、明日に備えて勉強する。

 数学、それから英語、それから理科と、ああもう。

 全部だよ全部。


 成瀬と一緒に楽しく図書館で勉強?

 絶対無理だ。


 成瀬の事はとにかく忘れろ。

 明日習ってもいない古文の問題が解けるのか?

 早く調べるぞ。


 ここは勉強できそうないい場所だな。

 集団自習スペース、ここに決めた。


 上級生も混じって程よく席も埋まってる。

 この集団に混ざり混んで自習してれば、俺だけ未来ノートに表示された問題の予習をしていても分かりはしない。


 辞書や問題集も近くの棚にある。

 共用ではあるがパソコンも備え付け、インターネットまで使えるのか。

 

 ついでにここで英語の勉強もして帰ろう。

 電子辞書はおろか、平安高校の入学要項に購入推薦されていたパソコンすら高額で買えなかった貧乏学生の俺。


 待てよ。

 パソコンが使える。

 これは凄く便利なアイテムだ。


 未来ノートの未来の問題を調べる方法。

 書籍以外に、ネットで調べる方法があった。


 ただ、肝心の問題。

 たった数問程度しか調べるものがない。

 

 意味あるのかこの作業に?

 問題がまったく消えて、万能では無かった未来ノートに頼り過ぎていた事にあらためて気づかされた。


 未来ノートの問題は出たり出なかったりする。

 知らなかった。

 経験したことがない事態。


 平安高校の入試をただ解答の丸暗記だけで突破した俺。

 身の丈を遥かに超える進学校の恐るべき競争社会。


 弱肉強食。

 赤点2連発で、俺は総合普通科に真っ逆さまに転落する。


 何度も何度も最悪の事態を考える。

 今日は始業式の初日。

 マジかよ今の俺。

 超やばい事態じゃん。


 こんな事考えてるだけで時間がどんどん過ぎていく。

 もう考えてる余裕はまったくない。


 早く未来ノートに表示されてる問題を調べて。

 さっさと数学と英語の問題集の1冊でも終わらせるしかないだろ。


 さあ、パソコンの席座ったぞ。

 もちろんここに座ったのは、未来ノートの問題を調べるため。

 未来ノートに映し出された語群選択問題は全部で5問。

 こんな程度の未来の問題分かってたところで、俺、この学校でやっていけるのかよ?


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