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「そういえば、きちんと名乗っていなかったな。バーナード・ロウエルだ」


「領主じゃないの」


「まあ、そうなる」


なんということでしょう。

夜中に時々会っていた謎の男の正体は、まさかの辺境伯でしたわ。

この地域の最高権力者が、どうして農業地区をウロウロしていたのかしら。

先代のことは王太子妃教育としてある程度頭に入れていたけれど、後継のことはよく知らなかったわねそういえば。

代々、魔物に対抗できる武力と統率力が最重要視されている家柄だったはず。

この辺境伯もきっと、人望は凄くあるんでしょうけど。


彼によると、ことの次第はこうですわ。


近くの森は基本的には安全だけれど、ごくたまには大型の魔物も出る。

大抵は街ではなく境界側に出るものですが、今回は辺境騎士団が追い込んでいたせいで街に近い側に魔物が出てしまった。

あのけむくじゃらの背中に刺さっていた矢は、騎士団が射しましたのね。

運悪く魔物に遭遇してしまったわたくし達の近くには、あの魔物を追いかけている騎士団がいたのだわ。

そしてわたくしを庇った爺が大怪我をしてしまい、わたくし自身もあわやというところで彼らは魔物に追いつきとどめを刺しました。


「俺はその場にいなかったが……部下によると君は重傷を負った老人にずっとすがりついていたそうだ」


「あらやだ、見られていましたの」


混乱状態の頃を彼らに見られているとは、ニコラ半年くらいの不覚。


「そして辺境騎士の一部隊が見ている前で、老人はご覧の通りの姿になった」


爺もどきだと思っていた男は、本当に爺だったようです。

ということは、わたくしが賢者の石だというのも本当なのでしょう。

爺は、わたくしに嘘をついたりはしませんもの。

しかし困りましたわね。

そんなにしっかり現場を押さえられてしまっては、わたくしが賢者の石であることを隠すのは難しいんじゃないかしら。


「本当に覚えていないのか?」


うなずく。


「わたくしの記憶は、爺が怪我をした瞬間で途切れております」


「そうか。君が気絶したのはもっと後のことだったはずだが、記憶が混乱しているのかもしれないな」


バーナードはしっかりとした眉を寄せて、わたくしの方を見つめました。

さて、どう誤魔化しましょう。

瀕死の人間を蘇生した上に、若返らせるなんて。

流石に頭脳明晰なわたくしでも、ちょっと言い逃れが思いつきませんわね。


「……修道士見習いニコラ、君は…聖女なのか?」


「あるいは、そうかもしれませんわね」


よ〜し!その路線で行きましょうか!!


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