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109.「ドドド怒怒」

「おい、なにやってんだよディフェンス!」

「言い争っててもしょうがないだろ」

「潰すぞ1年、お前ら気持ち切り替えろ」

「おお!!」



 怒ってる。



「さっさとボールこっち寄こせ1年」

「は、はい」



 3年生が。



「あと何分?」

「残り13分」

「2点取るぞ、それで終わる」

「1年生相手にPK戦なんかやらせんじゃねえぞ」

「おお!!」



 3年生が、超怒ってる。


 ヤバい。

 マジでキレてる3年生。

 超ぶっ殺すって殺気バンバン出してんよ。


 氏家翔馬の先制点で、完全アウェーだった俺たち1年生のS2クラスに3年生の獅子たちが襲い掛かろうとしてる。


 ヤバいよ。

 いくら未来の答えが分かってるからって、弾丸シュートがいきなり飛んできたら止めきれない。


 ホイッスルが鳴ったら試合再開。

 最初の先制点は、俺がシュート2本も止めるなんて思っていなかった3年生たちが油断してたのがきっかけ。


 氏家翔馬、予想外のドリブル左サイド突破。

 さらに予想外の結城数馬がいる右へのクロス。


 さらにさらに結城数馬の絶妙なセンタリング。

 とどめはサッカー部の氏家翔馬の一発。

 絶対3年生油断してたはず。


 もうここでしか点取れないっていう最初のポイントでもぎ取った1点。

 俺が失点したらもう取り返せる保証は無い。


 相手が普通じゃない。

 アスリート集団。

 スポーツ推薦組の3年生SAクラスのスーパーマンたちだから。



「守道君」

「数馬!?どうしてここに?フォワードだろお前?」

「翔馬君と話してきた。残り13分守り抜こうって。僕もディフェンスに入る」

「マジか」



 サッカー部の氏家翔馬が立案、作戦を変えてきた。


 数馬が俺のいるゴールに戻ってくるまでに、ミッドフィルダー4人にフォーメーション変更を指示。

 さらにディフェンダー4人にも指示。


 最終防衛ラインのディフェンスラインを5人にして、フォワードは翔馬と数馬のツートップから氏家翔馬のワントップに変更。


 代わりに結城数馬がディフェンスラインに加わる1-4-5のフォーメーションに変更するS2クラス。

 3年生の顔を見て見ろ、ぶっ殺すぞ1年生って殺気ムンムン。

 

 そういえば相棒である藍色の未来ノート……残り13分であと6発もシュート飛んでくるのか!?

 ウソだろウソだろ。

 6発中1発でもゴールを許したら、点取り返すのは3年生相手にかなり厳しい。

 

 そうか。

 サッカー部の氏家翔馬がそれを一番よく分かってた。

 だからこの1点を守り抜く、防御シフトの作戦に変更してきたんだ。

 

 数馬も意図をすぐに理解して、S2の男子にコソコソとフォーメーションの変更を伝達、瞬時に体制を整えてきた。

 頭が良い、さすがうちのスター選手2人。


 なんで数馬が俺のいるゴールまで走ってくるんだろうと不思議に見ていた俺。

 一番よく分かってなかったのは、ゴールネット前でボーっと見てた俺だけだった。


 氏家翔馬がディフェンスラインを信じて、ワントップで敵陣のど真ん中に1人立ってる。

 藤原先生からお前がチームを引っ張れって言われて、翔馬の心に火がついたに違いない。


 カッコいいぞ翔馬に比べて俺、こんなシチュエーションで失点したら超カッコ悪い。

 だが俺には、力強い友がいる。 



「僕が一緒にゴールを守る」

「頼むよ数馬」



 超イケメン爽やかボーイの結城数馬が、爽やかに笑顔を振りまきながらディフェンダーに加わる。

 嬉しい、ホッとするたくましい男の背中。

 ザルディフェンダー4人の背中を見てもまったく何も感じなくなっていたのに。

 たくましい男の背中。


 何度も突破される最終防衛ライン。

 ザルディフェンスラインの4人に、頼もしいあいつの背中、結城数馬が俺の真ん前に5人目として加わってくれる。


 心強い。

 なんて心強いんだ。

 頼むよ数馬。


 

(ピー―!!)

(「キャーー」)

(「お願い点入れてーー」)



 試合開始と共に大歓声が上がる。

 お願いするなよ、3年生から弾丸シュート俺のゴールに飛んできちゃうだろ。



「潰すぞ!!」

「おお!!」



 潰される。

 3年生に潰される。


 超怒ってる。

 当然。

 1年生のガリ勉集団に、インターハイだか何だか知らないアスリート集団3年生が先制点を奪取された屈辱。


 

「あと12分!」

「押し込め!!」



 押し込まれる。

 まだ12分もあるのかよ。


 うわ!?

 もうこっちの最終防衛ラインまで到達された!?

 突撃してくる3年生に、1人の男子が果敢に挑む。



(「結城君ーー!」)

(「キャーー!」)



 ディフェンダーの数馬が3年生に張り付いた!

 凄い。

 3年男子のドリブルコース読み切って俺へのシュートを防いでくれてる。

 素敵過ぎる、お前は男の中の男だ数馬。



「皆さん!!パスを防いで!!」

「おい、藤原先生見てるぞ!」

「おう!」



 すげえ。

 藤原先生がピッチの脇、タッチラインギリギリのところからこっちに大声出してる。

 先生のあんな大きな声を聞いたことが無い。


 触発された両翼のディフェンダー4人が、4枚に増えた3年生のフォワードに突撃。

 うわっ、体格差があり過ぎて弾かれてこけてんじゃん。

 ファウルとか無いのかよ。

 

 立ち上がってまたマークしてるよあいつ、俺のクラスメイト。

 あいつ、3年に手で押されてこけたのに、立ち上がってまたパスの進路塞いでる。

 あんな動きが悪かったS2のディフェンスラインに気迫が感じられる。


 みんなが数馬の気迫に触発された。

 誰にもパスさせまいと、5人のディフェンスがオフサイドラインを守りながら3年生の進路を塞いでいる。



「ちっ、ウザいんだよ」

「うわっ!?」



(ピピピピピ!)

(「ああーー」)



 フラストレーションが溜まったのか、3年生のフォワードが1年のディフェンダーをまた突き倒した。

 これはさすがにファウルが取られる。

 俺たちの攻撃。

 すかさず数馬がボールを蹴る。



「翔馬君!」



(バンッ!)



 上手すぎる!?

 数馬超サッカー上手い。


 数馬の蹴ったボールがハーフライン越えて着弾する。

 相手チームのディフェンダーはたったの2人。


 絶妙な場所にボールを蹴って、そこへワントップの氏家翔馬がボールに追いつく。



(「キャーー」)

(「戻ってーー」)



 ギャラリーから悲鳴がこだまする。

 校庭に叫び声が響き渡る。

 いつの間にか俺たちS2対3年生SAクラスのギャラリー、メチャメチャ観戦者増えてんじゃん。


 隣の試合はギャラリーがスカスカ。

 明らかに注目されてる。

 あるかも知れない大番狂わせに、女子も男子も一目見ようと群がってきた。



(「氏家君ーー!」)

(「決めてーー!!」)

(「キャーー!!」)



 ペナルティーエリアにワントップで侵入する氏家翔馬。

 相手ゴールネット側にいる俺たちの応援団、S2の女子たちがお祭り騒ぎで悲鳴をキャーキャーあげてる。

 大事なカウンター攻撃。

 頼むよ翔馬。

 



 ~~~~~氏家翔馬視点~~~~~




 はぁはぁ。

 数馬ナイスパス。


 クソっ。

 ディフェンダー2人おるで。


 ゴールキーパー、前に出てきおった!

 それならこれや。



(バスッ!)



 氏家翔馬のループシュートが弧を描いて飛んでいく。

 ふわりと浮かせたボールが、前に出てきたゴールキーパーの頭上を越えてゴールへ向かって落ちていく。



(ガンッ!)



(「ああーー」)

(「危ないーー」)



 ゴール上のクロスバーに当たり、ボールは惜しくも外へ弾かれる。



「なにやってんだよ!1年生だぞ相手は!」

「良いから早くボール回せ」

「あと何分ある?」



(「あと6分ーー!」)

(「6分!あと6分!」)



「早くしろ!」



(バシッ!)



 ギャラリーが残り時間を悲鳴交じりにピッチに伝えてくる。

 あと6分。

 3年生、超怒ってんよ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





(「あと6分ーー!」)

(「6分!あと6分!」)



 1年生特別進学部S2クラス対、3年生特別進学部SAクラスの戦いは1-0のまま、試合終了まであと6分を残すばかり。


 絶対の勝利が約束されていたはずのカードの組み合わせ。

 まさかの大番狂わせに、ピッチの外、辺り一帯では悲鳴のような声が響き渡っていた。


 3年生S1クラス女子の集団の中で、ピッチの様子を見守る女子の姿。

 神宮司楓、成瀬真弓。



「楓~凄い事になっちゃってるわよね。ドキドキしちゃって、わたしもう見てられないわよ」

「真弓、もうこんな試合は2度と見られないわよ」

「分かってるわよ。高木あんな頑張っちゃって信じられない~」

「ふふっ、そうね。ドキドキしちゃうわね本当」

「楓あんたどっちの味方なのよ~」



 成瀬真弓の隣に神宮司楓の姿。

 その姉は、妹を背中から抱いて観戦していた。


 背中から抱きしめられる神宮司葵。

 上を見上げると、ピッチに視線を送る姉の真剣な表情が見える。



「葵ちゃん。もうここでしか見られない、男の子たちの大事な試合よ」

「シュドウ君頑張ってる」

「そうね葵ちゃん、よく見ていなさい」

「うん」



 神宮司姉妹の視線の先。

 ピッチの上で激しく動き回る男子たちの姿。

 そして、1年生の陣地に襲い掛かる3年生男子たちの背中が視界に映る。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「パスこっち!」

「急げ!時間が無いぞ!」



 3年生が超あせってる。

 顔がマジでヤバい、全員ブチ切れてる。

 ウソだろ、あっちディフェンダーいないじゃんよ。

 全員で攻撃してきてる!?


 残り5分。

 ウソだよな相棒、藍色ノート、あと5分でシュート6発とかふざけるなって俺の未来。



「センター押し込め!」

「くっ!?」



 ディフェンダーの数馬が突破された!?


 3年がシュート態勢。

 最後までボール見ろ。

 見ろ見ろ見ろ俺、ミロミロミロ。


 次どっち相棒、ええっと、なんだっけ、上、上の次。




□□□□□□□□□□

□□□□□□□□□□

□□□□■■□□□□

□□□□■■□□□□



□□□□□□□□□□

□□□□□□□□□□

□□□□■■□□□□

□□□□■■□□□□




 そうそう下、下。


 ウソだろあの3年生、なんか思いっきり体の方向、俺の左側に蹴ります的に体向けてる。

 フェイント?


 あれは嘘だ。

 見た物すべてを信じない、相棒を信じろ。


 シュートはまっすぐ、まっすぐの下だ。

 まっすぐ、まっすぐ。

 シュート態勢。


 蹴ってくる!



(バッシューー!!バチンッ!!)



「痛ってぇ!?」

「どこ打ってんだ!こぼれ球!」



 俺の右ふともも直撃、超痛てぇ!?

 重症。

 いや待て、まだ蹴ってくる!?

 


(バッシューー!!バチンッ!!)



「痛てぇ!?」

「みんなゴール前守って!」

「おお!!」



 相棒の答え正確過ぎて俺の体はもう限界。

 3年生の蹴り込んでくる弾丸シュートが早すぎて、ドッジボールみたいにキャッチなんて絶対無理。


 ボールが俺たち1年の陣地にずっとあるから、どんどん選手が集まってくる。

 ずっと相手のターンじゃんよ。

 ペナルティーエリアが1年と3年で団子状態になった。



(「あと3分ーー!」)

(「あと3分!」)



 3年生、ゴールキーパー以外全員俺たち1年のペナルティーエリアに集まってきた。

 もう目の前、敵ばっかり。

 次はどっちだ相棒。




□□□□□□□□□□

■■□□□□□□□□

■■□□□□□□□□

□□□□□□□□□□




 左だ相棒。

 もうゴールの左寄っとけ俺。

 ヤバい、3年に蹴られる!?

 


(バッシューー!!)



 キャッチ無理!

 パンチング!



(バチンッ!!)



「痛てぇ!?」

「早くしろ!まぐれだ、まぐれ!」



 まぐれだよ、まぐれ。

 ボールがコロコロ転がってく。

 ますますペナルティーエリアに人が群がる。



(「あと2分ーー!」)

(「あと2分!」)



 あと2分。

 ここまで。

 ここまできたら。



『勝ちたい!』



 ギャラリー全部俺らS2の敵だし、アウェーにもほどがある。

 翔馬と数馬でもぎ取った1点。

 もう何がなんでも死守する。


 また3年が1年跳ねのけて無理矢理シュートに持ち込んでくる。

 相棒、次どっちだっけ?




□□□□□□□□□□

□□□□□□□□■■

□□□□□□□□■■

□□□□□□□□□□




 右。

 敵も味方もみんな左に固まってる。

 良いのか、合ってるのかこの答え?

 信じろ、俺には相棒が、藍色の未来ノートがついてる。



 もうゴールの右寄っとけ俺。

 3年生に突撃していった味方ディフェンダーが弾き飛ばされた。

 敵にシュート蹴られる。

 


(バッシューー!!)



 右来た!

 真正面。

 超早い、パンチ。



(バチンッ!!)



「痛てぇ!?」



 今までで一番早い弾丸シュート。

 気づいた時には肉壁左肩に直撃。

 超痛てぇ!?ふざけんな、至近距離で殺す気かよこいつら。



「なんであいつにばっか打ち込んでんだよ!キーパーいないとこ狙えよ!」

「早く拾え!もう1発!同点にしろ!」



(「あと1分ーー!」)

(「あと1分!」)



 残り1分。

 もう俺の体限界。

 ディフェンスのみんなも必死に3年をマークして邪魔しようとしてくれてる。

 ずっと相手のターン。


 何回も押し倒されて、こけて、それでもみんな頑張ってる。

 頑張れ俺も。

 翔馬の取った1点、みんなで守り抜け。


 絶対S2のみんな同じ事考えてる。

 もうここまで来たら。



『絶対に勝ちたい!』



 相棒。


 

□□□□□□□□□□

■■□□□□□□□□

■■□□□□□□□□

□□□□□□□□□□




 お前の見せてくれた答え、ちゃんと俺は覚えてる。

 今度左寄っとけ俺。

 3年生、絶対フェイントかけてる。


 ドリブルでペナルティーエリアをちょろちょろ動きやがって、ちょくちょくパスしてシュートのチャンスをうかがってる。

 味方ディフェンダーがみんなつられて、左に右に揺さぶられる。


 中央に穴。

 どう見てもど真ん中に打ち込む態勢。


 相棒を信じろ俺。

 左に寄っとけ。

 来るぞ、来るぞ。





 ~~~~~氏家翔馬視点~~~~~



 あかん。

 もう残り1分や。

 カウンター狙ってここにおっても、もう意味無いで。


 3年生、防御捨てて全員で攻めていきよる!?


 あかん。

 ここにおる意味もう無い。


 早く守道と数馬のところに戻らんと。



~~~~~~~~~~~~~~~




 3年生がどう見てもゴールど真ん中に打ち込もうとする態勢。

 もしかして、未来の答え間違えたのか相棒?

 違う、きっと合ってるここで。

 俺は相棒を信じるって決めてる。


 ああ!?

 シュート態勢に入ってた3年の後ろから、あいつがいきなりコースを塞ぎにかかる。



「うわーー!」



 氏家翔馬だ!

 雄たけびをあげてる。

 ワントップで敵陣にいたはずの翔馬がゴール前まで戻って来てくれた!


 だが3年生のシュートの方が早い!?

 背中から聞こえる翔馬の雄たけびに焦ったのか、3年生が慌ててシュートを打ち込んでくる。

 来るぞ!



(バッシューー!!バチン!)



「痛てぇ!?」



 左、真正面。

 肉壁、左肩に直撃。

 翔馬が来て弾道が狂ったのか?

 

 それより……どこ行ったボール?



(ピピーー!)



 なんの笛だ!?

 どこだ、どこにいったんだ?俺に当たったボール。

 ボールを見失う。


 まさか……オウンゴールじゃないよな!?

 同点とかウソだろ!?





「コーナーキック!」





(「ああーー」)

(「惜しいーー」)



 コーナーキック!?

 誰かがボールをクリアしてくれたか?


 とにかくオウンゴールじゃなくて良かった……。

 いやちょっと待て。

 試合まだ終わってない!?


 この最後のコーナーキックまで時間内らしい。

 まだ終わらない相手の攻撃。


 数馬と翔馬が合流する。

 なにやら話し合ってる。



(「ラスト一本ーー!!」)

(「あきらめるなーー!!」)



 3年生SAクラスの、11人に選ばれなかった数人がピッチ脇のタッチラインから大声を張り上げている。



(「ゴールキーパーー!!」)

(「こっち来い!!全員で打ち込め!!」)



 マジかよ!?

 3年生が自分たちのゴールキーパーまで呼びやがった。

 3年生のイレブン、11人全員がペナルティーエリアに集結した。



(「キャーー!!」)

(「頑張ってーー!!」)



 ギャラリーが沸きに沸いている。

 激しい戦いも、最後のこのコーナーキックで決着する。

 


(「そこ手前過ぎる!もっと前出ろ!」)

(「何回キーパー当ててんだよ!ちゃんと狙え!!」)



 ピッチ脇のSAクラスの控え数人が声を張り上げる。

 まだ諦めるな。

 ピッチの外で悲鳴を上げてるギャラリーとは違い、最後まで戦えと大声を出して、ピッチに立つ3年のイレブンを鼓舞してる。



「S2!これ守り切れば勝てるぞ俺たち!」

「おお!」

「気合入れろ!」

「おおーー!!」



 マジかよ。

 氏家翔馬、あいつにあんなリーダーシップがあるなんて俺知らなかった。

 俺も翔馬の声で気合が入る。

 もうここまできたら。



『絶対に勝ちたい』



 藍色の未来ノート。

 相棒の最後の答えはこれだ。




□□□□□□□□□□

□□□□□□□□■■

□□□□□□□□■■

□□□□□□□□□□



 最後の3年生のコーナーキックは、俺たちのゴールの左から蹴り込む。 

 こんなゴール右に飛んでくるのか?


 ペナルティーエリアは3年と1年で団子状態。

 もう右寄っとけ俺。


 俺はもう、ここを一歩も動かない。

 パンチング準備。

 数馬と翔馬もいる。

 

 守り抜くぞ。

 最後の1本。

 

 3年生のコーナーキックを蹴るキッカーが、祈りを込めるようにサッカーボールを地面に置く。

 相手も本気。

 真剣勝負。


 俺は未来の答えもクソも無い。

 弾丸シュートが来る場所分かってて、簡単に止められるかよ。

 体を張ってでも止める事だけ考える。


 隣の試合はすでに終了したようだ。

 校庭が嘘のように静まり返る。

 全校生徒が3年生、最後のコーナーキックに釘付けになる。


 緊張で、胸が張り裂けそうになる。

 審判が笛をくわえた。

 くる。



(ピピーー!)

(「キャーー!!」)




(バスンッ!)



 弧を描いてボールがゴールに向かって飛んできた。


 ピッチの左からクロスしてきたボール。

 大きくゴール右側まで飛んでくる。


 ウソだろ!?

 ゴール右側でフリーになった3年生が、ゴールに背を向けて空を飛びやがった!?



(「キャーー―!!」)



 空中で回転!?

 オーバーヘッドキックじゃんよ!?

 もうどこボール来るか分かんないよ!? 



(バシューー!!バチーーン!)



「痛てぇーー!?」



 3年生が空を飛んだと思った瞬間、弾丸ライナーが俺の腹を直撃する。

 ボールがゴール前にコロコロ転がる。


 周りにいた全員が一斉にボールに向かう。



「これでおしまい!」



(バスッ!!)



「数馬!!」



(ピピーー!!)



「キャーー―!!」

「結城君ーーー!!」



 ゴール前に転がったボールにイチ早く反応した数馬がボールを蹴ってクリア!

 試合終了。



「よっしゃーー!!」

「勝ったぞーー!!」



 1-0。

 

 ジャイアントキリング達成。


 試合時間20分の激闘。


 ガリ勉男子の1年生S2クラスが、最強男子アスリート集団、3年生SAクラスを撃破した瞬間だった。


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